戦後史の一つの事実
戦後、冷戦の開始、特に中国の共産化により、日本を共産主義の防波堤として位置づけるようアジア戦略の見直しを迫られたアメリカは、日本の占領統治の方針を「改革」から「復興」へと大きく転換させました。このアメリカによる対日政策転換を「逆コース」と呼びます。その際、アメリカが目をつけたのが、東京裁判でA級戦犯として起訴されていた有力者たちであり、彼らの多くは免罪と釈放と引き換えに、CIAのスパイとしてアメリカに雇われ、日本の赤化の防止と「親米保守」勢力の拡大のために働くようになりました。
この当たりの経緯は、戦後、中国の撫順戦犯管理所に収容されて洗脳され、釈放後、中国のための反日プロパガンダ分子として働くようになった中国帰還者連絡会の人たちと似ています。
2007年に機密解除されたCIAの資料には、次の28名の日本人名を見つけることができます。
秋山浩、有末精三、麻生達男、福見秀雄、五島慶太、服部卓四郎,東久邇稔彦、今村均、石井四郎、賀屋興宣、岸信介、児玉誉士夫,小宮義孝、久原房之助、前田稔、野村吉三郎、緒方竹虎,大川周明、小野寺信,笹川良一、重光葵、下村定、正力松太郎,Shima Horia ,辰巳栄一、辻政信,和知鷹二、和智恒蔵
この中に、安倍晋三氏の祖父であり、日米安保の改定を強行した岸信介の名前もあります。
1988年にピューリッツァー賞を受賞したニューヨークタイムズの記者ティム・ワイナーの著書に、"Legacy of Ashes: The History of the CIA" (灰の遺産: CIAの歴史)という書物があります。この本は『CIA秘録―その誕生から今日まで―』というタイトルで日本語に翻訳されています。
この書物はCIAと岸信介や自民党の関係についても詳細に記していますが、政治評論家の森田実氏は、この本を引用しながら岸信介について次のように記しています。
2008年11月15日に刊行されたティム・ワイナー著『CIA秘録(上)』(文藝春秋社刊)が多くの人々に読まれている。数名の友人から「『CIA秘録』読みましたか? 面白い本です。とくに岸信介とCIAの関係のところを読んでみてください」と言われた。ティム・ワイナーの記述は検証してみなければならないが、ここまではっきり書かれた以上、岸信介について再調査する必要があると感じた。
ティム・ワイナーは次のように記している。4カ所引用する。
《岸信介は、児玉と同様にA級戦犯容疑者として巣鴨拘置所に三年の間収監されていた。
東条英機ら死刑判決を受けた7名のA級戦犯の刑が執行されたその翌日、岸は児玉らとともに釈放される。 釈放後岸は、CIAの援助とともに、支配政党のトップに座り、日本の首相の座までのぼりつめるのである。》(p.178)
《岸信介は日本に台頭する保守派の指導者になった。国会議員に選出されて四年も経たないうちに、国会内での最大勢力を支配するようになる。そしていったん権力を握ると、半世紀近く続く政権党を築いていった。》(p.178)
《他にも岸と同じ道をたどったものがいた。戦時内閣の大蔵大臣を務めていた賀屋興宣である。戦犯として有罪となり、終身刑の判決を受けていた。一九五五年に保釈され、五八年に赦免された。その後、岸に最も近い顧問となり、自民党外交調査会の主要メンバーになった。
賀屋は、一九五八年に国会議員に選出された直前もしくは直後からCIAの協力者になった。》(p.183)
《賀屋とCIAの断続的な関係は、賀屋が佐藤栄作首相の主要な政治的助言者だった一九六八年に頂点に達した。その年、日本国内での最大の政治問題は、米軍がベトナム爆撃の重要な後方基地として利用し、核兵器の貯蔵場所ともなっていた、沖縄の巨大な米軍基地の問題だった。〈中略〉CIAは選挙を自民党側に有利に動かそうと秘密工作を展開し、賀屋はその活動で重要な役割を果たしたが、その試みはわずかの差で失敗した。沖縄自体は一九七二年に日本の統治に返還されたが、沖縄のアメリカ軍基地は今日まで残っている。〈中略〉 「われわれは占領中の日本を動かした。そして占領後も長く別のやり方で動かしてきた」。CIAの東京支局長を務めたホーレス・フェルドマンはそう述懐した。「マッカーサー元帥は元帥なりのやり方でやった。われわれはわれわれなりの別のやり方でやった」。》(p.184)
最近、政界だけでなく政治ジャーナリズムの主流である大新聞の政治記者までが、岸信介を戦後日本最大の政治的英雄であるかのように讃美する傾向が強い。私は、岸信介こそ戦後日本が自立・独立国家として生きる道をつぶし、従米国家にした最悪の政治家だとの見方を述べてきたが、マスコミ界にはほとんど同調者はいなかった。
岸信介は日本を米国に売り渡した政治家である。岸信介が強行した日米安保条約改定によって、日本は米国の永遠の従属国にされたのだ。もしもティム・ワイナーが述べているとおり、岸信介がCIAの協力者だったとしたら容易ならざることである。われわれは真実を明らかにするため、戦後史を見直す必要がある。
ワイナーのこの本によれば、現在公開されている資料に基づけば、すくなくとも1970年代初頭までは、自民党がCIAから資金援助を受けていたそうですが、自民党とCIAの関係は今でも続いていると考えるべきでしょう。特に清和政策研究会と呼ばれる自民党の派閥はCIAとの密接な関係があると言われています。小泉氏も安倍氏も清和会に属しており、小泉純一郎による売国はCIAの指示の元に行われたものでしょう。
陰謀論めいた話ですが、自民党とCIAの密接な関係は、アメリカの公文書によって証明されている客観的な歴史的事実です。私たちが生きてきた「戦後」という時代は、常にアメリカによる工作と日本の政治家による売国の上に築かれた時代でした。
もちろん、アメリカのみならず、ソ連や、中国、韓国、北朝鮮のスパイも、政界の中には多く入り込んできたことでしょう。
工作があろうと、売国があろうと、それが日本にとって国益となっていればよいのですが、実際には、日本の国益は、日本に工作をしかけた外国勢力によりむしり取られてきました。特に冷戦集結後のアメリカの日本に対する締め付けはひどかった。この20年間の日本経済の停滞は、アメリカの工作と圧力抜きに語ることはできません。そのアメリカの圧力が、今やTPP参加や道州制導入というレベルにまで至り、ついに日本は国家解体と亡国の局面を迎えているわけです。
自民党を盲目的に支持している人たちは、自分たちが外国の工作に踊らされていることに気づいているでしょうか。自分たちの行為が、日本を救うどころか、日本を完全に併呑したい国の策謀を助け、亡国に導いていることに気づいているでしょうか。
それにしても、CIAの傀儡たる自民党政権が語る「戦後レジームからの脱却」とは一体何を意味するのか、私にはさっぱりイメージがわきません。「これからは売国はやめます」「CIAとは関係を断ちます」と宣言しているのか。それにしては、アメリカの意向に従う姿勢ばかりが伝わってきます。
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