鳩山由紀夫の偉大な功績
最初に、私は民主党支持者ではないことを、明言させていただきます。
政権交代がおきた2009年夏の衆議院選挙では、他の保守の皆さんと協力して「日本を愛する日本国民の会」というグループをYouTube上に立ち上げ、民主党に投票しないように強く呼びかけた一人でもあります。
あのとき私たち保守の仲間が予測し警告したとおり、民主党政権は問題だらけの政権となりましたが、今から振り返るならば、決してその全てが問題だったわけではありません。その中には讃えられるべき大きな功績もありました。
民主党政権が終わった今、良かったことは良かったときちんと評価する客観的な視野を失わずにいたいと思い、今日は、敢えて、保守の人たちに忌み嫌われている鳩山由紀夫氏の大きな功績について記しておきたいと思います。
鳩山政権の最も大きな功績は、「年次改革要望書」を廃止したことです。
年次改革要望書とは、wikipediaの説明によると次のようなものです。
由来をたどれば、1993年(平成5年)7月の宮澤喜一首相とビル・クリントン米大統領との会談で決まったものとされている。『拒否できない日本』によれば、最初の要望書は1994年(平成6年)であった。(中略)
米国側からの要望が施策として実現した例としては、建築基準法の改正や法科大学院の設置の実現、著作権保護期間の延長やその強化、裁判員制度をはじめとする司法制度改革、独占禁止法の強化と運用の厳密化、労働者派遣法改正(労働者派遣事業の規制緩和)、郵政民営化といったものが挙げられる。米国政府からの要望で実現していない項目としては、再販制度・特殊指定の廃止・ホワイトカラーエグゼンプションが挙げられるが、年次要望改革書では引き続き取り上げられている。一方、日本側からアメリカ側への要望の一切が実現されていない。
アメリカは、この年次改革要望書を通して、90年代以降、日本政府にさまざまな規制緩和や法改正を要求し、アメリカの国益にかなうように日本の国内制度を改変させていきました。年次改革要望書に書かれたアメリカの要求通り、歴代の自民党政権が受け入れてきた法改正を年代順に並べると次のようになります。
1998年(平成10年) 大規模小売店舗法が廃止される。大規模小売店舗立地法が成立する(平成12年(2000年)施行)。建築基準法が改正される。
1999年(平成11年) 労働者派遣法が改正される。人材派遣が自由化される。
2002年(平成14年) 健康保険において本人3割負担を導入する。
2003年(平成15年) 郵政事業庁が廃止される。日本郵政公社が成立する。
2004年(平成16年) 法科大学院の設置と司法試験制度が変更される。労働者派遣法が改正(製造業への派遣を解禁)される。
2005年(平成17年) 日本道路公団が解散する。分割民営化がされる。新会社法が成立する。
2007年(平成19年) 新会社法の中の三角合併制度が施行される。
持株会社の解禁は、買収合戦を過熱化させ、経済のグローバル化を押し進めました。大規模小売店舗法の廃止は、弱い小売業の人たちの生活を苦しめました。人材派遣の自由化は、不安定な派遣労働で働く人々の数を増やすことになりました。唐突に導入された裁判員制度により国民はアメリカ式の陪審員制度にかり出されるようになりました。小泉政権が行った郵政民営化も年次改革要望書を通してアメリカが日本政府に要求していたことでした。第一次安倍政権が導入を進めていたホワイトカラーエグゼンプションも、年次改革要望書でアメリカが要求していたことでした。
ほとんどは、国民には何の利益もないどころか、その生活を苦しめ、アメリカを利するだけのこれらの制度改革を、自民党政権は、90年代以降、年次改革要望書を通してアメリカに要求されるまま、唯々諾々と行ってきました。
問題は、年次改革要望書の存在や、上に挙げた法改正が年次改革要望書に記されたアメリカの要望に従って行われたという事実は、マスコミによって一切報道されず、私たち国民には知らされていなかったという事実です。
90年代以降毎年続いてきた、実質上はアメリカによる内政干渉の手段であった年次改革要望書の交換を廃止したのが、鳩山政権でした。彼は、アメリカの政府高官から「ルーピー」と呼ばれ、多くの日本人もこの言葉を使って、鳩山由紀夫氏をバカにしました。彼は、「日本は日本人だけのものではない」などと述べたり、宇宙人と呼ばれても仕方のない言動も確かにありましたが、自民党政権が決してなし得なかった年次改革要望書の廃止を実現し、アメリカによる内政干渉を退け、日本の国益を守ろうしたという点は、日本の保守として客観的に評価すべきではないかと思います。
鳩山氏は、「日米同盟」を破壊した政治家として国民から強い非難を浴びたわけですが、「日米同盟」が、国民の生活や日本の国柄を破壊するような内政干渉を含んでいたとしたら、やはり、それは一度は破壊されるべきものではなかったかと思います。
新しい安倍政権が、回復し、再構築し、強化しようとしている「日米同盟」がどのような質のものになるのか。年次改革要望書を復活し、国民の生活を顧みずにアメリカによる要求を一方的に受け入れるだけの従来型の自民党政治を再開させることになるのか。それとも、悪しき自民党政治の伝統を捨て、アメリカの内政干渉をきっぱりと退けながら、日本の国益にかなう対等な関係を築くことができるのか。しっかりと見守っていきたいと思います。
民主党政権の功績としては、野田政権が領土問題で示した毅然たる姿勢も評価しておきたいと思います。自民党政権が領土問題を何十年もうやむやにして、棚上げにし放置していたのと対照的に、尖閣諸島を国有化し、竹島問題の国際司法裁判所への単独提訴を実現の直前まで押し進めたことは野田元首相の大きな功績だと思います。彼が国連で行った演説も大変立派であり、日本人として誇らしく感じました。
民主党政権は確かに問題だらけの政権でしたが、その行ったことの全てが「悪」だったわけではありません。同時に、自民党が行おうとしていることの全てが必ずしも「善」ではないことを忘れずにいたいと思います。民主党は確かに売国政党であったかもしれませんが、民主党政権時代あれほど問題になった人権擁護法案は、そもそも2002年に小泉政権が最初に提出したことをどれだけの人が知っているでしょうか。外国人参政権は、安倍首相が参院選後も連立を解く意図はないと明言している公明党が、いまだに掲げている公約でもあります。自民党も公明党も、5年以内の道州制の導入を公約として掲げています。自民党以外の政党の売国のみをあげつらい、自民党の長き売国の履歴と性向に目をつぶるのは、欺瞞でありまた危険なことではないかと思います。
このような単純な善悪二元論に陥ることのないように気をつけたいものです。
(年次改革要望書については、「国民が知らない反日の実態」の次のページも参考になさってください。年次改革要望書の正体)
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