自殺・消費税・アメリカ国債・対米従属 (3)
1989年に冷戦が終結しソ連の脅威が去ると、アメリカのGDPを追い越さんばかりに経済成長を遂げた日本に対する内外の締め付けが、一層厳しさを増すようになりました。
冷戦終結以降、現在に至るまで、つまりはこの平成の御代を通じて、主に三つの方向から日本を押さえつけ、そのポテンシャルの発揮を阻害しようとする力が加えられてきました。
A. 80年代まで、日本に対して友好的だった中国の態度が、天安門事件以降豹変しました。韓国との間には慰安婦問題が浮上し、中国や韓国による、激しい反日キャンペーンが展開されるようになりました。北朝鮮による拉致問題が明らかになりました。ソ連が脅威として去った代わりに「中華」が新しい日本の危機として浮上するようになりました。
B. 冷戦が終わると、日本の経済成長に対する危機感や、怒り、恐怖心がアメリカ人の間に広がりました。この頃行われた世論調査によるとソ連よりも日本に対して脅威をいだくアメリカ人の方が多かったそうです。(wikipedia:日米関係)それに伴い、日本に対して規制緩和や構造改革、グローバル化の推進を求めるアメリカの内政干渉が激しさを増すようになりました。
C. 財務省(旧大蔵省)が主導する、財政健全化を理由にした増税や緊縮財政への執拗な圧力が強まり、その圧力に屈した橋本政権以降、結果的に日本のGDPの成長はぴたりととまり、デフレを深刻化させ、かえって財政は悪化しました。円高と国内の需要不足により、企業は生産拠点を海外に移転せざるを得なくなり産業の空洞化が起きました。また企業のリストラによって優秀な人材や技術が海外に流出しました。自殺者が急増し3万人を下ることはありませんでした。並行して移民緩和政策も段階的に推進されてきました。日本が潜在的にもっている生産能力を減退させる方へ強い圧力が長期的に加えられてきました。
A. 「中華」の側から
B. アメリカの側から
C. 日本国内から
三方向から加えられてきた。
この三つの力に力なく膝を屈してきたのが、冷戦終結以降、20年間の日本の政治であり、その政治を司ってきたのは、主に自民党政権でした。民主党一党が売国だったわけではなく、冷戦終結以降、上の三方向からの力に有効に立ち向かうことのできた政党や政権は、これまで一つもありません。
三つの力から等しく「脱却する」政治が、今こそ求められていますが、A. 「中華」からの圧力や脅威を恐れて、B. アメリカからの力にすがろうというのでは解決になりません。あまりに多くの人たちが「日米同盟を強化すればよい」と短絡的に考えてしまっています。また、民主党政権による3年間の悪政ばかりが過度に強調され、上記の三方向の力に20年間屈服し続けてきた自民党の体質が隠蔽、免罪されてしまっています。自民党自身が過去の失政に対する十分な総括と方向転換を行わないまま、国民が盲目的な支持を与えることは、大きな危険性を孕んでいます。
例をあげるならば、中野剛志氏が、日本の政治、日本の国家としてのあり方そのものに対する次のような怒りの告発を行っています。
中野氏が怒っているのは、日本を弱めゆがめようとする力に屈してきた日本の国家としてのあり方そのものに対してだと思いますが、動画のコメント欄には「結局、日本の癌は、朝鮮人と中国人なんですね」とか、「民主は今後責任追及し、売国奴として裁くべき」など、問題の原因を限定的に考えている方が非常に多い。「中国が悪い、韓国が悪い、民主党が悪い」このような声は、こだまのようにネット上にあふれかえっていますが、日本をぼろぼろにしているのは、何よりも、私たち自身の惰弱さであり愚かさであるということを自覚しなくては、日本はいつまでも衰退の軌道に載せられたままです。特定の国や政党を非難してすむ話ではありません。
自民党の議員からも「三年間の民主党政権でめちゃくちゃにされた」というような趣旨の発言が昨今聞かれますが、彼らは、民主党の三年間の失政を笑い、批判する以前に、自分たちの20年間の失政を心から反省すべきです。国民もこの点において、彼らを盲目的に支持するのではなく、彼らが同じ過ちを繰り返そうとする兆しが少しでも見えるならば、厳しく糾弾すべきであると思います。
安倍政権も、A. 中国からの力に対処するために、B.アメリカからの力に傾斜し、依存し、迎合していくというのでは、問題の根本的な解決にはつながりません。また、C. 内側からの力に対しては、安倍政権は2%のインフレ目標を設定する日銀の同意を取り付けるなど、よいきざしはありますが、消費税の増税を前提している点が問題です。財務省が現在アベノミクスを容認しているのも、将来の消費増税を見込んでのことです。せっかくアクセルを踏んでも、そのあとブレーキをかけるのでは元の木阿弥です。
また、この三方向からの力は、これまでも、ばらばらに働いていたわけではなく、相互に関係し合ってきた可能性があり、また今後も深く関係しうる可能性がある、という点も留意しておくべきであると思います。
「中華」(かつてはソ連)からの脅威が強調される→対米依存の必要性が説かれる→対米従属的な政治が行われる→アメリカの要求を受け入れざるを得なくなる→国力が減衰され「中華」の脅威が相対的に大きくなる→「中華」からの脅威が強調される
という悪循環が繰り返されており、中国を囲い込むどころか、これまで20年以上も日本を囲い込み、日本のポテンシャルの発揮を妨げてきたカラクリの中にさらに深くに絡め、これでは日本の力はますます弱まるばかりです。
次回に続きます。
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