国際司法裁判所単独提訴取りやめから窺い知れるもの
安倍政権が、野田政権が進めていた竹島問題の国際司法裁判所への単独提訴をとりやめることを決定しました。
政府が竹島の領有権問題を巡る国際司法裁判所(ICJ)への単独提訴を当面行わない方針を固めたことが判明した9日、県内の関係者からは「事実なら残念」と単独提訴を引き続き求める声が聞かれた。
県の担当者は「国から正式な見解は聞いていない」と語り、「事実ならば非常に残念。従来もICJへの単独提訴を国に求めており、引き続き強く働きかけたい」と話した。竹島問題に関する国の方針も改めて確認するという。
超党派の県議でつくる「竹島領土権確立県議会議員連盟」会長の原成充・県議会議長も「政府の方針は承知しておらず、単独提訴を引き続き国に求める立場に変わりはない」と話した。その上で、日韓両国での政権交代を踏まえ「日韓の情勢を考えれば、すぐ単独提訴できないことはやむを得ない」とし、「竹島問題を解決するため日韓首脳が話し合う環境を作ることに、我々も協力したい」と語った。
県議会は昨年12月、竹島問題について、政府が速やかにICJへの単独提訴に踏み切るよう求める意見書を可決している。(矢沢慎一)
(2013年1月10日 読売新聞)
予想通りの展開であり、この件について、もうあまり腹が立たないのですが、私たちがしっかりと直視し、記憶に留めておかなくてはならない事実は、韓国の竹島実効支配を放置し、黙認してきたのは自民党政権であるということです。
1952年1月18日から始まった61年にも及ぶ韓国による竹島の不法占拠。自民党政府は、1954年と1962年の合計三回、国際司法裁判所への付託を提案しただけであり、今日に至るまで具体的な対処は何も取ってきませんでした。韓国の竹島の実効支配は、次のようなプロセスで着々と強化されてきましたが、その度に、自民党政府は何の処置もせず黙認してきました。
何の対処も取らないだけならまだよいのですが、さらにひどいのは、自民党が積極的に竹島問題の取り組みを妨害したり、韓国の実効支配をむしろ支援するようなことを行ってきた事実です。島根県「竹島問題研究会」座長であり、竹島問題研究の第一人者、拓殖大学の下條正男教授は、下のインタビューで次のように述べていました。
1)2005年3月15日の島根県の竹島の日制定の際、政府(当時の自民党)から制定を止めるよう妨害があった(20:10ぐらい)
2)2011年8月1日 新藤義孝衆院議員、稲田朋美衆院議員、佐藤正久参院議員は独島記念館のある韓国の鬱陵島を視察するため訪韓したが、入国を拒否された事件で、平沢勝栄議員は予定が入ったとして参加していないが、不参加の本当の理由は韓国元国会議長から山崎卓に止めるように連絡があり、平沢がヘタレ た。石原伸晃も仲介に入って止めた。韓国側からも止めるように森喜朗元首相(日韓議員連盟の元会長)や渡部恒三に依頼があった。森喜朗は自民党に働きかけ、自民党として視察に行く予定が個人の旅行に変わってしまった。この件については拓殖大学の下條正男教授が同年7月31日に先発隊として韓国に入国しようとして拒否されていることから本当のことであろう。(22:25ぐらいから)
3)森喜朗は2006年4月 韓国が竹島の海底地名を付ける時、境港近くに停泊していた海上保安庁の船を撤去させた。(24:10ぐらいから)
今回の決定から分かることは、自民党は何も変わっておらず、従来のやり方を踏襲しようとしているということです。
竹島問題は、日韓双方のいい分にもっともな点があるというような紛争ではありません。アメリカ人のGerry Beversさんが主宰されているDokdo-or-Takeshima?の皆さんがさまざまな資料の緻密な渉猟を通して明らかにしたように、韓国の言い分は100%でたらめであり、その占拠は完全に不法なものです。昨年の李明博による竹島不法上陸以来、国際社会の関心が竹島問題に注がれるようになりましたが、ここで日本が振り上げた拳をおろすならば、それこそ、日本の主張には理がなく、日本政府が韓国の主張を認めたのだという誤解を国際社会に多かれ少なかれ与えることになるでしょう。
さまざまな領土問題を抱える日本にとって、この問題を国際司法裁判所に単独提訴し、国際法に基づいて解決しようという姿勢を国際社会に示すことが、日本の国益に反するはずがありません。「友好な日韓関係のため」に単独提訴を止めやめるということですが、真に友好な関係を樹立するためにこそ、相手の不法な行為をうやむやにするのではなく、きちんと言うべきことは言わなくてはならないし、まげてはならないことをまげるべきではありません。まして韓国は今度は対馬の領有権まで主張し始めています。
しかし、問題なのは、竹島問題それ自身ではありません。領土問題を放置しつづけるその姿勢から透けて見える自民党や安倍政権が抱えている国家観や外交姿勢のテンデンシー(傾向)こそが問題です。外国との「友好関係」を理由に、領土を譲り渡すことをためらわない政党や政権は、他の問題についても、同じような決定や行為を繰り返しますし、実際に自民党はそのような行為を繰り返してきました。「日韓友好」を理由に、韓国の圧力に屈して、国際社会に誤解を蔓延させ、日本の名誉に大きな汚点を残すことになった悪名高い河野談話を出したのは、そもそも自民党政府です。今回も、「竹島問題を国際司法裁判所に提訴するな」というアメリカの圧力があったことが分かっていますが、外国の圧力に屈し、国家としての主体性を放棄してしまっている点は問題です。外国との友好や、外国からの圧力を理由に、民意と国益を犠牲にする政治のことを、通常「売国政治」と呼びます。そういう長年の悪習を断つことこそ「戦後体制の脱却」という言葉が意味するところのものだったはずです。
島一つなら、失ってもいいのかもしれない。しかし、今回、竹島問題に関して安倍政権がみせた同じ姿勢が、「日米友好」や「自由貿易」を名目に、TPPや道州制という問題で反復されるとき、失うのは島一つではすみません。私たちは、主権を失い、未来を失い、歴史を失い、そして国を失います。
私たちが認めなければならない事実は、過去に一千万人移民計画を掲げたり、国籍法を改悪したり、現在も道州制を公約に公然と掲げるような自民党という政党を、単純に「愛国保守政党」などと呼ぶことはできないということです。私たちは、黒いものを見て、白だといいはるべきではありません。
しかし、自民党がいくらだめだからといって、TPPに関しては、他の政党を選ぶというわけにはいきません。他の政党もTPPを支持しているからです。幸い自民党の中にはTPPに反対する多くの議員たちがいます。彼らに強く、強く呼びかけていくことが、今後、一層求められていくと思います。
特定の政党を盲目的に、全否定したり、全肯定するのではなく、有権者として政治家としたたかに向き合い、彼らを馬のように鞭打ち、上手に乗りこなしていく必要があると思います。そうしなければ、政治家は、あまりに容易く、私たち日本国民以外の国や勢力に乗りこなされてしまいます。
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