国際問題

2013年1月23日 (水)

自殺・消費税・アメリカ国債・対米従属 (3)

1989年に冷戦が終結しソ連の脅威が去ると、アメリカのGDPを追い越さんばかりに経済成長を遂げた日本に対する内外の締め付けが、一層厳しさを増すようになりました。

冷戦終結以降、現在に至るまで、つまりはこの平成の御代を通じて、主に三つの方向から日本を押さえつけ、そのポテンシャルの発揮を阻害しようとする力が加えられてきました。

A. 80年代まで、日本に対して友好的だった中国の態度が、天安門事件以降豹変しました。韓国との間には慰安婦問題が浮上し、中国や韓国による、激しい反日キャンペーンが展開されるようになりました。北朝鮮による拉致問題が明らかになりました。ソ連が脅威として去った代わりに「中華」が新しい日本の危機として浮上するようになりました。

B. 冷戦が終わると、日本の経済成長に対する危機感や、怒り、恐怖心がアメリカ人の間に広がりました。この頃行われた世論調査によるとソ連よりも日本に対して脅威をいだくアメリカ人の方が多かったそうです。(wikipedia:日米関係)それに伴い、日本に対して規制緩和や構造改革、グローバル化の推進を求めるアメリカの内政干渉が激しさを増すようになりました。

C. 財務省(旧大蔵省)が主導する、財政健全化を理由にした増税や緊縮財政への執拗な圧力が強まり、その圧力に屈した橋本政権以降、結果的に日本のGDPの成長はぴたりととまり、デフレを深刻化させ、かえって財政は悪化しました。円高と国内の需要不足により、企業は生産拠点を海外に移転せざるを得なくなり産業の空洞化が起きました。また企業のリストラによって優秀な人材や技術が海外に流出しました。自殺者が急増し3万人を下ることはありませんでした。並行して移民緩和政策も段階的に推進されてきました。日本が潜在的にもっている生産能力を減退させる方へ強い圧力が長期的に加えられてきました。

事実4: 日本がそのポテンシャルを発揮することを阻害しようとする力は、

 A. 「中華」の側から
 B. アメリカの側から
 C. 日本国内から

三方向から加えられてきた。

この三つの力に力なく膝を屈してきたのが、冷戦終結以降、20年間の日本の政治であり、その政治を司ってきたのは、主に自民党政権でした。民主党一党が売国だったわけではなく、冷戦終結以降、上の三方向からの力に有効に立ち向かうことのできた政党や政権は、これまで一つもありません。

三つの力から等しく「脱却する」政治が、今こそ求められていますが、A. 「中華」からの圧力や脅威を恐れて、B. アメリカからの力にすがろうというのでは解決になりません。あまりに多くの人たちが「日米同盟を強化すればよい」と短絡的に考えてしまっています。また、民主党政権による3年間の悪政ばかりが過度に強調され、上記の三方向の力に20年間屈服し続けてきた自民党の体質が隠蔽、免罪されてしまっています。自民党自身が過去の失政に対する十分な総括と方向転換を行わないまま、国民が盲目的な支持を与えることは、大きな危険性を孕んでいます。

例をあげるならば、中野剛志氏が、日本の政治、日本の国家としてのあり方そのものに対する次のような怒りの告発を行っています。

中野氏が怒っているのは、日本を弱めゆがめようとする力に屈してきた日本の国家としてのあり方そのものに対してだと思いますが、動画のコメント欄には「結局、日本の癌は、朝鮮人と中国人なんですね」とか、「民主は今後責任追及し、売国奴として裁くべき」など、問題の原因を限定的に考えている方が非常に多い。「中国が悪い、韓国が悪い、民主党が悪い」このような声は、こだまのようにネット上にあふれかえっていますが、日本をぼろぼろにしているのは、何よりも、私たち自身の惰弱さであり愚かさであるということを自覚しなくては、日本はいつまでも衰退の軌道に載せられたままです。特定の国や政党を非難してすむ話ではありません。

自民党の議員からも「三年間の民主党政権でめちゃくちゃにされた」というような趣旨の発言が昨今聞かれますが、彼らは、民主党の三年間の失政を笑い、批判する以前に、自分たちの20年間の失政を心から反省すべきです。国民もこの点において、彼らを盲目的に支持するのではなく、彼らが同じ過ちを繰り返そうとする兆しが少しでも見えるならば、厳しく糾弾すべきであると思います。

安倍政権も、A. 中国からの力に対処するために、B.アメリカからの力に傾斜し、依存し、迎合していくというのでは、問題の根本的な解決にはつながりません。また、C. 内側からの力に対しては、安倍政権は2%のインフレ目標を設定する日銀の同意を取り付けるなど、よいきざしはありますが、消費税の増税を前提している点が問題です。財務省が現在アベノミクスを容認しているのも、将来の消費増税を見込んでのことです。せっかくアクセルを踏んでも、そのあとブレーキをかけるのでは元の木阿弥です。

また、この三方向からの力は、これまでも、ばらばらに働いていたわけではなく、相互に関係し合ってきた可能性があり、また今後も深く関係しうる可能性がある、という点も留意しておくべきであると思います。

「中華」(かつてはソ連)からの脅威が強調される→対米依存の必要性が説かれる→対米従属的な政治が行われる→アメリカの要求を受け入れざるを得なくなる→国力が減衰され「中華」の脅威が相対的に大きくなる→「中華」からの脅威が強調される

という悪循環が繰り返されており、中国を囲い込むどころか、これまで20年以上も日本を囲い込み、日本のポテンシャルの発揮を妨げてきたカラクリの中にさらに深くに絡め、これでは日本の力はますます弱まるばかりです。

次回に続きます。

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2013年1月22日 (火)

自殺・消費税・アメリカ国債・対米従属 (2)

日本人は極めて勤勉で器用な人民であり、或る製造業について見ると、如何なる國民もそれを凌駕し得ないのである。

開国を求めるため、黒船を率いて日本を訪れた、マシュー・ペリーが、帰国後の1856年に刊行し、アメリカ議会に提出した『日本遠征記 』(Narrative of the Expedition of an American Squadron to the China and Japan etc.) の中の記述です。ペリーは日本人について次のようにも記しています。

彼等は外國人によつて齎された改良を觀察するのが極めて早く、忽ち自らそれを會得し、非常な巧みさと精確さとを以てそれを模するのである。金属に彫刻するのは甚だ巧みであり、金属の肖像を鑄ることもできる。

彼等は磁器を製作してゐるのだし、また或る人の語るところによれば支那人よりももつと立派に製作することができると云ふ。兎に角、吾々が見た日本磁器の見本は甚だ織巧美麗である。

木材及び竹材加工に於て、彼等に優る國民はない。彼等は又世界に優るものなき一つの技術を有してゐる。それは木材製品の漆塗りの技術である。他の諸國民は多年に亙つて、この技術に於て彼らと形を比べようと試みたが成功しなかつた。

彼等は絹をつくる。そのうちの最良品は支那の絹よりも上等である。

實際的及び機械的技術に於いて日本人は非常な巧緻を示してゐる。そして彼等の道具の粗末さ、機械に對する知識の不完全を考慮するとき、彼等の手工上の技術の完全なことはすばらしいもののやうである。日本の手工業者は世界に於ける如何なる手工業者にも劣らず練達であつて、人民の發明力をもつと自由に發達させるならば日本人は最も成功してゐる工業國民[マニュファクチャ-リング・ネーションズ]に何時までも劣つてはゐないことだらう。他の國民の物質的進歩の成果を學ぶ彼等の好奇心、それを自らの使用にあてる敏速さによつて、これ等人民を他國民との交通から孤立せしめてゐる政府の排外政策の程度が少ないならば、彼等は間もなく最も惠まれたる國々の水準にまで達するだらう。日本人が一度文明世界の過去及び現在の技能を所有したならば、強力な競争者として、将來の機械工業の成功を目指す競争に加はるだらう。

すでに述べたやうに汽船の機關が日本人の間に烈しい興味をよび起した。彼等の好奇心は飽くことを知らないやうであり、又日本の畫家達は機會ある毎に絶えず機械の諸部分を描き、その構造と運動の原理とを知らうとしてゐた。艦隊の二囘目訪問の際ジョーンズ氏は、機關全體を正しい釣合で畫いた完全な繪畫を日本人がもつてゐるのを見た。機械の数個の部分も適當に描かれてゐて他國で描かれてもこれ以上はできないほど正確で立派な繪圖であつたと彼は語つてゐる。

日本の社會には、他の東洋諸國民に勝る日本人民の美點を明かに示してゐる一特質がある。それは女が伴侶と認められてゐて、單なる奴隷として待遇されてはゐないことである。女の地位が、キリスト教法規の影響下にある諸國に於けると同様な高さではないことは確だが、日本の母、妻及び娘は、支那の女のやうに家畜でも家内奴隷でもなく、トルコの妾房に於ける女のやうに浮氣な淫樂のために買ひ入れられるものでもない。

既婚婦人が常に厭わしい黒齒をしてゐることを除けば、日本婦人の容姿は惡くない。若い娘はよい姿をして、どちらかと云へば美しく、立居振舞は大いに活潑であり、自主的である。それは彼女等が比較的高い尊敬をうけてゐるために生ずる品位の自覺から來るものである。

下流の人民は例外なしに、豊に滿足して居り、過勞もしてゐないやうだつた。貧乏人のゐる様子も見えたが、乞食のゐる證據はなかつた。人口過剰なヨーロッパ諸地方の多くの處と同じく、女達が耕作勞働に從事してゐるのも屡々見え、人口稠密なこの帝国では誰でも勤勉であり、誰をでも忙しく働かせる必要があることを示してゐた。最下流の階級さへも、氣持ちのよい服装をまとひ、簡素な木綿の衣服をきてゐた。

下田は進歩した開化の様相を呈して居て、同町の建設者が同地の淸潔と健康とに留意した點は、吾々が誇りとする合衆國の進歩した淸潔と健康さより遙に進んでゐる。

函館はあらゆる日本町と同じやうに著しく淸潔で、街路は排水に適するやうにつくられ、絶えず水を撒いたり掃いたりして何時でもさつぱりと健康によい状態に保たれてある。

地震によつて生じた災禍にも拘はらず、日本人の特性たる反撥力が表はれてゐた。その特性はよく彼等の精力を證するものであつた。彼等は落膽せず、不幸に泣かず、男らしく仕事にとりかゝり、意氣阻喪することも殆どないやうであつた。

世界のどの民族よりも器用で、好奇心旺盛で、驚くべき学習能力を備えており、上手に物を作り、勤勉で、礼儀正しく、女性の地位が高く、貧富の差は低く、乞食がおらず、町はアメリカよりも清潔であり、大地震が来ても落胆しない不屈の精神をもった民族。

マシュー・ペリーが出会った日本人という民族は、このような人々でした。

ペリーが記録の中で言及している地震とは安政の大地震のこと。日米和親条約が結ばれた1854年から1856年にかけて、東海地方、南海地方、江戸、東北沖など、日本列島を縦断する大地震が連続して発生しました。また、宇和島藩は、ペリー来航の3年後に、外国人に教わることなく日本人の手だけで蒸気船を建造しています。

本当にペリーの記述が正しければ、日本人は間違いなく、世界最強のポテンシャルをもった民族であったといっても過言ではないでしょう。

このペリーと日本人の出会いの中に、その後現在に至る150年間の日米関係の歴史が凝縮されているといってもよいと思います。

その歴史とは、極端に単純化していえば、アメリカが、日本人のもつこのポテンシャルの高さに驚き、やがて恐れ、さまざまな手練手管を使って、妨害したり、干渉したり、なだめたり、すかしたり、おどしたりしながら、その力の発揮を抑え込もうとしてきた歴史です。そしてそれは今も続いている歴史です。

下のwikipediaの記事が、アメリカが日本を抑え込もうとしてきた150年の日米関係の歴史を上手に要約してくれています。

日本との外交関係は、1854年の日米和親条約からである。政治的・軍事的においてアメリカ側の強い主導下で緊密だが、経済関係ではジャパンバッシング、日米貿易摩擦、年次改革要望書などで時に対立もある。貿易摩擦ではアメリカは自国製品の競争力低下を棚に上げ、差別的な対日制裁法案立法化の動きを利用し日本へ圧力をかけ続けた[15]。さらに1985年のプラザ合意による為替レート調整によって日本の輸出産業を抑制した[16]。外務事務次官・駐米大使を務めた村田良平は、貿易交渉等でアメリカが日本へ厳しい態度をとったのは、既にソ連の脅威が去り、代わりに日本が脅威になると考えている人間がアメリカ政府内にいた事も一因であり、ジョージ・H・W・ブッシュ政権以降、日本へ露骨な内政干渉を開始したと述べている[17]。緊密の度合いについては、二国間関係がアメリカの強い主導下にあるため日本国内から対米従属であるとの指摘もある。アメリカは日本の軍事力を抑制し、最先端兵器開発を阻止している[18]。
Wikipedia:アメリカ合衆国より

抑えても抑えても、叩いても叩いても、苦境から立ち上がり、ポテンシャルを発揮しようとする日本人。その度に、あの手、この手の新しい手段を考えださなくてはならないアメリカ。この150年の歴史は、この日米のいたちごっこの歴史であり、大東亜戦争も、原爆も、東京裁判や昭和憲法に象徴される戦後体制も、戦後の円やら、ドルやら、ニクソンショックやら、プラザ合意やら、アメリカの双子の赤字やら、日本のバブル崩壊やら、日米の国債やら、消費税やら、緊縮財政やら、規制緩和やら、構造改革やら、郵政改革やら、TPPやら、自民党の対米従属やらといった話も、このような歴史的文脈の中に位置づけてはじめて、すっきりと謎がとけることばかりです。

日本人は確かに、世界最強のポテンシャルを秘めた民族でしたが、一つだけ大きな弱点がありました。それは世界一、お人好しで、騙されやすく、御しやすい民族であったということです。

事実3: 日本は、放っておくと、ぐんぐんと成長し強大化してしまう高いポテンシャルをもっているため、誰かが押さえつけておかなければならない。


次回に続きます。

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2013年1月21日 (月)

自殺・消費税・アメリカ国債・対米従属 (1)

昨日、1997年に、自民党の橋本龍太郎内閣が、大蔵省の圧力(つまりはアメリカの間接的圧力)に屈したまま、消費税率を5%に上げて以来、日本は本格的なデフレに突入し、以来自殺者の数は3万人を下ることがなかったという事実にふれました。下のグラフを見ればわかるように急増したのは、男性の自殺者であり、一家の大黒柱が、経済的な行き詰まりを理由に自殺していったことが伺えます。

G01

「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがあります。一見無関係と思われる、二つの出来事のあいだには、人々の気づかない因果関係が隠されていることがある、ということを例示することわざです。ちなみに、「風が吹く」と「桶屋が儲かる」という二つの出来事の間には、次のような因果関係が隠されているのだそうです。

1. 大風で土ぼこりが立つ
2. 土ぼこりが目に入って、盲人が増える
3. 盲人は三味線を買う(当時の盲人が就ける職に由来)
4. 三味線に使う猫皮が必要になり、ネコが殺される
5. ネコが減ればネズミが増える
6. ネズミは桶を囓る
7. 桶の需要が増え桶屋が儲かる

江戸時代と異なり、盲人が三味線を弾かず、人々が木桶を使わない現代では、このことわざの真偽を実証することはもはやできませんが、「人々が自民党を盲目的に支持する」と「自殺者が増える」という二つの出来事の間の因果関係を説明することは、比較的たやすく行うことができます。

日本人の自殺と、消費税増税と、アメリカの圧力と、アメリカ国債と、自民党による対米従属と、自民党人気と、昨今の円安、これらの事実の間にどのような因果関係が存在するかを、何回かに分けて考えていきたいと思います。

この因果関係を理解すれば、なぜ「対米従属の先には亡国がある」と言えるのか、よりはっきりと認識することができると思います。私たちが、対米従属をやめて、国家として自立しなくてはならないのは、単に、「アメリカが嫌いだから」とか「原爆を落としたアメリカが憎いから」とか「独立国として情けないから」といった感情的な理由のためではありません。日本人の一人一人が、また子や孫たちの一人一人が、現実の生活を、一日一日、生き延びるためにこそ、真剣に考えなくてはならない選択肢です。日本人はアメリカの抱える借金のために、まさに奴隷と化しており、アメリカとともに奈落の底にまっさかさまに転落しつつあります。

「対米自立」というスローガンは、保守の人々の間であまり人気がありませんが、中国や韓国の危険性を熱心に啓蒙してこられた有名ブログ「中韓を知りすぎた男」も、下のような記事を掲げていらっしゃいます。

中韓を知りすぎた男: 親米保守の甘い幻想

このブログ主は、ビジネス上の個人的な直接の体験を通して、中国や韓国の問題を誰よりも深く御存知の方ですが、それを理由に、アメリカへの安易な傾斜を決して人々によびかけないその見識は大変立派なものだと思います。「中国は危ないから、アメリカにつこう」。「民主党はだめだから、自民党を信じよう」。このような単純で二元的な思考ほど、日本を誤った方向に向かわせるものはありません。

まずは、理解の前提となるいくつかの事実(点)を列挙していきます。その後で点と点と線で結ぶ作業を行い、それらの事実の間にどのような因果関係があるのか考えていきたいと思います。

昨年、民主党の野田政権と、自民党と、公明党が、三党合意によって、2014年に8% 2015年に10%の消費税増税を決定したことは、みなさん御存知のことと思います。一応、税率引き上げの条件として「経済成長率で名目3%、実質2%を目指す」ことを明記した「景気条項」と呼ばれる付則が付けられています。安倍政権が「2%のインフレ目標」を掲げているのも、消費税増税の前提条件を整える目的があります。

この消費税増税導入の背後には、十数年に及ぶ財務省の強力な圧力がありました。財務省は、国内の景気動向や、95%が国内の投資家よって保有されておりしかも円建ての日本の国債は破綻しようがないという事実を無視して、増税と緊縮財政を押し進め、ひたすら財政を「健全化」させることに執念をもやしてきたという事実を、まずはご留意ください。

事実1: 財務省は、たとえ日本の景気を悪化させてでも、財政規律を守ろうとする。

景気が悪いときに、公共事業を減らして財政をきりつめたり、増税をしたりすれば、当然需要が減るため、景気はさらに悪化し、深刻なデフレを引き起こしますが、財務省は、バブル崩壊以来、世論や政治家に「このままでは財政破綻するぞ」と脅しや圧力をかけて、緊縮財政と増税を推進してきました。日本の景気が少しよくなるきざしを見せれば、増税をし、財政を削る。日銀も不自然なタイミングで金融緩和を解除する。財務省も日銀も、まるで日本の景気回復を阻害することがその指命であるかのように、日本のデフレを悪化させてきました。政治家も長くこれに加担してきました。

下は日本とアメリカの名目GDP(国による物価の違いを考慮にいれないGDP数値)の推移のグラフです。1995年までは、日本のGDPはアメリカの経済成長とほぼリンクしながら成長していたことがわかります。アメリカの人口は日本の3倍ですから、一人当たりの名目GDPでは、1990年代の前半に、日本はアメリカを抜いていた時期がありました。しかし、1996年にスタートした自民党の橋本内閣以降、日本は本格的にデフレに突入し、日本のGDPがほとんど成長していないのがわかります。

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下は国の公共事業予算の推移を表すグラフです。橋本政権以来、公共事業費が削られ、緊縮財政が継続されてきたことがわかります。

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事実2: 財務省(当時は大蔵省)の圧力のもと、消費税率引き上げと緊縮財政を導入した橋本内閣以来、日本の経済成長は停滞した。

橋本龍太郎氏は、2001年の自民党総裁選において、次のように語り謝罪しています。

「振返ると私が内閣総理大臣の職にありましたとき、財政の健全化を急ぐ余りに、財政再建のタイミングを早まったことが原因となって経済低迷をもたらしたことは、心からお詫びいたします。

そして、このしばらくの期間に、私の仲のよかった友人のなかにも、自分の経営していた企業が倒れ、姿を見せてくれなかった友人も出ました。

予期しないリストラにあい、職を失った友人もあります。こうしたことを考えるとき、もっと多くの方々がそういう苦しみをしておられる。本当に心のなかに痛みを感じます。」(2001年4月13日)

三橋貴明 『日本の大復活はここから始まる』より引用

橋本氏は、2006年に亡くなるまで「官僚に騙された」と後悔されていたと言いますが、政策の誤りを率直に認め謝罪した分偉かったと思います。しかし、当時、橋本氏に増税と緊縮財政を執拗に促した官僚や、経済学者はどうでしょうか。後に同じ過ちを繰り返すことになる小泉純一郎や、小泉人気に便乗した自民党の政治家たちはどうでしょうか。小泉劇場に踊らされて自民党を盲目的に支持した国民は、今誤りに気づいているでしょうか。竹中平蔵や飯島勲のような小泉劇場の立役者に、現在も要職を与えている安倍首相はどうでしょうか。確かに、安倍政権は、公共事業費を増やし、橋本政権以来の長い緊縮財政に終止符を打とうとしているかに見えますが、果たして、安倍政権は従来と異なる新しい方向を目指して歩き出したでしょうか。

次回に続きます。

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2013年1月20日 (日)

日露戦争の敗北と大東亜戦争の勝利

通常、日本は日露戦争で勝利し、大東亜戦争で敗北したと歴史の教科書では教えられています。確かに表向きはそのように見えます。

しかし、歴史を掘り下げて見ると、実は日本は日露戦争で敗北し、大東亜戦争に勝利したと言うことも可能なのかもしれません。

一生懸命背伸びをして西洋人のまねをしてきた有色人種の新興国家が、強大な白人国家を打ち負かした日露戦争の輝かしい歴史的勝利。世界を驚愕させたこの未曾有の勝利によって、日本は不平等条約を解消し、世界の一等国として、西洋列強と対等な位置に上りつめました。日本人ならば誰もが誇らしく感じる日本史の一ページです。

しかし、よく注意してみれば、日本は、当時ロシアの南下政策を警戒していたイギリスに、都合のよい駒として利用され代理戦争を戦わされていた、日本はわざわざイギリス人から莫大な借金をしてイギリス人のための戦争を戦ってた、単純な日本人は権謀術数に長けたアングロサクソンの掌の上で踊らされていたにすぎないのだ、と考えることもできます。また、アメリカも表面上は日本を支援しましたが、日本がこの戦争を戦っていたまさにその裏で、「オレンジ計画」と呼ばれる対日戦争計画のプロトタイプを作成しています。セオドア・ルーズベルト大統領が、ロシアに賠償金の支払いを免除した日本にとっては大変屈辱的な講和条約を仲介したのとほぼ同時期に、1945年の原爆投下に至る日本封じ込め戦略を、アメリカはこの時既にスタートさせていたわけです。また、日露戦争の結果、ロシアから日本に転がり込んできた満州権益は、後に中華思想に基づいて満州は中国の一部である主張しはじめた中華民国(この経緯は尖閣諸島問題とそっくりです)や、「門戸開放」という美辞麗句をスローガンに掲げながら、遅れて中国進出に乗り出したアメリカの利害と激しくぶつかることになり、大東亜戦争の火種となりました。ロシアにしてみれば日露戦争に負けて満州を手放すことで、日本と中国の間に紛争を引き起こすことに成功し、アメリカがやっかいな敵を完膚無きまでに叩き潰してくれ、日ソ不可侵条約を破棄することで、大して犠牲を払うことなく戦勝国の権利や、サハリンや、北方領土も含めた千島列島の全てを手にしたわけですから、日露戦争は実はロシア(ソ連)の大勝利だったのかもしれません。

つまり、日露戦争の勝利の中に、後の大東亜戦争での日本の壊滅的な敗北が、既に胚胎されていたとも言えます。

日露戦争の約40年後、日本は大東亜戦争に破れ、日本の美しい都市の多くは、その多くの貴重な人命や文化財とともに灰燼に帰することになりました。アメリカは、民間人の上に情け容赦なく爆弾の雨を降らせ、原爆は、たくさんの日本人を生きながら、一瞬で灰にしてしまいました。

しかし、YouTubeのWJFの動画のコメント欄で、以前ある外国人が書いていた言葉が今も印象に残っています。第二次大戦後、イギリスは衰退し経済力で今や日本に及ばない。ソ連は解体した。中華民国は台湾に追いやられた。アメリカも第二次大戦の勝利をピークに衰退の一途をたどりつつある。現在も歴史の中にしっかり立ち続けているのは、むしろ日本ではないか。日本こそ第二次大戦の勝者ではなかったのか、というコメントです。

なるほどそういう見方もあるのかと感心しました。

また、大東亜戦争は、その戦いに命を捧げた日本人が素朴にそう信じ、そう願ったように、結果的に多くの有色人種の人々の独立をもたらし、世界の顔を作り替えてしまったわけですから、この点でも日本の大勝利であったといってよいのだと思います。やはり、日本はこの戦争に負けて勝ったのです。

「人間万事塞翁が馬」

戦争の難しさは、勝ったからといって勝ったとは限らない、負けたからといって負けたとは限らないことにあります。有益であると思われたものが必ずしも有益とはかぎらないし、有害と思われたものが必ずしも有害とは限らない、どんな物事にも両面性が含まれているのだということの、これは、一つの例にすぎないのかもしれません。

そして、このことは、最近終わりを迎えた民主党政権に対しても、また最近始まりを迎えた自民党政権に対しても当てはまります。

例えば、最近、次のようなうれしいニュースが報道されました。

自殺者、15年ぶり3万人下回る…防止策拡大で

警察庁は17日、2012年の自殺による死者が前年より2885人(9・4%)少ない2万7766人だったと発表した。

昨年3月、横浜市のJR駅で、ホームの縁から線路側に体を傾けた。「飛び込むなら今だ」。そう思った瞬間、悩みを聞き続けてくれた東京都荒川区の保健師(24)の顔が脳裏によぎったという。

 男性は2011年にも不況で職を失い、農薬を飲んで自殺を図っていた。その際に搬送された日本医科大付属病院(文京区)に紹介されたのが、この保健師だった。昨年末、IT関連会社への再就職が決まった男性は、「支えてくれる人は必ずいる。勇気を出して相談してほしい」と訴える。

G01

1997年、自民党の橋本龍太郎内閣が、大蔵省の圧力、(つまりはアメリカの間接的圧力)に屈したまま、消費税率を5%に上げて以来、日本は本格的なデフレに突入し、以来自殺者の数は3万人を下ることはありませんでした。これが15年ぶりに自殺者が9.4%も減少したというのですから、これは画期的な祝うべき出来事です。全ての愛国者は、自ら命を絶つ同胞の数をこんなにも減少させた民主党政権のこの功績を、あるがままに、心から誉め称えなくてはなりません。民主党政権下で起きたことだからといって、よいことをよいと評価できないのならば、その人の目は、先入観や思い込みによって曇らされていると言わざるを得ません。またアメリカに平然と国を売ってたくさんの同胞を自殺に追い込みながら、未だにその総括も行わず、悪びれることもないような政党を「愛国的な保守政党」などと呼んで疑問すら感じることがないのであれば、そのような人々の「愛国心」とは一体なんなのかと厳しく問いただされるべきでしょう。

政権の善し悪しは、その発する言葉ではなく、実際に、国家や国民に何をもたらしたかによって客観的に評価されるべきです。

すべての物事が備えているこの両面性を無視して、民主党を絶対的な悪として貶めることによって、自民党があたかも絶対的な善なる保守政党であるかのように吹聴する、事実と乖離した不自然でいびつな意見が、現在ネットにあふれています。善悪二元論的な論法は、大変分かりやすく、人々に受け入れられやすいものですが、日本の未来に対して責任をもつ私たちは、このような極端なものの見方や、どのような種類の煽動にも惑わされず、冷静な目でものごとの両面を見つめ、判断しなくてはならないと思います。

もちろん、みなさんは、このブログに書いてある私の個人的な意見(へそまがりの偏向した意見と自覚しています)もどうか盲信なさることなく、どんな意見や主張もまずは疑ってかかり、お一人お一人の頭で、日本を取り巻くさまざまな問題を考え抜いていただきたいと思います。そのために、このブログでは、通常正しい信じられている意見とは、敢えて異なった視点や意見を提示できたらと思っています。

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2013年1月19日 (土)

牧羊犬とショックドクトリンと新脱亜論

牧場での牧羊犬の仕事は、おとなしい羊の群れを追いかけ吠え立てて冊の中に追い込むことです。

日中の軍事衝突が現実味を増しつつありますが、これが牧羊犬(ショックドクトリン)の働きをして、日本という羊の群れをTPPという冊の中に追い込むことがないことを願います。

福沢諭吉が解いた脱亜論。

「日本は亜細亜(アジア=中華)を離脱しなければならない」というのが本来の意味ですが、

「脱亜細亜」は、同時に、「脱亜米利加」でなくてはならない

と思います。

「反アジア(=中華)」や「反アメリカ」である必要はありません。これらの国々と敵対したり衝突する必要はありません。ただ、これらの国々に媚びることなく、毅然と自分の足でしっかりと立つ力は必要であると思います。そのためには、「脱アジア(=中華)」と「脱アメリカ」の気概が国民の間に漲っていかなければなりませんが、対米自立という考えは日本人の間に本当に人気がありません。戦後と冷戦時代を生きてきた日本人の心の奥深くに、アメリカを善なる守護者や解放者と信じ、寄り頼もうとする心情が深く深く刷り込まれています。冷戦が終結して20年以上が経過する現在も、政治家を含めた多くの人たちが冷戦構造のパラダイムから抜け出せずにいます。

資本主義VS共産主義

というイデオロギー間の二極的な対立はとっくの昔に過ぎ去り、代わりに浮上したのが、

日本VS中華(朝鮮を含む)

というサミュエル・ハンティントンの言うところの「文明の衝突」ですが、日本人の多くは、この新しい紛争を未だに冷戦時代の時代錯誤のパラダイムによって捉えようとし、アメリカをはじめとする各国が日本の側についてくれることを素朴に期待しています。しかしながら、世界のほとんどの人々が冷戦時代のパラダイムからとっくに脱却をすませている現在、日本と中国の文明間の対立に積極的に関わり、一方に加担しようとする国は多くはないでしょう。それどころか、冷戦以前には、アメリカは、日本人を凶暴で再教育の必要な異質な民族と見なしたのに対して、満州をめぐる利害と中国進出の遅れから、中華に同情し、協力して日本を封じ込めようとしていた当の国です。日中の争いが文明間の争いとなれば、アメリカは中華に対してより親和的です。

中華(朝鮮をふくむ)とアメリカ。
両者は歴史観を共有しており、
中華の反日の根底には、アメリカの作った歴史観があり、
中華とアメリカ(連合国陣営)は、中国系・韓国系の移民の増加に伴い、今後ますます混然と一つになっていきます。

トロント市議会が南京大虐殺の決議文採択

カナダのトロント市議会はこのほど、「南京大虐殺から75年を思い起こすことを宣言し、国民の関心を高めるための役割を果たす」よう市長に求めた決議文を全会一致で採択した。

 1937年12月に起きた南京大虐殺から75年たった今年、北米の中国・アジア系市民の間では、尖閣諸島問題を契機とした日本国内の右翼的世論の高まりに対して懸念が広がっている。トロントはカナダ有数のアジア系住民が多い都市として知られているが、今回の決議は、日本の戦争責任に対する鈍感さに警告を発したものと言えそうだ。

 決議文は「虐殺はいまだ生存者の記憶に留まり」、事件が決して過去のものではないと強調。「命を奪われた犠牲者に思いをはせ、この虐殺事件を人々に伝えることは歴史の理解と平和を推進するために不可欠である」と述べている。これを受けて、フォード同市長は、「12月13日を『南京大虐殺を認識する日』と宣言する」と声明した。

 また同国バンクーバーでも12月9日、日系市民も含めた約60人が集まり、「バンクーバー市民による南京大虐殺75周年祈念」集会が開かれた。参加者によれば、席上、中国系のビル・チュー氏は、「日本が南京大虐殺を否定するようになっている現状は非常な痛苦を伴う」と述べ、日系と中国系の市民が連帯し、歴史の認識を深め合う必要を訴えた。

最近、田母神俊雄氏と共に『自立する国家へ!』という本を出版される、天木直人という元外交官の方が、同じ問題意識を次のように述べておられます。

安倍自民党政権の最大の敵は米国である

安倍自民党政権はもはや向かうところ敵なしだ。惨敗の衝撃から立ち直れない野党たちの体たらくを横目に見ながら参院選の勝利に手を打つ。それでも足らないといわんばかりに維新の会の橋下と会談し、渡辺みんなの党との分断をはかる。参院選が終ればその後3年間は選挙はない。安倍自民党政権の一人舞台だ。

そんな安倍自民党政権の最大の敵は米国だといえば誰もが冗談だろうと思うだろう。なにしろ民主党政権が壊した日米関係を立て直すのが最重要課題だと安倍首相自身が繰り返しているぐらいだ。ところがその安倍首相の愛国・保守という政治信条がそもそも米国と相容れない。とくに安倍首相の唱える歴史認識とその認識から由来する戦後レジームからの脱却を米国は認めない。

そのジレンマを安倍首相の応援団の筆頭である櫻井よしこ氏が見事に語っている。発売中の週刊新潮1月17日号の連載コラム「日本ルネッサンス」において慰安婦問題に好意的な理解を示す米国を批判している。そう思ったらきのう1月10日の産経新聞「安倍首相に申す」の中で、やはり慰安婦問題についての米国の対日歴史批判について理不尽だと嘆いている。米国が日本を占領した時も同じ事をしていたではないか、米国も黒人を奴隷にしてきただろう、それなのに何故日本だけに厳しく当たるのか、というわけだ。

そう言いたい気持ちはわかる。それに米国での慰安婦問題はロビー活動の政治的な駆け引きの側面は確かにある。しかし米国にはこの恨み節は通用しない。これ以上米国の意向に逆らえば米国は安倍首相の最大の敵として立ちふさがるだろう。こんな恨み節を言うぐらいなら対米従属外交をやめて米国から自立した外交を進めるべきなのだ。

「自立する国家へ!」(田母神俊雄、天木直人共著 KKベストセラーズ)という新書が1月19日に発売される。

外交・安保政策においてその考え方がまったく違うこの二人がなぜ一緒になってこの本を安倍首相に贈るのか。それは、これまでの日本のどの総理も行なおうとして出来なかった日本外交の対米自立を安倍首相の手で行なって欲しいと願うからだ。日本の自主外交を取り戻す事ができるのは貴方しかいないと褒め殺しているのである。

果たして安倍首相は信念を貫くのか、それとも対米従属に堕して米国に潰されるのか・・・


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2013年1月18日 (金)

鳩山由紀夫の大いなる自己矛盾

ローマから伸びるシルクロードの最東端に位置し、ユーラシアのあらゆる文明の最後の受け皿となった国。東洋の文化を長い時間をかけて蒸留、洗練させると同時に、西洋の文化との美しい融合を計った国。そして万世一系のご皇室と共に、その根っこにはいつも縄文の言霊をやどし続けてきた国。

私の願いは、そんな私たちの国日本が、その美しい姿と誇りある精神とを保ちながら、動かない定点のように、世界の激流の中で、右にも左にも、西にも東にも、北にも南にもぶれることく、静かに自分の足でいつまでも立ち続けてくれることです。

ですから、アメリカに傾斜しようとする自民党政治も、中国や半島に傾斜しようとする民主党政治も、共に、好きにはなれません。民主党だけを指さして「売国政党」と呼んだり、これまでさんざん売国行為を働いてきた自民党をさして「保守政党」と呼ぶ欺瞞に、安易に組する気にはなりません。

アメリカも、中国も、韓国・北朝鮮も、彼らは同じ歴史観を共有しています。正義の側に立つ彼らが、悪の日本を包囲し、叩き潰し、押さえつけるという歴史観です。

私の願いを実現してくれそうな政党は、残念ながら、今の日本には存在しません。どの政党も、日本の文化や伝統に深く根ざしてはおらず、日本らしい価値観や精神を反映せず、外国勢力やら、後づけの屁理屈やら、カルト宗教やら、損得勘定によって、右や左に吹き寄せられる根のない浮き草のように見えます。

さて、先日、その功績をたたえた鳩山由紀夫元首相ですが、ルーピーと揶揄されても仕方のない問題行動を起こしてくれました。

鳩山氏、南京大虐殺記念館を訪問 館長におわび伝える

【南京=金順姫】中国訪問中の鳩山由紀夫元首相は17日、江蘇省南京市の「南京大虐殺記念館」を訪れ、「多くの中国の方、特に南京の民間の方、捕虜の方々を日本兵が殺してしまったことは大変申し訳ない。おわび申し上げたい」と朱成山館長に伝えた。鳩山氏が報道陣に明らかにした。

 鳩山氏はまた、沖縄県の尖閣諸島は日中の「係争地」だとの同氏の認識を菅義偉官房長官が批判したことについて、「(日本)政府もよく勉強されて、その中から早く答えを見いだすべきだ」と述べた。

 中国国営の新華社通信は同日夕、「当時の日本兵が犯した罪を謝罪する」との鳩山氏の発言とともに、記念館を視察した詳細な様子を配信した。同記念館にはこれまで、日本の首相経験者として、村山富市氏、海部俊樹氏が訪問している。

私は彼が対米従属の長い桎梏から日本を解き放とうとした功績は讃えたいと思います。

しかし、彼は気づくべきでした。彼が忌み嫌った日本の対米従属の根底には、アメリカから押し付けられた東京裁判史観があることを。そして、今回彼が謝罪をした、いわゆる「南京虐殺」もアメリカによって塗り替えられ、また誇張された歴史の一部に位置づけられるものです。支那事変において日本が戦っていたのは、単に国民党や支那ではなく、あくまで、その背後にいるアメリカであり、アメリカのジャーナリズムは国民党と共に、世界にさまざまな反日プロパガンダを垂れ流していました。

鳩山氏は、一方でアメリカを批判しながら、中国にのこのこ出かけていき南京虐殺記念館で謝罪をする、その深刻な自己矛盾に気づいているでしょうか。対米従属から離脱しようとするならば、彼は同時に対中従属からも離脱しようとしなければならなかったはずです。

アメリカと中国は決して対立する二極ではありません。かつては手を結んで、共に日本をつぶそうとした二国であり、日本は、いまだに戦勝国である彼らの掌で踊らされています。この二国は、今でも深い関係を持ち、同じ歴史観を共有し、これからもその関係を深めていくであろう二国です。

"United Nations"、現在では「国際連合」と日本語に翻訳されているこの言葉は、第二次世界大戦中は、連合国を意味する言葉でした。現に、中国では今でも国際連合は「連合国」と呼ばれています。国連は決してニュートラルな価値中立の国際機関ではありません。

アメリカ(善)VS中国(悪)

という単純で二元的な構図を描き、「日本はどちらにつくべきか」と考えることは大きな誤りです。

中国を敵視して、アメリカに従属しようとすることも、
アメリカを敵視して、中国に従属しようとすることも、

いずれも、ただしい選択肢ではありません。どちらの道を選んでも、その延長線上に私たちを待ちうけているのは亡国です。

一つの自立した極として、右にも左にもぶれない動かない定点として、世界の中に静かに立ち続ける、独立した立ち位置を見つけるための、第三の道を歩き出さなければならないときに、私たちはさしかかっています。私たちの国が歴史に生き残るには絶対に避けては通れない分岐点です。

どの道を私たちは選ぶべきでしょうか。

アメリカに呑み込まれる道でしょうか。
中国に呑み込まれる道でしょうか。
それとも日本が日本として立ち続ける第三の道でしょうか。

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2012年6月18日 (月)

挟む国と挟まれる国

歴史的に大国に挟まれた国、たとえば、日本、中国、ロシアに挟まれていた朝鮮や、ドイツとロシアに挟まれていたポーランドのような小国は、苦労を負わされてきました。

かつては、ユーラシア大陸の端に位置することで、地政学的に朝鮮を中国やロシアとともに挟む側に立っていた日本ですが、19世紀末以降は、アメリカのフロンティアが太平洋を越えて西進しハワイ、グアム、フィリピンを併呑していった結果、日本はアメリカと中国という二大国に挟まれる位置に立たされることになりました。大東亜戦争は、日本がアメリカと中国に挟まれて二面戦争を戦った戦争でした。最後は中立条約を結んでいたはずのソ連が参戦することで、日本は完全に周囲を挟み込まれてしまい詰んでしまいました。ハワイがアメリカの侵略を受ける初期の頃、ハワイの王室が日本の皇室と姻戚関係を結んで、日本との同盟関係を結ぶことで、アメリカの侵略を食い止めようとした歴史的事実が知られていますが、初期の段階でアメリカの西進をふせいでいたら、現在のような難しい地政学的な位置に日本は立たされずに済んでいたかもしれません。またソ連と中立条約を結ぶ代わりにドイツと積極的に挟み撃ちにしていたら、世界の顔は変わっていたかもしれません。

中国の力が今後ますます大きくなり、アメリカの力と拮抗していくことが予想される中で、どこに日本の立ち位置を求めていくか。この難しい問題に、今後日本はますます深く向き合っていかなければなりません。

次のような記事があります。

中国人にとって米国は「2番目の敵」に過ぎない、1番の敵は日本だ―米メディア

2012年5月27日、米紙シカゴ・トリビューン(電子版)は「中国とは衝突する運命なのか?」と題した記事で、中国人にとって米国は「2番目の敵」に過ぎず、1番の敵は日本だと説いた。29日付で環球時報が伝えた。以下はその要約。

ソ連はすでに存在せず、アル・カーイダは有力な指導者を失い、イランも永遠に核兵器を持てないかもしれない。だが、安心するなかれ。世界平和を脅かす要素を探してみると、やはり「中国」の存在は無視できない。

歴史上、台頭中の国は自己の利益を確保したいがために他国との流血・衝突を招くケースが多い。だが、筆者は実際に訪中してみてこう感じた。緊張と見解の相違は避けられないが、必ずしもそれが軍事衝突や全面戦争につながるとは限らない。

喜ばしい事実が1つある。中国人は生まれつき米国に敵意を抱いているわけではないらしい。中国の市場調査大手・零点研究諮詢集団(Horizon)の袁岳(ユエン・ユエ)会長によると、中国人は政治を除き、米国に対してかなりプラスのイメージを持っている。米国系の企業で働きたいと思っているし、米国の映画や音楽も大好きだ。

米国に学ぼうと、今も13万人が米国で留学生活を送っている。中国人にとって米国は「2番目の敵」に過ぎないのだ。1番の敵は、日本である。

中国が本当に危険な国なのかどうか、それは過去の行動から判断すべきだ。マサチューセッツ工科大学の中国問題専門家テイラー・フラベル(Taylor Fravel)准教授は「1949年以降、中国が解決した領土問題の大半は中国側が大きく譲歩している。過去10年、武力行使で領有権を主張したり、国力の向上を良いことに新たに主張したりしたことはない」と指摘する。

中国は国連平和維持活動への参加や世界貿易機関(WTO)への加盟など、問題の平和的解決に積極的だ。急激な変革は求めていないし、過激な手段を用いたこともない。もちろん、過去の結果は未来の行動を保証するものではないが、今は平和な状態が保たれている。そして、それは今後も続いていくとみてよいだろう。(翻訳・編集/HA)

アメリカと中国が戦わなければならない時がいつかくるのならば、日本を盾にせず、日本を巻き込まず、日本の頭越しにやってほしいと思います。

また、囲碁やオセロではありませんが、挟まれそうになったときには、周囲と連携して鋏み返すというのも大切な戦法だと思います。

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