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2013年4月18日 (木)

三橋貴明はいつ詰むか (12)

毎日毎日、マンガのような善悪二元論を、これでもか、これでもかと繰り出して安倍政権への盲目的な支持を煽りつづけてきた三橋貴明氏。

TPPの熱心な反対論者でありながら、TPPに積極的な安倍政権を支持すると言う、彼が抱え込んでしまった巨大な矛盾は、いつ、どのような形で解消されていくのでしょうか。

という、問いかけで続けてきた本シリーズですが、三橋貴明ブログは、TPPの日米事前協議の合意が発表された翌日、4月13日の下の記事をもって「詰んだ」と見てもよいのかもしれません。

●今日の三橋貴明ブログ

交渉力
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11510382168.html

●今日の「見ざる・聞かざる・言わざる」

「詰む」という言葉を、本シリーズでは、「TPP反対」と言いながら、TPPを推進する安倍政権を批判しないという矛盾が解消されると言う意味で使っています。

つまり、三橋貴明氏は、ようやく、4月13日の記事で、次のような腫れ物に触るような言い回しではありますが、安倍政権をちょっぴりだけ「批判」するような記事を書いています。

アメリカとの事前協議で、日本の情けない「交渉力」を見せつけられた以上、国民側としては、「TPP交渉に参加して、合意を覆せず、国民との約束を守れないとわかった場合、交渉から離脱するのか、否か」について、安倍政権に説明を求めて構わないでしょう。

もちろん説明を求めて構いません。

政治家に説明責任を求めるのは当然のことですから、「説明を求めて構わないでしょう」などと言う必要すらありません。

説明を求めて構わないどころか、もっと声を大にして批判していただいて全く構いませんよ、三橋先生。

政府が明らかに国民の利益に反して行動しようとしているわけですから、腫れ物に触るようにおそるおそる批判する必要は全くないのであって、下の中野剛志氏の記事のように、大胆に何らの躊躇も斟酌もなく批判してまったく構わないのです。

【東田剛】エグ過ぎるTPP日米合意

FROM 東田剛

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●月刊三橋4月号のテーマは「TPP徹底解説」。

⇒ http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_1980/index.php

これほどの「不平等条約」を突きつけられても、
「TPP加入はマスト」と言えるのか。

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TPPの事前協議の日米合意について、USTR(米国通商代表部)による報告が凄まじいです。

<全文仮訳>
http://www.yamabiko2000.com/modules/wordpress/index.php?p=330

まず、米国の自動車関税の撤廃延期を巡る合意は、米韓FTA以上に米国に有利だとしています。
日本は、韓国よりも譲歩しちゃったんですね。

また、日本は簡単な審査で外国車の販売を認める台数を年間5000台に増やすことになりました。
「自動車の数値目標は受け入れない」という、安倍総理が守ると約束した自民党の6条件の一つが、もう破られました。

では、自動車で米国に譲歩した代わりに、日本は何を得たのでしょう。
農業の保護でしょうか。
違いますね。
日本が得たものは、TPP交渉参加です。つまり、本交渉でもっと米国に獲られるために、自動車で譲歩したというわけです。

農業などを守りたければ、本交渉で頑張るしかありません。
しかし、USTRは、日本側が、現在の交渉参加国がすでに交渉した基準を受け入れると言明したとも報告しています。
交渉の余地は、ほとんどないのです。

しかも、それだけでは許してもらえませんでした。
なんと、TPPとは別に、日米間で非関税障壁を協議する場が新たに設けられることとなったのです。
その非関税障壁とは、保険分野、投資のルール、知的財産権、政府調達、競争政策、宅配便、食品の安全基準、自動車の規制・諸基準やエコカー支援や流通などです。
仮に日本がTPP交渉不参加となった、あるいは交渉で日本の主張を通せたという奇跡が起きても、米国は、別途、タイマンで日本に圧力をかけることができるのです。

これはエグ過ぎますね。

以前、米国は日本に「イエス」しか期待していないという話をご紹介しましたが、事前協議でも、日本側は、「イエス!オーゥ、イエス!」と洋物AVみたいに絶叫し続けたんでしょう。
http://toyokeizai.net/articles/-/12903?page=5

もっと恥ずかしい話もあります。
麻生大臣は、かんぽ生命のがん保険など新規業務を当面、認可しないと表明しました。
しかし、この措置は、日本側が一方的に通告してきた話だとUSTRは報告しております。つまり、協議とは無関係という扱いなので、日本側に見返りとして得るものはありません。
ただで米国にサービスしたのです。

USTRは報告書で「米国政府が一連の協議を成功裏に完結した」と宣言し、日本のTPP参加は「競争力のあるアメリカで生産された製品とサービスに対する日本市場のさらなる開放を意味する。そのことは同時にアメリカ国内の雇用を支えるのだ」と凱歌をあげています。

三橋貴明さんは、4月13日のブログで、この交渉力の弱さについて、安倍総理は国民に何らかの「説明」をする必要があると述べました。
でも、安倍総理は、すでに説明済みです。

「TPP交渉参加に向けた米国との事前協議が本日、合意に至りました。厳しい交渉でしたが、日本の国益をしっかり守ることができたと思います。TPP交渉参加は国家百年の計。TPPは、経済的メリットに加えて、自由や民主主義、法の支配といった、普遍的価値を共有する国々とのルール作りは安全保障上も大きな意義があります。日本の国益を実現するための本当の勝負はこれから。最強の体制の下、一日も早くTPP交渉に参加し、TPP交渉を主導していきたいと思います。」(官邸Face Bookより)

TPP交渉を主導していきたいだと?
「猿(モンキー)が人間と交渉できるかーッ!おまえはこのUSTRにとってのモンキーなんだよシンゾォォォォーーッ!!」(USTR Face Bookより)


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【三橋貴明はいつ詰むか】シリーズ」カテゴリの記事

コメント

ぼんたろー様

「それ、間違ってるよ、中村君」

というまとめブログがありました。

「ました」というのは、三橋の圧力により、削除させられてしまったからです。

そこに三橋の邪悪な正体について書かれていました。

いまでもあちこちに断片が分散していますので、三橋の本性に早く気づかれることをお勧めします。

三橋のブログ内でのイメージは、作られた虚像に過ぎないのです。

投稿: だめだめわんこ | 2013年4月23日 (火) 05時25分

丁寧に説明ありがとうございます。

私はTPPに関してはギリギリまで三橋氏を信用し、安倍は参加表明しないのではないかと信じていました。
しかし、「悲劇」は起こってしまったわけで、それは私にとってだけでなく、三橋氏にとっても「悲劇」だと思っていました。

しかし、先ほど三橋氏の記事を読んだ後にこれはダメだと思い、少し物思いにふけっていたところでした。
http://ameblo.jp/bonbon331/entry-11516485080.html
ちなみにこれは、三橋氏のブログを読んだ後に書いた自分のブログです。
三橋氏が麻生さんを庇っているのは、信じられないと思い、安倍政権はデフレ脱却なんかする気がないと述べさせてもらっています。

ただ、まだ三橋氏を悪意のあるインチキと呼ぶほどは明確に疑うことはできず、フラフラしている私ですが三橋氏のブログもより気をつけて読もうと思います。

投稿: ぼんたろー | 2013年4月23日 (火) 01時38分

ぼんたろーさん

三橋氏は、以前、「35人 対 233人」という下の記事で、自民党にたくさんのTPP反対派の議員がいることを誇らしげに語っていました。

http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11470196408.html

しかし、230名を超えていた自民党の反対派議員は今はどうなったでしょうか。「TPP参加の即時撤回を求める会」は早々に「TPP交渉における国益を守り抜く会」へ改称し、TPP参加を既に容認してしまっています。

http://shimotazawa.cocolog-wbs.com/akebi/2013/04/post-4ecb.html

自民党が、公約において明確にTPP参加と道州制の導入を行わないことをを明示しないかぎりは、「安倍政権VS自民党」などという図式はなりたたないはずです。三橋氏が本気でTPPに反対しているなら、彼が国民に語るべき事はただ一つ、参院選は、自民党に絶対に投票してはならないということです。

三橋氏も、安倍政権に対してやんわりと批判するような記事を書かなければならない状況に追い込まれていますが、安倍政権への批判が、自民党全体への批判に拡大しないように、巧妙に振る舞い、「インチキな仕立て屋」としての役割をいまだに演じ続けています。

彼の言論の姿勢からは「誠意」と呼べるものは、私には、みじんも感じられません。

特に今日の記事はなんですか。

http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11516019702.html

さんざん安倍がTPP交渉に参加するという報道を、マスコミの「飛ばし」だと決めつけて読者の目をごまかしてきて、それが「飛ばし」でもなんでもなく真実の報道だった事が既に明らかになっているにも関わらず、今度は麻生が消費税を予定通り行うと報じた記事を「飛ばし」だと決めつけています。三橋という男は本当に恥を知らない男です。安倍政権の周辺は、このようないかがわしい人物だらけではありませんか。

投稿: WJF | 2013年4月22日 (月) 22時33分

4月18日の記事の最後に

さて、「アメリカの農家の所得増大(=日本の農家の所得縮小)」な交渉をやってしまったようにしか見えない安倍政権ですが、自民党側はどうするのでしょうか。
一度動きだしてしまい、なかなか方向転換できない「政府」をコントロールすることも、与党の役割の一つだと思うわけでございます。

とあります。

三橋氏はここで「安倍政権VS自民党」という構図を作り、自分は自民党側に立つことで、安倍氏を批判していくことにしたのではないかと思います。
これを、決意と取るか誤魔化しと取るかは意見が分かれるかと思いますが、個人的には、今後安倍政権をきちんと批判してくれるなら十分誠意のある人物と思います。

投稿: ぼんたろー | 2013年4月22日 (月) 19時53分

本屋で目立つように立てかけられた本を見て驚きました。

 『アベノミクスで超大国日本が復活する! 三橋 貴明』

単に新刊だからなのでしょうが、他にも”アベノミクス”を題に含めた本が多く並んでました。実質安倍氏を持ち上げる看板となっており、恐くなってしまいました。
本当に国のことを考えているなら、

 『TPP交渉参加表明で最貧国となる!』

という題で本を書くべきでしょう。

投稿: たかたろ | 2013年4月20日 (土) 15時36分

WJF様

麻生さんは『平成の高橋是清』なんて大嘘でした。
重大な事を先ず外国に発表するなんて、民主党と同じです。

三橋さん、また一つ詰みました。

財務相
「消費税予定通りアップ」英紙寄稿で表明

【ロンドン共同】
麻生太郎財務相は19日付の英紙フィナンシャル・タイムズに寄稿し「消費税は予定通り引き上げるつもりだ」として、来年4月から8%に増税する意向を示した。  

消費税増税について、政府は「さまざまな指標を見て総合的にタイミングを判断したい」(安倍晋三首相)との立場。

麻生氏の表明は一歩踏み込んだ「対外公約」となりそうだ。

麻生氏は「金融緩和に財政健全化が伴わなければ、悪い金利上昇が起きうるが、それはわれわれの計画ではない」と強調。
政府債務について「政策当局者らは危機感を持っている」と訴えた。

投稿: 中野剛志さんのファン | 2013年4月20日 (土) 11時33分

WJFさんは把握されているのかも知れませんが、その翌日の記事を見ると、もう逃げ道を作っていると思います。
TPPに参加しても大して変わりないか、そういう状況だから、参加するのはやむを得ないか。
名称が思い出せなくて申し訳ありませんが、菅政権時に米国が日本に圧力をかける何やらができたそうで。
これを利用すれば、自民党は民主党の悪政の被害者みたいに言うことも可能です。
インチキ野郎と言われたくなければそういうことはやめるべきと思いますが、自身の信者以外にも日本という国より守りたい物がある限り、無理でしょうね。

投稿: 北野茂良 | 2013年4月19日 (金) 19時24分

政治系ブログランキングのトップにいる三橋氏の不思議なところは、
新自由主義、グローバリズム、そしてTPPにロジカルにかつ、
実際のソースで批判、反論していながら、それらに完全に染まって、
かつ具体的に推進している安倍首相に対しては、その批判の矛先を
一切向けないところです。

彼は、完璧な政治家などいないと嘯いて誤魔化しています。

日本にとって全くメリットがないTPP、道州制を推進する政治家、
まして首相なら、たとえ他の政策でプラスが多少あっても、
その二つが実現してしまえば、すべて帳消しどころか、あまりにも
マイナスが大き過ぎて日本が壊れてしまう事態を招くわけで、
まさに売国奴そのものではないですか!?

三橋氏は、安倍首相を批判をしないという矛盾をかかえたまま、
相対化という得意の方便で軸足をふらふらさせて、不誠実なままの
言論を、これからも垂れ流していくつもりでしょうか?

投稿: こしき | 2013年4月18日 (木) 23時18分

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