「インチキな仕立て屋」と「正直な子ども」
安倍政権発足以来、日本は、まさにアンデルセン童話の『裸の王様』状態でした。
実際には「王様は裸」=「安倍晋三は新自由主義者」だったのですが、
誰も本当のことを語らなくなった。
誰も本当のことが見えなくなった。
このような錯誤が起きた背景には、アンデルセンの童話と同じく「インチキな仕立て屋」の存在があります。
その「インチキな仕立て屋」の一人に、三橋貴明氏という経済評論家の存在があり、彼は、いまどきのロボットアニメや戦隊ヒーロー物にも採用されないような、子供染みた単純な善悪二元論を毎日毎日振りかざし、世論を自民党支持、安倍晋三支持という一方向に追い込んできました。
その善悪二元論とは、
「自民党(善)vs民主党(悪)」
「安倍政権(善)vsマスコミ(悪)」
といったもので、彼のブログのどの記事を読んでも、このマンガのような善悪二元論が、これでもか、これでもかと執拗に反復されていることを、どなたも簡単に見つけることができるでしょう。
社会経験を積んだ大人であれば、世の中に絶対的な「善」など存在しないこと、誰も彼も、多かれ少なかれ不完全さを抱えた「悪」であることぐらい分かるはずなのですが、
このような「インチキな仕立て屋」に騙されて、人々は「安倍さんは愛国者」「安倍さんさすが」「安倍さんはTPPやらない」「安倍さんを信じよう」と事実とはアベコベの「信仰」を抱くようになってしまいました。
しかし、このような異常な状況の中にも、『裸の王様』に登場する「正直な子ども」のように、本当のことを語るごくわずかな人々の存在がありました。
その中に「東田剛」というペンネームの評論家がいらっしゃり、当ブログでも何回かその方の文章を引用してきましたが、その正体が中野剛志さんであることを、昨日コメント欄で教えていただき、とてもうれしくなりました。
中野剛志さんの著作は、私も何冊か拝読したことがありますが、哲学、社会学、政治学、経済学と広範な知識と思索に裏打ちされた、金太郎飴のように、どこを切っても本物の保守論客と尊敬申し上げている方です。
その方がTPPと日米首脳会談の成果について最新の記事を掲載されていますのでどうかお読み下さい。
FROM 東田剛
平和な日本には「まずはTPP交渉に参加してみて、有利なルールを作ればいい」と言う勇ましい人がたくさんいます。
しかし、孫子曰く「勝兵はまず勝ちて、しかる後に戦い、敗兵はまず戦い、しかる後に勝を求む。」
「まずは交渉に参加してから」などというのは、敗兵のやり方だということです。
さて、先日の総理訪米時の日米共同声明を見ると、日本に交渉力などなないことは、悲しいほど明らかです。
まず、いきなり「全ての物品が交渉の対象」となっています。これは野田前総理ですら、一応は拒否した条件ですが、それを安倍総理は正式に認めてしまいました。
次に、確かに、日本にはセンシティブな農産品があることが確認されてはいますが、その引き替えに米国にもセンシティブな工業製品(おそらく自動車)があることを認めさせられています。ただでさえメリットに乏しいTPPですが、さらに米国のわずかな工業関税すらも撤廃されない可能性も出て、メリットがさらになくなりました。
それどころか、事前協議で「自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処」することが確認されています。米国の自動車業界は、日本に対する要求は通し、関税は下げないという満額回答を勝ち得たわけです。
また、「両政府は,最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」とありますが、要は、結果は交渉力次第だという当たり前の話に過ぎません。こんなこと、総理がわざわざ訪米して大統領に確認するような話でしょうか。
しかし、日本は、米国よりはるかに多くの保護すべき品目や分野をかかえている中で、どうやって交渉を有利に進めるのでしょうか。自動車関税で米国に譲歩すれば、代わりにコメくらいは守れるかもしれません。では他のたくさんの品目や分野は、何を取引材料にして守るのでしょうか?
しかも、米国の狙いは、関税よりむしろ「非関税障壁」の撤廃にあります。自民党の「6条件」にも明らかなように「聖域」を確認すべきは、医療や保険などの非関税障壁なのです。しかし、その点は何ら共同声明に明記されませんでした。
それどころか、逆に、自動車や保険に加え、「その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている」とあります。
TPP交渉に参加したいなら、事前協議の段階で、米国の非関税障壁に関する要求を飲めということです。武装解除してからTPP交渉に参加せよということです。
しかも、オバマ大統領はTPP交渉の年内妥結を宣言していますが、交渉の会合はあと三回くらいしかありません。
安倍総理は、再三「国益を守る」と述べていますが、こんな状態で、TPP交渉に参加して、どうやって国益を守ることができるのでしょうか。
その方法は、論理的には、一つしかありません。
それは「国益」とは何かを、新自由主義者・構造改革論者に決めてもらうことです。そのための場として、すでに経済財政諮問会議や産業競争力会議が設けられています。
さて、これを読んで絶望的な気分になったTPP反対論者のあなた。それくらいで気が滅入るようなら、はじめから日本の政治や経済に関心をもってはいけなかったのですよ。世の中のことが分かるということは、厳しくつらいことなのです。
中野剛志氏のように、事実を見て、事実を語る、「正直な子ども」がもっともっと現れますように。
そして、みなさん。どうか「インチキな仕立て屋」には騙されないように気をつけてください。
「インチキな仕立て屋」は、あちこちに「保守」の看板を掲げて隠れています。
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コメント
>とくめい徳子
戦後70年、教育やメディアや政治、あらゆる手段でアメリカが日本人を洗脳してきた。その洗脳を疑うことなく生きてきた戦後日本人。その戦後70年の洗脳の上にさらに輪をかけて洗脳をしかけているのがチャンネル桜やその周辺の連中であり、それが今の亡国を招いています。人々を早く目覚めさせないと本当に大変なことになります。
投稿: WJF | 2013年3月 2日 (土) 04時22分
どこの議員事務所でも、TPPは国が亡くなる事をご存じでした。
自民党本部に抗議、反対はチラホラと言っていました。
「賛成の方が多いのですよ。反対しない人は皆賛成です」
そうおっしゃてます。
外務省に参加表明したら抜けられるか聞きました男性「論理的に可能です」男性「交渉してないので何とも言えませんが、抜けられると思います」
女性(北米担当)「難しいですね。抜けられないと思います」
投稿: とくめい徳子 | 2013年3月 2日 (土) 04時05分
せっかく民主が終わって一安心かと思ったのに・・・
まあ、選挙前にはあれだけ強気な保守アピールしておきながら、なった後の弱気で曖昧な姿勢や、
公約破りの理不尽な譲歩を見ていて不安を感じていたんですが。
こうして見ると一番の問題は国民が政治・経済・国防・国際情勢などに無関心なことでしょうねえ。
投稿: 糸こんにゃく | 2013年2月28日 (木) 21時16分
ささきさん
どうして新自由主義者の安倍晋三を、新自由主義に反対する政治家のような誤認が人々の間にあれほど広範囲に広がったか。「インチキな仕立て屋」の存在なしには、やはり説明がつかないと思います。かなり意図的に世論のミスリードや安倍晋三の神格化を計った人々がいます。誰が「インチキな仕立て屋」だったか、今後明らかになっていくと思いますが、チャンネル桜の周辺に「インチキな仕立て屋」がいなかったと考えるのはかなり苦しいと思います。私は単に彼らが安倍を支持しているという理由で「インチキな仕立て屋」と考えているわけではありません。水島については、彼自身ある動画の中でかなりぼろを出しています。三橋氏については、彼は本当に安倍が新自由主義者であるという程度のことを認識していなかったのでしょうか。いずれにしても、安倍政権とその周辺に関しては、あまりに矛盾に満ちており、いかがわしいことだらけです。
この件についての私の考えは下の記事等に書いてありますので、読んでみて下さい。
国賊チャンネル桜: 本当に守るべきものは何か
http://wondrousjapanforever.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-5357.html
警告: 安倍政権の新自由主義的本質を隠蔽しようとする情報工作について
http://wondrousjapanforever.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-0c75.html
不可解な矛盾(1): 新自由主義的政権が反新自由主義と誤認されている矛盾
http://wondrousjapanforever.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-fd9d.html
投稿: WJF | 2013年2月28日 (木) 18時26分
WJFさん、ご返信、ありがとうございます。
早くから安倍氏の本質を見抜かれ、このような活動をなさっていることに敬意を表します。
<安倍政権、倒すべ>という点においては、100%賛成ですが、
<三橋も水島も、奴らのグルでしょう>というお考えには、賛同しかねます。
そのような単純な<あいつに味方するものは、みんなグル>論は、
私、いやというほど見てきています。
チャンネル桜の動画のコメント欄、三橋氏のブログのコメント欄、倉山、上念氏の陰謀論、みな同じ<あいつに味方し、我々に反対するものは、工作員>という<敵/味方>2元論です。そこでは、自由な言論は封殺されてしまいます。
WJFさんが尊敬していらっしゃる中野剛志氏は、そのような単純な分類、レッテル張りを非常に嫌っていらっしゃることは、よくご存じかと思います。
ですから、彼の評論集は<反官反民>と題されているわけです。
彼は、ある文章の中で、<民主主義とは、議論することであり、議論とは、
あらゆる角度から、物事を吟味しようとすることだ。>という趣旨の発言をしています。現実は、単純ではないからです。
安倍氏と保守派の関係にしても、同様だと私は考えます。
水島氏も三橋氏も、大の新自由主義嫌いです。それは、本当のことです。
そういう彼らが、なぜ、安倍氏にからめとられてしまったのか。
単純な<グル論>では、事態を解明できないと思います。
現時点で、彼ら、安倍支持の保守論客たちは、支持を継続しそうな気配です。しかし、今後、どうなるかはわかりません。
WJFさんの動画のコンセプトは、客観的事実を提示することによって、
反日のねつ造を理解してもらい、自然に、視聴者が納得することを目指していると思います。敵対的攻撃は、かえって逆効果であることをよくご存じだからです。
同じ戦法を、安倍政権つぶしにも、採用すべではないでしょうか。
事実を積み上げ、客観的に提示すれば、知性のある人間は、みずから
納得していくものです。
以上、長々と失礼なことを申し上げてしまいました。
お許しください。
投稿: ささき | 2013年2月28日 (木) 18時16分
すみません。勘違いをしていました
>ランキングの一覧に、更新があったブログにはUPマークがつくのですが、このブログはそのマークがつかないんです。pingが飛んでないのではないでしょうか。
このUPマークはランキングが上がったしるしだったようです。申し訳ありません訂正いたします
投稿: じゃぽねーず | 2013年2月28日 (木) 17時57分
warakujapanさん
目覚める人々は増えてきていると思います。騙そうとする人たちの矛盾もどんどん浮き彫りになってきています。彼らの嘘ががらがらと崩れるときが来ると思いますよ。
投稿: WJF | 2013年2月28日 (木) 17時49分
WJFさんこんにちは
「トロイの木馬」戦術「愛国?広告塔」のプロカバンダーがWJFさんの書かれておられる団体や個人以外にもぞろぞろ始まってきたように感じます。
内も外もとなり以前よりもさらに難しくなってきました。
ですが、小さな民意は大きな民意となることを信じていきたいと思います。
投稿: warakujapan | 2013年2月28日 (木) 17時44分
ささきさん
何も驚きません。二ヶ月前からずーっと同じこと大声で叫んでるんですから。安倍晋三は、長い時間かけてアメリカによって準備された三個目の原子爆弾です。相当手の込んだ工作が行われてきた。この政権は皆で力を合わせてどんなことがあっても潰すしかありません。
三橋も水島も、奴らのグルでしょう。しょうこりもなく、理屈をつけて、安倍への支持を訴え続けると思いますよ。参院選勝利が彼らの野望ですから。
じゃぽねーずさん
ご配慮ありがとうございます。まだまだ目が覚めない人たちがたくさんいます。
周りを揺り起こしていきましょう。
安倍糞売国政権をどんなことがあっても打倒しましょう。
投稿: WJF | 2013年2月28日 (木) 16時28分
akari さんのコメントをみて、自分が書き込んだのかと思ってしまうほどでした。そうでないことを確かめる為(゚ー゚)、私も初のコメントします。
数ヶ月間だけですが、あれだけ自民を応援し、安倍晋三に保守の望みを託していた自分が、手のひらを返すことに自分でついていけず戸惑っています。他人も扇動してしまいました。でも、直感は正直なのです。とてもブルーな気分ですが、できることをやります。
このブログを、50位以内に押し上げたいのですが、ランキングのバナーを各記事ごとにも貼りつけてあると、すこしは違うと思うのですが。あと、ランキングの一覧に、更新があったブログにはUPマークがつくのですが、このブログはそのマークがつかないんです。pingが飛んでないのではないでしょうか。(あえてつかないようにしている人もいるかもしれません)
訪問者のみなさんには、ぜひバナーをクリックしていただきたいです。
投稿: じゃぽねーず | 2013年2月28日 (木) 16時19分
こんにちは。昨日コメントさせていただいた<ささき>です。
WJFさん、本日の安倍首相の施政方針演説、お聞きになりましたか?
私は、首相官邸HPで全文を読みましたが、驚きました。
これは、<裸の王様>が、堂々と、国会の中で、<私は、裸だ!>
と宣言したものです。
もはや、一点の疑いなく、誰がどう読んでも、新自由主義強力推進政権であることが明白です。
WJFさん、TPPどころの話ではないのです。
安倍政権みずから、内側から、日本を壊そうとしています。
<新しい日本>の中で述べたことと、比較してみると、安倍氏が、どのように保守派をだましたか明白です。
<瑞穂の国の資本主義>は、強欲資本主義とは違うといっておきながら、日本を完全に強欲資本主義に開こうとしています。
リフレ派の政策と藤井聡氏の国土強靭化計画を丸呑みしたため、目をくらまされた保守派が多かったと思いますが、これで三橋氏も目が覚めるのではないでしょうか?藤井氏は、危険人物として口封じのために取り込んだものと思われます。
チャンネル桜の水島氏の今後の言動に興味津々です。かれの主張は、今日で、完全に破たんしたと思います。
投稿: ささき | 2013年2月28日 (木) 16時16分
akari
>それらの新自由主義の考えを安倍政権が追い払う事ができるのか
周りの閣僚を新自由主義者で固めていることからわかるように安倍晋三自身が新自由主義者です。道州制を公約に掲げていることから明々白々なように、安倍晋三が新自由主義者なのです。しかし、この事実を隠蔽するような情報工作が長期的にしかけられています。
中野剛志氏は、この矛盾に対する問いかけを「東田剛」のペンネームで以前次のようにされていました。
「しかし、『瑞穂の国の資本主義』を実現し、日本を取り戻そうと本気で決意した政治家が、社内では英語、公の場ではルー語をしゃべる社長や、トリクル・ダウンを主張するグローバル企業経営者、新自由主義の経済学者、外資系コンサルタント企業社長、ましてや、外資系金融機関のアメリカ人アナリストなんかの意見を聞くものなのでしょうか?
そして、TPPに参加しようと思うものなのでしょうか?
安倍政権になって、株価も内閣支持率も上がっています。しかし、この政権には、私たち日本人にとって、何か一番大事なものが欠けているように思えてなりません。」
(http://www.mitsuhashitakaaki.net/2013/02/06/korekiyo-29/)
akariさんの直感は100%正しいものです。どうか安倍政権に期待するのではなく、彼らの洗脳から目覚め、この政権の危険な本質に気づき、彼らの野望を阻止する私たちの戦列に加わっていただきたいと思います。
投稿: WJF | 2013年2月28日 (木) 10時31分
初めてコメントします。
私は総裁選の頃から安倍首相を応援してきました。
もちろん総選挙の時も自民党を支持しました。
でも安倍首相が訪米される頃あたりからなんだかものすごく不安を感じるようになりました。
私は勘が鋭い方なのですが、この不安を他の人に話しても理解はしてもらえません。
勘が鋭いという事は他の人たちと違うものまで感じ取ってしまいます。
TPPに参加しょうがしまいが国内でも新自由主義の考えが炸裂中であり、日本解体の方向に向けて進んでいます。
新しい政権になり利権を求めハゲタカ、ハイエナが群がっています。
それらの新自由主義の考えを安倍政権が追い払う事ができるのか。
何か策があるのなら良いのですが。
私も一番中野氏の考えが参考になると思っています。
こちらのサイトで今までの中野氏の記事を見ることができます。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/
投稿: akari | 2013年2月28日 (木) 10時24分