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2013年3月23日 (土)

安倍政権が推進する東アジア共同体構想

私は、安倍政権は、あらゆる政策において、ダブルバインド的な、奇怪な二律背反を抱えた政権であると指摘してきました。

●「日本を取り戻す」といいながら、TPPで日本を売り渡す
●「戦後レジームからの脱却」といいながら対米隷属を徹底させる。
●アベノミクスによるデフレ脱却を唱えながら、デフレを加速するTPPを推進する
●「瑞穂の国の棚田を守る」と言いながら、地域を疲弊させる道州制を推進する

通常の人間の理性は、ここまでの二律背反には耐えられないはずです。統合できない二律背反を執拗に突き付けられた場合、人間は思考を停止し、一種の洗脳状態に置かれてしまいます。

しかし、ここに新しい二律背反を加えなければなりません。

●「対中包囲網」といいながら、東アジア共同体を実現させる

という二律背反です。

安倍政権は、「対中包囲網」の形成を主眼とした「セキュリティー・ダイヤモンド構想」を掲げる一方で、日中韓FTAを推進し、またRCEPという、ASEAN+3 (ASEAN+日中韓)とASEAN+6 (ASEAN+日中韓印豪NZ)を統合した、包括的経済連携構想を推進しています。

Img4

ASEANが推進の核となっていますが、経済規模から将来は中国がその中心を占めることになることは必至でしょう。

この流れの中で、安倍政権は、東アジア共同体論者であり、中国に迂回融資を続けてきたアジア開発銀行の総裁、黒田東彦氏を日銀の総裁に指名したのです。

黒田氏は、『通貨の興亡』(中央公論新社)という著書の中で、次のようなことを述べているそうです。

「参加各国の通貨はひとつの通貨になり、地域ごとにある現在の中央銀行の金融政策も一つになる。そうなるためには国家主権の一部を永久に放棄することが必要となる。アジア共通通貨実現の可能性は今世紀(=21世紀)中にかなりの確率がある」

青木直人BLOGからの引用です。

黒田東彦と言う迷宮

2013年3月22日 23:03 青木直人
●先日のライブトークでもお話ししたのですが、安倍総理が任命した黒田東彦前アジア開発銀行総裁は過去の経歴や発言を見る限り、果たして信頼のおける人物なのかどうか疑問は尽きません。彼は次のような主張をしているからです。

●「いまだに完全な国際通貨になりきれていない円と、将来は国際通貨になりうる人民元が協力して、東アジアにドルやユーロと共存できるような共通通貨をつくる必要がある」
これは黒田氏の著書「通貨の興亡」(中央公論新社)の一節です(カッコ内は文章の一節または要約)。彼のアジア開発銀行総裁就任が2005年2月、ちょうど同じ月に発売されたのがこの「通貨の興亡」。つまりここには開発銀行総裁としての彼の哲学が反映しているのです。

●彼は東アジア共同体論者であることを隠しません。黒田氏はEU統合を参考にして、本書のなかで、こう続けるのです。
「アジアにおける金融市場、労働市場の統合が必要であり、それは共通通貨、単一通貨に進む場合、不可欠である」
「そして最後の段階では各国の通貨を一挙に相互に固定して引き返さない」。
堂々たるアジア経済共同体の提唱です。

●さらに、次の箇所は衝撃的です。
「参加各国の通貨はひとつの通貨になり、地域ごとにある現在の中央銀行の金融政策も一つになる」
「そうなるためには国家主権の一部を永久に放棄することが必要となる」
「アジア共通通貨実現の可能性は今世紀(=21世紀)中にかなりの確率がある」。
これが大蔵省国際金融局長からアジア開発銀行のトップに上り詰めた黒田氏の発言なのです。「一部ではあれ、日本の主権の永遠の放棄」。彼はそこまでしてアジア共通通貨を実現したいと言うのです。

●黒田氏は中国、韓国、日本の三か国はまずFTAの締結を実現せよ、為替レートの安定を追求せよとも言っています。彼がここで主張している文脈に即して言えば、アジア共通通貨が実現するためには「現在の中央銀行」即ち黒田氏が新総裁に就任したばかりの日本銀行と中国政府の中央銀行・中国人民銀行の金融政策が「一つになる」ことが求められる。

もういいでしょう。もはや多くの説明は不要です。黒田アジア開発銀行はこういう総裁の経済統合構想をベースに中国に対して膨大なマネーを供与し続けてきたのです。

●私の黒田氏への疑問は日本政府外務省が中国向け円借款の受注対象から交通インフラへの援助を外し、中止してからも、アジア開発銀行はそれに逆らうように、インフラ投資を増やし続けていることでした。面妖な話です。アジア開発銀行は「日本財務省の植民地」とまで揶揄されるほど、日本政府の影響力が強い国際金融機関です。にもかかわらず、日本政府・外務省が今後は円借款融資の対象にはしないという中国国内の道路空港、鉄道建設になぜ今も総裁職にいる財務省の高官らは膨大な資金を提供しつづけているのでしょうか。

●黒田総裁時代、中国は日本を脅かすほどの軍事大国に成長していき、いまや我が国固有の領土尖閣諸島すらも、「日本が中国から奪い取った核心的利益の場所である」と言い放つほどになったのです。その間、黒田氏の対中感は一貫して「中国は覇権国家ではない」というものだったのです。

●こんな体たらくでは日本政府の対中援助姿勢には何の哲学もなく、露骨な二面性を帯びていると批判されてもやむを得ない。ですが、もっと唖然としたのは、私のこうした疑問と質問にアジア開発銀行から帰ってきた回答は「そうした政治的問題には回答できません」というそっけないものだったことです。読者の皆さんの感想はどうでしょうか。

●安倍政権の閣僚の方ならどなたでも結構です。黒田アジア開発銀行が行っていた対中援助前のめり政策と日本外交の整合性を説明していただけないものでしょうか。TPP交渉参加表明に次いで、安倍総理が日本の中央銀行総裁に任命したのは「アジア共通通貨実現のためには日本の国家主権の一部を永遠に放棄する」と明言するような「国際派エコノミスト」だったのです。

●このままなら、安倍「保守本格」政権のもと、黒田日銀と中国との経済統合に向けた動きに拍車がかかるのは間違いないでしょう。黒田日銀総裁就任で、日中韓FTA交渉への障害も民主党時代よりもハードルは下がったとも見ていいでしょう。

●これが総選挙最終日、熱狂する善意の若者たちが、秋葉原で日の丸の旗をふりながら、「救世主」安倍晋三に涙ながらにエールを送ってから3か月目の光景なのです。「おまかせ定食」のメニューは支援者の方々の希望通りのものだったのでしょうか。教訓にすべきは単なる思いこみではなく、事実を直視するということではないのでしょうか。そして、願望ではなく、客観的で正確な情勢動向の分析なしにいかなる社会活動も成功は期し難いということなのです。主観的な願望や楽観はいともたやすく事実と言う客観性に報復されてしまう。

●自画自賛するようですが、NLCの読者で安倍総理のTPP交渉参加や日中韓FTA交渉の進展、さらに対中援助復活に疑問を持っていた、あるいはもっている読者はひとりもいません。日本に対する中韓の傲慢無礼な振る舞いに正当な怒りを感じてきた多くの日本人はTPPに次いで、今度は「中国に強い」はずの安倍外交にもう一度裏切られることになるのでは、とそんな予感をもつのです。

「日本を取り戻す」
「戦後レジームからの脱却」
「対中包囲網」

安倍政権の実際の政策は、常に、国民に向けて語っているスローガンと正反対の方向を目指しています。

安倍さんは、「中国包囲網」を形成しようとしている。そのためにTPP参加をやむなく決断しようとしているのだ、と素直に信じている安倍支持者の方たちは、認識を根底から改めた方がよいという話です。



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コメント

だめだめわんこさんへ
私も勉強中の身で、おこがましい気もするのですが、国際情勢については伊藤貫氏の著書や動画がおすすめかと思います。米国追従路線も東アジア共同体も、同じリベラル派の発想であり、間違っていると語られています。

投稿: やみ子 | 2013年3月24日 (日) 00時41分

わたしは所謂まとめサイトでTPPや安倍氏関連のニュースがあれば、
コメントに書き込むようにしています。
「交渉の余地などない。交渉力で改善なんて不可能」
「事実カナダ・メキシコは条件丸呑みさせられた」
「景気対策よりTPPという滅亡フラグの方が重大」
などなど。

書き込む内容は、感情的な安倍叩きと思われないように気をつけています。

気のせいか「TPP交渉参加しても安倍しかいない!」という空気が
少し和らいできた気がします。

まとめサイトではなく、YouTube動画へのコメントもいいと思います。
日々できる活動としては手軽でよいかと思ってます。

投稿: たかたろ | 2013年3月23日 (土) 22時02分

しかし三橋ブログなどで撒き散らされた「安倍や麻生は保守」だという思い込みが世間では広まりすぎて、参院選までにひっくり返せるのか不安です。このまま参院で安倍大勝で憲法改正だなどと思っている人も多いので。しかし参院で自民が勝ったら、歯止めが完全に無くなり、日本が安倍新自由主義に滅ぼされてしまいます。お許しください。ここのブログの存在に気づいたのは、今日なのです。こんな優良なブログが警告してくれていたのに・・・すみません・・・すみません(泣)。

投稿: だめだめわんこ | 2013年3月23日 (土) 15時07分

すみません。この件もまったく存じませんでした。鳩山など民主党の東アジア共同体構想は私も非難していましたが、まさか安倍自民党も推進していたとは・・・。自民党も東アジア共同体構想の推進者だったのですね。この構想とアメリカの関係は何でしょうか?アメリカの指示なのでしょうか?それともアメリカに対抗するためのものなのでしょうか?

投稿: だめだめわんこ | 2013年3月23日 (土) 15時02分

はじめまして。安倍や麻生が新自由主義者だと、ここへきてようやく確信しました。今までやつらが保守だとばかり思い込んでおりました。不明を恥じるばかりです。その割には実際に政権につくと韓国を優遇したりおかしなことばかりするので?だったのですが、やつらの口先に騙されておりました。行動で考えれば竹中を優遇している時点で気づくべきでした。自民党に投票して大勝させてやつらに取り返しのつかない権力をお与えてしまい後悔しています。民主党憎しのあまり目が曇っていました。どちらも売国奴だったのです。自民=アメリカ・韓国派、民主=支那・朝鮮派。今度の参院選で自民党を大敗させねばなりません。私も微力ですが協力します。

投稿: だめだめわんこ | 2013年3月23日 (土) 14時41分

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