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2013年1月12日 (土)

南と北のはざまで

社会が一つのことを信じ、一つの方向に向かっているときにこそ、それを疑い意義を申し立てる人々の存在は、社会全体としては有益なものだと思います。生物界において形質の多様性が一つの種の存続の可能性を広げるように、意見の多様性は、特に危機の時代においては、社会が存続する可能性を増大化させてくれます。

ロケットスタートした安倍政権、さまざまな成果を着実に挙げており、頼もしい限りです。しかし為政者は、しばしば十の良法の中に、一つの悪法を忍ばせるものですから、今後とも注意深い政権の監視を怠ってはならないと思います。今回も安倍政権について、あえて懐疑的な視点から、意見を述べてみたいと思います。

かねがね、私たち日本国民が、何か共通の、そして究極の課題を抱えているとしたら、それは次の一点ではないかと思っています。

日本が日本として立ち続けること。そして、日本を未来の世代に着実に手渡していくこと。

一言で言えば「日本を守る」ということになると思いますが、この究極の課題を実現するために、具体的に何を選択し、何を実行していくかが、日々問われていると思います。

どの政党に政権をゆだねるのか、誰を首相に据えるのか、どの国と同盟を結ぶのかといった問題は、それ自体に目的や意義があるわけではなく、あくまで、「日本を守る」というこの究極の課題を実現していくための手段として斟酌され、注意深く選択されていかなければなりません。

さて、安倍政権は「日本を守る」という私たちの究極の課題を、どのような手段と選択を通じて実現しようとしているでしょうか。

「韓国と価値観共通」 首相、額賀特使あす派遣

産経新聞 1月3日(木)7時55分配信  安倍晋三首相は4日、日韓議員連盟幹事長で自民党の額賀福志郎元財務相を特使として韓国に派遣する。額賀氏は朴槿恵(パク・クネ)次期大統領と面会し、首相の親書を手渡す予定。首相は今回の特使派遣で、竹島問題などで冷え込んだ日韓関係の改善へのきっかけとしたい考えだ。

 額賀氏は金星煥(キム・ソンファン)外交通商相とも会談する。自民党の河村建夫元官房長官と逢沢一郎元国対委員長が同行する。

 首相は1日、額賀氏を都内の私邸に呼び、「韓国は民主主義や市場主義など価値観を共通する隣国だ。日韓両国とも新しい政権がスタートすることになるので、良い船出にしたい」との考えを韓国側に伝えるよう指示した。

 首相は先月19日の朴氏の大統領当選を受け、額賀氏の韓国派遣を決めた。額賀氏は同21日に訪韓する予定だったが、朴氏の日程が合わず延期していた。

竹島領有権、当面提訴せず…日韓関係改善を優先

日本政府は、島根県・竹島の領有権問題をめぐる国際司法裁判所(ICJ)への単独提訴を当面、行わない方針を固めた。

安倍首相は、韓国の朴槿恵次期大統領との間で日韓関係の改善を目指しており、韓国の反発が予想される単独提訴は得策でないと判断した。

政府は、2012年8月10日の李明博大統領による竹島上陸を受け、対抗措置の一環として、日韓両国によるICJへの共同付託を提案したが、韓国が拒否したため、単独提訴を目指して準備を進めてきた。

安倍政権としては、ICJでの決着が望ましいとの立場は変えないものの、単独提訴は先送りし、韓国の対応を見極める方針だ。

安倍首相は、民主主義や市場経済など価値観を共有する韓国との関係を重視している。2月25日に予定されている大統領就任式に合わせて訪韓し、日韓首脳会談を行い、関係改善を進めたい考えだ。関係を改善することで、沖縄県の尖閣諸島をめぐり圧力を強める中国をけん制する狙いもある。

安倍政権は、「日本と韓国が価値観を共有している」という言葉をこれまでも再三繰り返し、この認識に基づいて、竹島問題の国際司法裁判所への単独提訴を取りやめたわけですが、「日本と韓国が価値観を共有している」という安倍氏の認識とその背後にある問題について、ここで改めて問い直してみたいと思います。

まず、日本と韓国が価値観を共有しているかという問題ですが、両国が価値観など共有しているわけがないことは、どなたもすでに御存知のことと思います。価値観を共有していないからこそ、さまざまな問題で日本人と韓国人は争ってきました。価値観を共有していないからこそ、韓国人たちは、執拗に日本を貶めるようなプロパガンダを世界中で展開してきました。価値観を共有していないからこそ、私たちが唖然とするような方法で、彼らは日本から何かを奪ったり、日本を利用しようとしてきました。日韓の間にあるのは、価値観の共有どころか、歴史的に根深い、二つの全く異なった価値観の衝突です。

安倍氏も、日韓が歴史的・文化的な価値観を共有していると述べているわけではなく、あくまで「民主主義や市場経済など」の価値観を共有していると述べているにすぎません。しかし、世界中のほとんど全ての国が民主化し市場経済を受け入れている現在、「民主主義や市場経済など」の価値観を共有していない国を見つけることの方が難しいでしょう。それにもかかわらず、民主主義や市場経済などという当たり前の価値をことさら引き合いに出して、さらには、日本が60年以上も不法占拠されている島の領土問題をうやむやにしてまで、韓国と強い同盟関係を結ぼうとする必然性はどこにあるのでしょうか。

それはおそらく、民主主義と市場経済といった価値を受け入れていない中国や北朝鮮といった例外的な国国々の存在を意識し、これらの国々を囲い込むことが目的なのでしょう。(中国に関しては市場経済は受け入れています)。

しかし、ここにも、矛盾があります。

韓国の、朴槿恵新政権に対して、「大統領職業務引き継ぎ委員会」に関係する専門家らが、最近、次のような外交方針を提言しました。

韓米同盟と韓中関係については▽韓半島危機が米中葛藤につながらないよう予防外交を推進する▽韓米同盟が中国向けでないことを再確認する▽韓日米軍事同盟を強化する米国のミサイル防衛(MD)体制に加入しないと明言するか、加入をできるだけ遅らせる 中央日報2013年1月9日

つまり、米韓の軍事同盟は、中国に向けられたものではないとする、中国に配慮し傾斜する外交方針を韓国政府自身が明確にしつつあるわけです。とすると日本が仮に韓国と軍事同盟を強化しても、対中国の安全保障上、大きな意義をもたないことは明白です。すると、安倍政権がわざわざ韓国と強い同盟関係を取り結ぼうとすることの目的は、北朝鮮一国を封じ込めるという目的しかないことになります。

しかし、ここでも理解に苦しむのは、一体、日本は、自分たちの奪われた島の問題を脇に置いてまで、なぜ南北朝鮮の争いに加わらなければならないのかということです。南北の争いに日本が加わることで、日本は、どんな国益が得られるというのでしょうか。韓国と北朝鮮の紛争は、日本にとって対岸の火事であり、あくまで韓国と北朝鮮の人々が解決すべき問題であり、日本がこれに関与することによって得られるものがあるとは思えません。どちらにも荷担したくないというのが私たちの素直な心情ではないでしょうか。あの親日派韓国人のシンシアリーさんでさえ、日韓は距離を置いた方がいいと普段からおっしゃっています。

このように韓半島の南北の対立や、日本に敵対する勢力も一枚岩ではないという事実を考慮にいれると、安倍政権に対するマスコミや韓国メディアの批判の大きさは、決して安倍政権の保守政権としての真正性の根拠にはならないことが理解できると思います。結局は、安倍政権が具体的に何を実行し、あるいは実行しないかを通して、政権をジャッジする以外にはないのではないでしょうか。

私は、「日本を守る」という観点から、政策の善し悪しをはかる物差しは、次のように考えることだと思います。

この政策は10年後、100年後、1000年後の日本人にとってよいものか。

為政者が、「日本を守る」こと、そのことだけを純粋に目指して邁進しているか。それとも、それと同時に、あるいは、それとは別に、他の目的を隠し持ったりはしていないか。どんな政治家に対しても、盲信することなく、さりとて全否定することもなく、是は是、非は非としながら、国民として、厳しく注意深いまなざしを向け続けることは、正しい政治が行われる上で必ず必要なことだと思います。

(2013年12月10日、一部修正しました)


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安倍晋三」カテゴリの記事

コメント

ednakano様
恐縮ながら、仰られていることが良く分かりません。

>安全保障は、アメリカを前提にしつつ、自立の方向へシフトしないといずれ見捨てられるでしょうから、中国周辺国との関係(特にロシア)を大事にすべきです。

まず、安全保障はアメリカを前提とのことですが、これは日米同盟を前提とするとの解釈で宜しいでしょうか。その前提立った場合、米国は日本の自主防衛を良しとしないことから、「見捨てられる」の主語がわかりません。

また、ロシアとの関係を大事にすべきとのことですが、日ソ不可侵条約を一方的に破棄し、終戦後北方への侵略を行ったロシア(旧ソ連)との関係をを大事にすべきと主張される根拠が分かりません。

当方、北方4島以前に、千島列島・樺太の帰属も我が国にあると考える立場ですので、貴方の主張が奇異に見えてなりません。

投稿: PAG | 2013年1月13日 (日) 17時27分

当面韓国とかかわることはいい方向にならないと思います。
大事なことだけははっきり発言し、経済は、消極的な連携、国交は停滞させるのが一番です。
韓国に譲歩を期待しても、加熱した民意が許すはずがない。実際韓国は中国との経済連携を重視していますから、日本は台湾とASEANとの関係強化が必要です。
安全保障は、アメリカを前提にしつつ、自立の方向へシフトしないといずれ見捨てられるでしょうから、中国周辺国との関係(特にロシア)を大事にすべきです。

投稿: ednakano | 2013年1月13日 (日) 08時50分

戦後教育と長かった冷戦体制によって、アメリカに依存しようとする属国根性が、日本人の心の深層にまで植え付けられているように思います。ある人々にとっては、「保守」とは、日米同盟という名の対米従属の関係を「保守」することに他なりません。だからこの関係を維持してくれる自民党の欠点や売国行為など不都合な情報には目を塞いで、自民党を保守政党だと盲信しようとします。自民党や安倍政権を全否定する必要はありませんが、自民党が伝統的に抱えてきた問題点や傾向に目を塞ぎ、盲目的に全肯定してしまう人が増えてしまうと、取り返しのつかない間違いを犯すことになると思います。

ホワイトハウスへの署名運動に関しては、最近韓国人が、韓国の大統領選の集計のやり直しを求める請願を行いましたが、そのような請願を外国政府に出すという行為自体が、彼らの千年の属国根性丸出しの行為であり、独立国の国民として本当に恥ずかしい行為だと思いますが、この点で日本人も韓国人のことを笑うことはできません。

福沢諭吉は、「一身独立して一国独立す」と書きましたが、国民が独立した精神や誇りを持たないと、日本が再び独立を取り戻すということもあり得ません。現在のまま、国民のほとんどが独立心を欠いた状態で、中国がアメリカの力を凌ぎ、そしてアメリカがアジアから撤退したときに、一体、日本はどうなるのでしょうか。

TPPにせよ、中国にせよ、日本の「亡国」という問題が、日に日に現実化しています。これを防ぐことができるのは、国民の独立と反骨の気概であり、特定の人物や政党や国家を盲信する精神ではありません。

投稿: WJF | 2013年1月13日 (日) 00時06分

朝鮮や中国を警戒する方が増えたことは結構なことですが、それに対抗する為アメリカの力を期待する人々が多いことが残念でなりません。ネット上でも中国の尖閣侵略に対して「アメリカがだまってないぞ」とコメントする人間の多さに辟易しますし、先日のホワイトハウスへの請願運動が盛り上がったことにもあきれるばかりです。
自分の国は自分で守り、諸外国との問題は自力で解決する。こういった当たり前の意識が復活しない限り、例え嫌韓の人々が増えたとしても自民党は支持され続けるでしょう。

投稿: PAG | 2013年1月12日 (土) 23時50分

日本人はすぐに騙される。そしてすぐに利用される。こんなにお人好しの国民はないと思います。もっともっと疑い深くならないといけないと思います。安倍さんも極めつけの親韓ですが、自民党自体が伝統的に親韓ですよね。どうしてこの親韓政党が、嫌韓的傾向の強い保守の人たちから熱烈に支持されているのか、きわめて不思議な現象だと思います。

投稿: WJF | 2013年1月12日 (土) 22時34分

当方にとっては、民主党も自民党も同種の歴史観を有する独立否定(売国)勢力であり、例え安倍氏が朝鮮半島の利益の為に働いたとしても不思議ではないと思っております。
保守の皮を被っている為、自民党による危険な立法・政策実行は見逃される可能性があり(国籍法改正が良い例)、批判的な評価を行うことは極めて重要であると思います。
特使派遣の意図は想像するしかありませんが、WJF様が想像されるような動機ではないことを願うばかりです。

投稿: PAG | 2013年1月12日 (土) 22時29分

現在、安倍政権が実現を目指している集団的自衛権の行使も、日本のためというよりは、結局は、半島情勢に日本を巻き込んだり、日本を利用しようとする目的があるのではないかと疑心暗鬼になっています。アメリカは半島から手を引きたがっていますから、嫌な役割を日本に押し付けたいのではないでしょうか。安倍氏や自民党の従来の姿勢から判断するならば、特使派遣は単純に親韓的姿勢から発露したものだと考えるのが自然な解釈だと思います。

投稿: WJF | 2013年1月12日 (土) 22時05分

WJF様
仰る通りです。例の法則ではありませんが、かの地に係って日本にとって良い結果が得られたことは殆どないのではないかと思います。
問題は、元寇にしろ日韓併合にしろ、朝鮮半島の背後に覇権主義国が存在し、そして朝鮮人がそれらの国に事大するということです。
これまでの朝鮮人の我が国に対する所業を思うと、明確に敵となってくれた方がすっきりします。その状況を許容する為には、現行憲法を無効とし、核武装による我が国独力での自国防衛を実現すべきです。
それが出来ない(したくない)故の、安倍総理の特使派遣なのでしょう。憲法改正を党是とする自民党には、このような対処療法的な戦略しか描けません。

投稿: PAG | 2013年1月12日 (土) 22時00分

あの時、日本は、半島に関わったがために、日清、日露という二つの戦争を戦わざるを得なかった。その結果転がってきた満州利権が、やがて中国やアメリカと戦う遠因にもなってしまった。大正から昭和にかけて軍部が発言力を増していったのも、半島や大陸に進出して軍を増強させる必要が生じたからです。国中焼け野原となり、原爆を落とされ、国家の主権を実質的に失うことになった。さらには現在も私たちを悩ませる在日というやっかいな問題を内部に抱えることになり、未だに日本の内部破壊が進行している。また末代までにいたる逆恨みを彼らの中に植え付けることになり、国際的には執拗な反日プロパガンダにより国家の名誉が貶められてる・・・・・・本当にあのとき、半島に関わらずにいたら、100年後の私たちは全く違う日本を生きていたかもしれません。精神においても、外観においても、日本らしさを、今よりはるかに留めていたであろう日本です。

終戦までのこの失敗から学ぶことなく、日韓基本条約以降も、今度は北朝鮮を封じるという同じ目的で、韓国を経済的、技術的に支援してきた。その支援なくして今の韓国はありません。しかし、それが現在、多くの日本企業の首を絞める結果になっています。彼らは日本に感謝するどころか、手に入れた力を、日本を貶めたり、日本を打ちのめすために使っています。

この二回の失敗から、半島に関わるとろくなことにならないということを私たちはそろそろ学習すべきだと思います。日本が半島に関わっても、ひたすら奪われるだけ、損なわれるだけであり、得られるものは何一つありません。

投稿: WJF | 2013年1月12日 (土) 21時27分

安倍総理のセキュリティダイヤモンド構想
http://kennkenngakugaku.blogspot.jp/2013/01/blog-post_10.html?spref=tw&m=1
何故安倍総理が韓国と価値観を共有していると表明し、その前提で韓国と対話しようとしているか、ヒントがあると思います。
韓国内には相当の北朝鮮シンパがおり、北朝鮮主導の南北統一に向け工作を行っているようです。
最悪のシナリオとして、韓国が赤化した場合、日本の目と鼻の先に中国の橋頭保が築かれることとなります。朝鮮人の事大根性から決してあり得ないシナリオではないと思います。
ロシアの南下を懸念し韓国を併合した1900年前後と同様の問題が生じ始めているのかもしれません。

投稿: PAG | 2013年1月12日 (土) 21時05分

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