どうして冷戦的二極構造は日本に有効でないか
「ウヨク」や「サヨク」といった、冷戦的な二元論では、日本を守ることはできないと、これまで、繰り返し述べてきました。
今日は、このことを別の視点から、簡単な図式を通して、説明してみたいと思います。
社会主義が発生した世界史的な背景はまた別の機会に述べたいと思いますが、まず簡単な歴史的事実として理解していただきたいのは、「自由主義」とか「社会主義」というイデオロギーの対立は、外国で起きたものであり、元来は私たちにとって関係のない争いごとであったということです。
そして日本は、原始共産主義と呼んでもいいぐらい、もともと平等な社会であったということです。下の記事に引用したマシュー・ペリーによる当時の日本についての記述を読めば、日本が江戸末期に既に平等な社会を手に入れていたことがお解りいただけると思います。(もちろん観念的な意味で平等であったわけではありませんが。)
そのような独特な社会を構成していた日本にとって「自由主義VS社会主義」という外国で生じたイデオロギーの対立は蚊帳の外の話であったはずであり、いずれのイデオロギーについたとしても、もともとの日本社会の姿を歪めてしまうことになったことでしょう。
しかし、戦後日本人は誤認しました。アメリカとソ連を筆頭とする東西の争いの間に挟まれて、自らがあたかも、自由主義と社会主義の間に立たされていると誤解した。
そして「社会主義」は悪であり、「自由主義」こそが善であると刷り込まれた結果、アメリカに傾斜していきました。
このようにして「自由主義」を「保守」と誤解してそれに傾斜していけば、もともとの日本の、家族のような平等な社会や国柄が崩れていったとしても当然のことです。
冷戦終結以降の、グローバル化の進展と新自由主義的な構造改革が繰り返された結果、一億総中流の名を誇った日本のぶあつい中間層は破壊されてしまいました。中間層の破壊によって、内需はしぼみ、デフレもひどくなりました。
その流れが、安倍新自由主義政権の下で一層加速化していきます。
従って「ウヨク」や「サヨク」といった善悪二元論では、日本の国柄を守っていくことはできません。
外国のイデオロギーで国を守ることはできません。
日本の国柄を守るためには、「ウヨク」や「サヨク」といった鋳型にはめられることのない、日本の固有のあり方から出発した、独自の社会思想、そして政治思想が必要なのだと思います。
いまだに新自由主義的な政治家や政党を「保守」と誤認しやすい理由には上のようなカラクリが隠されています。
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コメント
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どうして冷戦的二極構造は日本に有効でないか
http://www.nicovideo.jp/watch/sm21237115
3月頃も安倍政権の売国の速さについていけなかったです。
投稿: よしふる | 2013年6月30日 (日) 02時19分
WJF様
左派と右派、社会主義と資本主義など、2項対立思考の危険を、WJF様は何度も説いていらっしゃいます。
思うのですがTPPも、
『行き過ぎた資本主義・自由主義』
VS
『国家による保護・規制の必要性』
という対立軸で考えがちなのが気になります。
TPPの本質はグローバル資本による、ライフライン(水、電気、食料)を支配し権力を集め、参加国の法律を凌駕する、恐ろしい独裁体制の構築だからです。
「自由な経済活動は大事だけど、必要な規制はあるよねぇ…」
「経済優先で国家を潰すなんて許せない!」
「アメリカ経済が行き詰まってるからって、日本から搾取するな!」
という観点でTPPを語っては、TPPが経済戦略の一形態であるとの印象を与え、危機感を薄めてしまうと危惧します。
TPPは『経済活動』ではなく、『独裁』であるとの共通認識による主張が、これからのTPP反対派には不可欠です。
投稿: 中野剛志さんのファン | 2013年4月26日 (金) 18時38分
アメリカがどういう社会なのかを知るのに、下の本をお薦めします。読みやすい本です。
「貧困大国アメリカ」
「貧困大国アメリカⅡ」
アメリカの保険制度の酷さがわかります。
なぜ徴兵制がないのに多くの兵を確保できるのかがわかります。
あらゆるものを民間へ移行させた結果、刑務所までビジネスになっている事実。
こんな社会は絶対に招きたくない。
投稿: たかたろ | 2013年3月26日 (火) 00時23分