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2013年1月の33件の記事

2013年1月31日 (木)

「愛国者」の二つの意味

「愛国者」という言葉には二つの意味があると思います。
私たちは、次の二つの意味において「愛国者」でなくてはならないと思います。

一つは、「中華」の国々から向けられる「日本が嫌い」という反日的な憎悪やプロパガンダに対して、「日本が好き」という意味での「愛国」で対峙しなくてはなりません。

もう一つは、アメリカや、大企業や、国際金融資本から向けられる「『国家』という枠組みが邪魔」と考える勢力の策謀に対して、「『国家』という枠組みは大切だ」という意味での「愛国」で対峙していく必要があります。

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安倍晋三氏や桜井よしこ氏や自民党の主流に見られる「親米保守」という立場の人々の弱点は、「中華」の脅威ばかり強調して、アメリカに迎合するあまり、「日本は好きだが、国家という枠組みはそれほど大切ではない」と(実質的には)考えてしまう点です。TPPに参加すべきだとか、道州制を導入すべきだという彼らの発言に、このことは、はっきりと現れています。

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私たちは彼らが「日本が好き」と発言をする片側の面だけを見て、「愛国者」と誤解しがちですが、「『国家』という枠組みを守っていく」という意味の「愛国心」が欠けているという、もう一つの面を見落としがちです。これでは片手落ちの「愛国心」です。

アメリカと「中華」は、対立するどころか、今後ますます融和を深めていきます。そして、「日本が嫌い」という勢力と、「『国家』という枠組みは邪魔」と考える勢力は、混然と一つになって日本を包囲していきます。「国家」という枠組みを解体させていこうとする圧力は、これまで以上に強く加わっていきます。

その圧力に抗して、日本を守っていくには、私たちは上の二つの意味で確固たる「愛国者」でなくてはなりません。

従って、「中国が脅威だから、日米同盟を深めよう」という考えでは、これからの日本を守り続けていくことはできません。

アメリカにも「中華」にも傾斜しない、第三の道を進もうとする政党や政治家が今後立ちあがらなくてはなりません。第三の道とは、日本人が自らのもっている高いポテンシャルと日本文明の独自性に気づき、自分たちの高いポテンシャルを十分に発揮して自力で国を守り、国家として自立していく道です。そのためには、もっともっと多くの国民がそういう認識に変わっていかなくてはならないと思います。

現在、TPPや道州制の推進を賛成している政党がほとんどであることを見ても、また、日本人の多くが戦後教育の中で洗脳されてしまっていることを見ても、日本の生き残りをかけた、この「第三の道」の開拓は、険しいいばらの道となることを私たちは覚悟しなくてはなりません。それでも日本が生き残るためには、ここにしか活路はありません。

日本にとって今後ますます大切になるのは、米中よりも、大東亜戦争の日本の戦いの結果、独立をもたらされた東南アジアやインドのような国々とのつながりだと思います。彼らは、自分たちの「国家」をもつことのありがたさをよく知っているからです。彼らは、第二次大戦後、命がけで戦い独立を勝ち取りました。再び、西洋人にやすやすと主権をゆずるような愚かなまねは決してしないはずです。戦後の日本人がすっかり失ってしまった、自らの手で「国家」を守り抜く気概と覚悟を、彼らは今もしっかりと保持しています。

下はASEANの旗です。日の丸が描かれています。

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この意味でも「自由と繁栄の弧」という構想はもっとも正しい、日本の進むべき道だと思います。

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Photo

この構想のすばらしいのは、アメリカや中国をぬきにした構想であるということです。日本が米中に挟まれながらも、米中いずれの陣営に属することなく、第三の極として独立して立つための構想であるということです。

これに対して、日本、アメリカ、オーストラリア、インドで中国を包囲するなどという、安倍氏の「セキュリティー・ダイアモンド構想」は、冷戦の二極構造の焼き直しであり、これからの時代には全く通用しない構想です。冷戦時に米ソが対立したように、今後米中が対立することはありえないからです。この二大国は今後ますます接近し、融和し、日本を包囲するようになります。従って、日本の活路は、第三の道を切り開くことにしかありません。安倍政権は、これからの日本を救うことは決してありません。むしろ間違った方向に私たちを誘導していくでしょう。最悪の場合、日本が消滅します。私たちは、日本の奪還に向けた戦いの準備を始めなくてはなりません。

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シンガポール政府、慰安婦像の建立を拒否

シンガポール政府が、韓国挺身隊問題対策協議会が計画していた慰安婦像の建立を拒否したと報じられています。

Singapore rejects 'comfort women' statue

シンガポールは、水曜日、第二次大戦中日本によって強制的に性奴隷とされた女性たちを記念する像を建立する韓国の活動家らの計画を拒絶したと報じた。

文化大臣は、像の建立の計画に関する話し合いがもたれたという韓国挺身隊問題対策協議会の主張を否定した。

「これは正確ではない」と大臣はAFPに声明の中で述べた。

「シンガポール政府と、韓国挺身隊問題対策協議会の間には、目下、この問題に関するいかなる会議も話し合いももたれてはいないし、我々はそのような像がシンガポールに建てられることを許可しないだろう。」

ソウルでは、先週の水曜日、活動家たちが、戦時中日本軍の軍売春施設へと強制された「慰安婦」を表現した像を、シンガポールを手始めとする、多数のアジアの国々に建立する計画を公表していた。

彼らは、シンガポール当局と話し合いをもったと述べ、計画を完遂するため代表者が派遣されるだろうと付け加えた。

この韓国の団体は、ソウルの日本大使館の真向かいに2011年に建てられた肩に蝶がとまった少女の銅像の前で語った。

他の像は、中国、マレーシア、インドネシアでも計画されていると、この団体は述べた。

朝鮮、中国、フィリピンや他の国々出身の約20万人の女性が、アジアの日本軍の売春施設で働くように徴用されたと歴史家は述べている。

シンガポールは、イギリスの植民地であったが、戦時中、日本に占領されたいくつかのアジアの国々の一つである。

Singapore - Singapore said on Wednesday it has rejected plans by South Korean activists to put up a statue in the city-state commemorating women forced into sexual slavery by Japan during World War II.

The culture ministry denied claims by the Korean Council for the Women Drafted for Military Sexual Slavery that there had been talks about plans to put up such a statue.

"This is not accurate," the ministry told AFP in a statement.

"There are no ongoing meetings or discussions between the Singapore government and the Korean Council for the Women Drafted for Military Sexual Slavery on this issue. Nor will we allow such a statue to be erected in Singapore."

In Seoul last week the activists unveiled plans to put up the statues - representing "comfort women" forced into Japanese military brothels during the war - in a number of Asian countries starting with Singapore.

They said they had held talks with Singapore authorities and added that a delegation would be sent to the city-state to finalise the plans.

The South Korean group was behind the bronze statue of a young girl with a butterfly settled on her shoulder that was assembled in 2011 opposite the Japanese embassy in Seoul.

Other statues were also planned in China, Malaysia and Indonesia, the group had said.

Historians say about 200 000 women from Korea, China, the Philippines and other countries were drafted to work in Japanese army brothels in Asia.

Singapore, which was then a British colony, was among several Asian countries occupied by Japan during the war.

(AFP)

『慰安婦神話』第二部、日々向き合い、概要は仕上がっているものの、まだ満足いく形になりません。テーマ自体が暗いため、事実を提示するだけなく、見る人がもっと興味を引かれながら見れるものでなくてはならないと苦しんでいるところです。

第一部も若干修正をしています。

全篇を通じて、必ず磨き抜かれた決定的なもの、一年間勉強し、思索をめぐらせてきたWJFプロジェクトの2012年度の活動の総決算となるものに仕上げます。もうしばらく公開までお時間ください。

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2013年1月30日 (水)

NINJA指令015号: 【緊急警告】大きな怒りの声をあげてください【TPP】

NINJA指令015号:
【緊急警告】大きな怒りの声をあげてください【TPP】


安倍政権は、アメリカに、関税撤廃のいくつかの例外品目を認めさせる交渉を行い、妥協を引き出(すふりを)して、TPP参加を表明するだろう。それが既定のシナリオである。

年頭から、私は、ずっとそのように皆さんに警告してきました。

その通りになってきています。

TPP、例外品目確保に「一定の感触」…経産相

茂木経済産業相は29日の閣議後記者会見で、環太平洋経済連携協定(TPP)の参加問題を巡り、関税を維持する例外品目を確保できる可能性があるとの認識を示した。

茂木氏は26日、訪問先のスイスで米通商代表部(USTR)のカーク代表と会談した際、例外品目が認められるかどうかについて、「一定の感触」を得たという。両者の会談は30分程度行われ、TPPに対する考え方などについて意見交換した。

自民党はTPPについて、「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対」との公約を掲げて衆院選に臨んだ。コメなどの例外品目を確保できる見通しになれば、日本の早期交渉参加への道筋も見えてくることになる。

(2013年1月29日19時17分 読売新聞)


TPP、関税撤廃の例外要請 日米首脳会談へ調整

政府は29日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に関し、2月下旬の日米首脳会談に向けて米政府に関税撤廃の例外品目を認めるよう要請していく方針を固めた。オバマ米大統領が柔軟な姿勢を示せば、安倍晋三首相も交渉参加に踏み出しやすくなるとみている。

(日経新聞)

まもなく、アメリカは日本の要求に折れるふりをします。そうなれば、日本が参加を拒否する理由はなくなります。安倍政権も、日本の農業を守る努力をしたというアリバイを作って、堂々とTPPに参加できるわけです。

みなさん、どうか、今立ち上がってください。
怒りの声を張り上げてください。
目を覚ましてください。

だまされてはだめです。

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2013年1月29日 (火)

洗脳された世代

洗脳された人たちは、自分が洗脳されているとは気づかない。

こう書いている私自身が、何かの意図をもった人々がでっち上げたある物語によって洗脳されている可能性もあります。

どうして洗脳は怖いのか。それは、その物語をでっちあげた人々の利益のために、私たちの行動がコントロールされてしまうからです。

私たちは今、気づかない間に、洗脳されていないでしょうか。あらゆる種類の洗脳から「目覚め」、自由にものを考えているのでしょうか。

戦後の日本人は次のように教えられてきました。

「アメリカが軍国主義から日本を解放し、自由と民主主義を与えてくれた」
「戦後は、ソ連の核の脅威から日本を守り、経済を発展させ、豊かな生活と平和をもたらしてくれた」
「アメリカは同盟国だ。アメリカこそ真の友人だ」
「これからは、アメリカは、日本と手を組んで、中国という悪の国家を包囲し日本を守ってくれる」
「だから日米同盟を強化していこう」

いまでも多くの日本人はこのように考えています。
「保守」と呼ばれる立場の人たちもそうです。

しかし、上の物語は、はたして真実でしょうか。

私は、上の物語はでっち上げだと思います。真実はこうです。

「日本ははめられた」
「日露戦争では、米英は、日本に莫大な金を貸し付けて、自分たちの駒として日本を都合良く利用した挙げ句、日本が戦争に勝っても、日本には賠償金を一銭も受け取らせず、おまけに、日本が満州利権を手に入れたとたん、手のひらを返して日本を仮想敵国と見なし始めた。」
「日露戦争の勝利以降、日本の潜在的な国力は、アメリカに大きな脅威と感じられるようになった」
「日本を包囲し、日本が宣戦布告をしなければならないところまで日本を追い込んだ。」
「日本人の上に雨あられと爆弾を落とし、貴重な文化財をゴミのように焼き、原爆で何十万もの同胞を焼き殺した」
「戦争が終われば、自分たちが犯してきた悪行は棚に上げて、正義の解放者であるふりをし、自虐的な歴史観と『自由と民主主義と個人主義』という彼らの価値観を日本人に植え付け、日本人から自国を守る武器と誇りを奪い取った。」
「1948年以降、対日戦略が友好的なものに変化したのは、中国の共産化と共に、中国を友好国とすることができなくなった結果、日本を資本主義に成功した豊かな親米国家に育て上げて『共産主義の防波堤』として利用する必要が生じたからであり、決して反日的なアメリカの本質が変化したからではない。」
「冷戦終結と共に、『共産主義の防波堤』としての日本の戦略的価値が消滅すると、今度はアメリカを追い越さんばかりに成長した日本の経済力自体が、再びアメリカにとって脅威と感じられるようになった。」
「その結果、アメリカの友好的な対日戦略は、冷戦終結と共に転換され、90年代以降は、執拗な内政干渉を通じて、日本経済を漸次弱体化させ、その富を回収する対日戦略を取り続けてきた。」
「日本経済の弱体化とその富の回収をねらったアメリカの戦略の実行を日本国内において担わされたのは、主に自民党政権であった。(自民党は、その結党以来、アメリカのCIAの傀儡であったことは、機密解除されたアメリカの公文書が示している歴史的事実である。)」
「90年代以降の、日本の弱体化と富の回収をねらったアメリカの対日戦略も最終段階に至り、いまやTPPと道州制により、完全な日本の解体を目論んでいる。」
「日本を解体し併呑しようとしているアメリカの意図に気づかず、日本に対して友好的だった時代のアメリカの記憶をいまだにひきずっている戦後教育に洗脳された日本人が、民主党への不信感、高まる中国の脅威、韓国への嫌悪感などから、自民党を盲目的に支持し、アメリカへの傾斜を強め、TPPや道州制による日本解体に加担しようとしている。」

アメリカがでっちあげた、ばかばかしいウソと洗脳の上に築かれてきたのが、「戦後レジーム」なのであって、そこから脱却するということは、歴史の真実を知り、いかに自分たちがだまされていたか、洗脳されていたかに気づくことからはじまらなくてはなりません。

で、あるにも関わらず、「戦後レジームからの脱却」という言葉を振りかざしながら、あいも変わらぬ対米従属の外交を続け、アメリカに50兆のお金を貢いで「日米同盟を強化」し、それによって「中国包囲網」という冷戦構造の焼き直しを推進しようとし、天皇陛下を侮辱した隣国を「自由と民主主義」というアメリカから植え付けられた戦後的価値観を共有している国だと誉め称え、デフレ脱却を行うといいながら同時に大企業に有利な消費増税を押し進め、道州制を導入して国家の機能を弱め、再び国際金融資本に儲けさせようとする。

この自己矛盾に満ちた政権は「戦後レジームからの脱却」という言葉の意味を深く考え、本当にそれを実現しようとしているのでしょうか。「戦後レジーム」から脱却するどころか、むしろそれを強化しようとしているように見えるのは私だけでしょうか。

憲法を改正しようとしているのはわかります。しかし、「自由と民主主義こそ至上の価値だ」と、アメリカから教わった戦後的価値観を振りかざすのであれば、現行憲法と何も変わるところはありません。また、集団的自衛権の行使を可能にし、日本の軍隊をアメリカの駒として活用することを可能にするための憲法改正ならば、それは、「戦後体制からの脱却」でしょうか、あるいはその強化でしょうか。

日本を取り戻す

誰から日本を取り戻すのでしょうか? アメリカの支配から日本の独立と自律性を取り戻すのでなくて、どうして「戦後レジームからの脱却」が可能なのでしょうか? 「戦後レジームからの脱却」といいながら「日米同盟を強化する」という。矛盾した二つのことを平然と掲げる安倍政権が、どこに私たちを連れて行こうとしているのか、私にはさっぱり理解できません。

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2013年1月27日 (日)

政府は必ずウソをつく

TPPについて大変参考になる動画です。自民党と安倍政権を支持してきた三橋貴明氏も、TPPと消費税については、参院選後に注意せよと警告されています。どうかみなさん、安倍さんはTPPに参加しないだろうとたかをくくるのではなく、疑ってください。彼らが言っていること、起きている出来事の裏を考えてください。政府は必ずウソをつきます。三橋氏も熱弁されていますが、TPPを推進する「やつら」は私たちの想像を絶するほどえげつないです。彼らは目的を遂げるためならなんでもやります。

動画が削除されてしまいました。まとめてくださった方がいますので、下のブログをご覧下さい。
http://ameblo.jp/aries-misa/entry-11458908159.html

動画のコメント欄も見ていただきたい。

民主党政権時代に「目覚めた」多くの人たちが、

マスコミ(悪)VS自民党(善)

民主党(悪)VS自民党(善)

こういう単純な二元論に凝り固まってしまっていることが伺えます。そして自民党を病気のように盲信しています。彼らは、日本を守ることよりも、自民党を守ることに熱心になっています。

これは2009年の政権交代以前には見られなかった現象です。あのとき、私も含めた保守活動をしていた人たちは、民主党への政権交代を阻止しようとがんばっていました。しかし、カルト的、盲目的な自民党支持者なんかいませんでした。麻生政権が国籍法を改悪しようとしたときも、大反対し、自民党を批判しました。

マスコミ(悪)VS自民党(悪)

民主党(悪)VS自民党(悪)

国を売る人たちは、いたる場所にひそんでいます。だから、こういう認識でないと困るんです。

実際に、3年間の民主党政権が終わり、過去20年間をひもといて客観的に比較すれば、売国において民主党の方が自民党よりひどいということはありません。ふたを開ければ民主党による売国は大したことはありませんでした。その政治にはいい面もあった。民主党に比較すれば自民党による過去の売国の方がはるかにひどい。これは調べれば簡単に分かることです。しかし、最近保守活動に加わるようになった人たちは非常に偏った見方をもっています。「目覚めた」といいながら、アメリカは善であるという戦後民主主義と冷戦構造の中で植え付けられた洗脳からぬけだせないまま、「中国が悪い、韓国が悪い」という憎悪や危機意識ばかりを肥大化させ、カルト的な自民党支持者になって日本をさらなる危険に追いやっています。

売国的な性向のある政党を、たくさんの人たちが盲信してしまっている今の状態は大変危険です。本当に目を覚まさないと、日本はおかしな方向にどんどん進んでいきます。

私は、自民党はだめだから、民主党を支持しようとか、自民党はだめだから、維新を支持しようとか、そんな単純なことを言ってるのではありません。みんなだめなんです。今の政党で、まともなところなんかないです。なぜかわかりますか? 背後にいて日本を利用しようとする「やつら」は、自民であれ、民主であれ、どの政党にも近づきます。コントロールしようとします。だからこれは政党の善し悪しの話ではありません。特に、自民党は、与党時代が長かったこともあり「やつら」とのつながりは非常に緊密です。民主党に輪をかけてろくでもない売国政党なのであって、その現実をきちんと踏まえて戦っていかないと、日本を守り抜くことはできません。

民主党(悪)から、自民党(善)を守ろうとしたり、マスコミ(悪)から、自民党(善)を守ることが私たちのするべきことなのではありません。そんなことにエネルギーを使う代わりに、どうかTPPに関する問題を広く国民に知らせてください。

私たちが今すべきことは、自民党の中にも、民主党の中にも、マスコミの中にも、財界の中にも、学界の中にも等しく存在し、現在の日本にあふれかえっている売国奴どもから、日本を守っていくことです。

自民党は、売国奴の最大の巣窟です。

下は、国民が意味も分からず小泉純一郎を熱狂的に支持していたときのイギリスのフィナンシャル・タイムズの記事です。

Financialtimes

「国際金融資本は、日本人の貯蓄300兆円を手にするために、もう少し待たなければならない。」

一回だまされるだけならまだ許されます。二回も三回も同じやり方でだまされる人たちのことを「バカ」と言うんです。

事実をちゃんと見ないとだめです。

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2013年1月26日 (土)

安倍売国政権とバカ国民(WJF含む)

安倍晋三氏は、「美しい日本」とか「日本をとりもどす」とか「戦後レジームからの脱却」とか美辞麗句を並べながら、

●千年に一度の大災害の後にも関わらず、復興予算はたったの19兆円、しかも増税をして国民の税金をあてがうなどという前代未聞のばかばかしいやり方で使うことしか財務省(アメリカ)に許してはもらえないのに、短期国債を発行して50兆円もの大金を調達し、二度と取り戻すことのできないことが分かっていながらアメリカに献上する。

●「戦後レジームからの脱却」を実現して、対米従属の戦後史に終止符を打つどころか、TPPだの道州制だのを、国民の目をごまかしながらこそこそと押し進め、日本をアメリカの一部に組み込もうとしている。

●「日本をとりもどす」どころか「日本をうりわたす」ばりばりの新自由主義者たちで閣僚を固める。

●デフレ脱却や円安というおいしそうな人参を国民の前にぶら下げながら、同時に再び大量の自殺者を生み出すことが手に取るように明らかである消費税率の倍増などというムチを背後で着々と準備する。

●中国とはいたずらに緊張を高めるかわりに、韓国の親しい友人のため、またアメリカの指示通り、竹島問題を取り下げ、国際司法裁判所単独提訴の絶妙のチャンスを反古にする。

●2007年のアメリカ下院による慰安婦決議では、外務省の役人や麻生外相を送って外交力を駆使して裏で火消しに務めれば済む話を、有効な策をとらずに、世界中が見ている記者会見の場で、日本の総理大臣自らが謝罪して日本の名誉を決定的に損ない、結果として世界中の議会の抗議決議の採択を招く。

なぜこの人物が「愛国者」として教祖のように救世主のように祭り上げられているのか、私にはさっぱりわかりません。誰も事実を見ようとしない。臭い物にふたをし、カルト信者のようにこの人物を盲信し、事実を都合良くねじ曲げて解釈し、日本が実際にはどんな状況に追い込まれてようとしているのか、誰も自分の頭を使って考えない。責任を取らない。今の日本は異常です。

最近、増補された『新しい国へ 美しい国へ 完全版』の中で安倍晋三氏は、道州制について次のように述べています。

「瑞穂の国の資本主義」

特に総理を辞めてからの五年間、公園やミニ集会などで地方の窮状を実感する機会が数多くありました。例えば私の地元である山陰地方の場合、新幹線もなければ高速道路もない。人件費は東京に比べれば安いですが、中国のミャンマーなどに比べれば高い。つまり企業を誘致しようにも来てくれないのです。

しかしながら、日中関係が不安定な中で、日本の地方に眠る質の高い労働力に注目が集まりつつあります。交通や道路などのインフラを整備し、国内におけるヒト・モノ・カネの移動の速度を上げることで、こうした国内資産を活用できるはずです。

あるいは、私の地元や九州の場合、地理的な距離でいえば、東京よりも中国の都市の方が近い。場合によっては日本の高品質な農産物の中国への輸出、労働力の交流も直接行った方が双方に利益があるかもしれません。

私は長期的には、東京一極集中を解消して道州制を導入すべきだろうと考えています。日本を十ぐらいのブロックに分けて、そこに中央政府から人を移して、州政府のようなものをつくり、その下に基礎自治体が有るイメージです。そうすることで、いちいち中央を通さなくても、各州が独自の判断でスピーディに動くことができる。東京だけでなく、日本全体が活力を取り戻さない限り、日本の再生はありえないと私は考えています。

日本という国は古来、朝早く起きて、汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら、秋になれば天皇家を中心に五穀豊穣を祈ってきた、「瑞穂の国」であります。

自立自助を基本とし、不幸にして誰かが病に倒れれば、村の人たちみんなでこれを助ける。これが日本古来の社会保障であり、日本人のDNAに組み込まれているものです。

私は瑞穂の国には、瑞穂の国にふさわしい資本主義があるのだろうと思っています。自由な競争と開かれた経済を重視しつつ、しかし、ウォール街から世間を席巻した、強欲を原動力とするような資本主義ではなく、道義を重んじ、真の豊かさを知る、瑞穂の国には、瑞穂の国にふさわしい市場主義の形があります。

安倍家のルーツは長門市、かつての油谷町です。そこには棚田があります。日本海に面していて、水を張っているときは、ひとつひとつの棚田に月が映り、遠くの漁火が映り、それは息をのむほど美しい。

棚田は労働生産性も低く、経済合理性からすればナンセンスかもしれません。しかしこの美しい棚田があってこそ、私の故郷なのです。そして、その田園風景があってこそ、麗しい日本ではないかと思います。

市場主義の中で、伝統、文化、地域が重んじられる、瑞穂の国にふさわしい経済の有り方を考えていきたいと思います。

「私は瑞穂の国には、瑞穂の国にふさわしい資本主義があるのだろうと思っています。(中略)道義を重んじ、真の豊かさを知る、瑞穂の国には、瑞穂の国にふさわしい市場主義の形があります。」とか「瑞穂の国にふさわしい経済の有り方を考えていきたい」と、うっとりするような愛国心を吐露しながら、その一方で「瑞穂の国」の歴史や伝統とは何の脈略も関係もない、アメリカの州制度を日本に導入し、日本をばらばらに切り刻むべきだと書く。閣僚は「ウォール街から世間を席巻した、強欲を原動力とするような資本主義」を推進するばりばりの新自由主義者で固める。このような恥知らずなほどに自己矛盾した正反対のことを平気で書き、行うことのできる感覚は、私にはまったく理解できないものです。

地方分権が必要だというのなら、長い封建制の時代を経た日本には、江戸時代に幕藩体制という完成した地方分権制度が存在しました。地方分権の度合いを強めることは、現在の都道府県制でも十分に実現することができます。アメリカの州制度を日本に導入して、日本を切り刻む必然性なんかこれっぽっちもないはずです。

姑息なのは、道州制に関する上の文章は、選挙前に出版されていた『美しい国へ』の中に掲載されていなかった。選挙が終わった後に、増補という形で上の文章を追加し、しかも本のタイトルを『新しい国へ』と変えて再刊する。愛国的な文章の中に、こっそりと道州制をしのばせる。規定のシナリオの実現に向けて、国民の目を欺きながら、着々と事を進めていく。国民は愛国的な文章にうっとりと騙されたまま、その中にしこまれた毒に気づくことなく、売国が押し進められていく。小泉政権のときと全く同じ手法、同じパターンの繰り返しです。安倍政権は、小泉政権の焼き直しです。何一つ変わってない。

「保守・愛国」「新自由主義」。この相矛盾する二つのものを、同時に語って悪びれないのが安倍氏(あるいは自民党や維新)の特徴ですが、安倍氏の「保守・愛国」的な言葉に魅了された人は、彼の「新自由主義」的な発言や行動は、目に入らない、耳に届かない。あるいは故意に目をそらして見ようとしません。おかげで、安倍氏は、信奉者たちが寄せる熱烈な拍手喝采の中、「新自由主義」的な政策を粛々と進めることができるわけです。小泉純一郎がそうしたように。

一体、自民党は「保守政党」なのか。本当に「保守政党」であるならば、一体自民党が何を20年間「保守」してきたのか、一つでもいいから挙げられますか。一つでもそんなものがありますか? 日本の名誉も、財産も、経済も、領土も、権利も、何一つ守ってきてないではないですか。逆に、自民党が、アメリカや、中国や韓国・北朝鮮や、財務省の圧力に屈して、譲り渡し、破壊し、損ない、だめにし、放置し、悪化させてきたものなら、いくらでも挙げることができます。

保守政権を擬装し、TPPだの道州制だの消費税だのと、あいも変わらぬ「新自由主義」的な政治を推進し、日本を根底から作り替えようとしているアメリカの傀儡政権に乗っ取られてしまったこの国は、これから4年間どこに向かうのでしょうか。4年後の日本は一体どうなっているでしょうか。

激しい怒りと焦りに体が震えています。

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2013年1月25日 (金)

TPP議論加速を指示へ 首相、再生本部で関係閣僚に

TPP議論加速を指示へ 首相、再生本部で関係閣僚に

安倍晋三首相は25日に開く日本経済再生本部で、環太平洋経済連携協定(TPP)、 経済連携協定(EPA)などを念頭に経済連携の議論を加速するよう関係閣僚に指示する意向を固めた。 菅義偉官房長官を中心に、茂木敏充経済産業相、林芳正農相、岸田文雄外相と政府の対応を検討する。 アジア太平洋地域の成長を取り込むため、原発や鉄道などインフラ輸出を推進する方針なども強化する。

23日に開いた産業競争力会議で民間議員から出た意見を踏まえた措置
首相は規制改革やイノベーションの強化に向けた具体策の検討なども関係閣僚に指示する。

産業競争力会議の民間議員と言えば、第一に思い浮かぶのが、小泉政権で売国行為を働いていたばりばりのTPP推進論者、竹中平蔵氏。そして竹中平蔵氏の起用を、反対の意見もある中、押し切ったのは安倍総理自身です。竹中氏にTPP参加を促す意見を発言させ、それを受けて首相がTPP議論加速を指示する。シナリオ通りの展開です。

TPP「認めると言わせる」 関税撤廃の例外で農相 (2013年01月19日)

林芳正農相は18日、19日放映するBS朝日の番組収録で、TPP交渉参加問題について「聖域なき関税撤廃という前提の踏み絵から交渉の勝負が始まる。日本は大切なパートナーだから(交渉参加国に)例外を認めると言わせる」と述べ、交渉参加前に関税撤廃対象から除外する例外を設けることに全力を尽くす考えを示した。

安倍政権は、いくつかの例外品目をアメリカに認めさせ(るふりをして)て、TPPに参加するだろう、そのシナリオは既に描かれているだろうと、私は年頭より皆様に、強く警告してきました。

2006年5月、安倍晋三氏は、韓国の次期大統領、朴槿恵氏が暴漢に襲われた際、「日本と韓国は兄弟である」としたためたお見舞いの親書と牛肉を送ったそうです。安倍氏が、韓国に友人をもつこと、そのことを非難したいのではありません。安倍氏のおじいさんと朴氏のお父さんが親友であったのですから朴氏と仲がよいのも当然のことでしょう。しかし国家の問題と個人の交遊はきちんと区別すべきです。友人の大統領就任式がつつがなく開かれるように配慮して、竹島の日の政府主催を取りやめたり、竹島問題の国際司法裁判所への提訴を取りやめるとしたらとんでもないことです。尖閣問題で中国との緊張が高まる中、すべての領土問題は国際司法裁判所で平和的に解決するべきである、という静かだが力強い姿勢を内外に示すことは、「中国を包囲する」などと唱えて中国を不用意に挑発する以上に、大きな意味があるはずです。それをこの絶妙なタイミングにわざわざ行わないなどといった不可解で愚かな政治がありますか? 外国の要人との交遊関係を理由に、国土の一片をおろそかに扱う政治家は、国家に帰属する他の権利や財産や名誉や主権も同じようにおろそかに扱う可能性がある、このことこそが問題です。

売国奴は決して売国奴の看板をぶらさげて現れたりはしません。「私は売国奴です」という面構えをして現れたりはしないのです。本物の売国奴は、時にプレスリーのまねをしながら、時に靖国神社に立ち寄りながら、国民の拍手喝采の中、颯爽とにこやかに登場します。そして外国の要人とフレンドリーに語らいながら、鮮やかに国を売ります。

TPP反対の声を、今、地鳴りのように轟かせないと、私たちは、本当に、本当に、国を失くすことになります。

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2013年1月24日 (木)

米議会「第2の慰安婦決議」推進の見通し

アメリカ連邦議会が第2の慰安婦決議を推進しているそうです。

米議会「第2の慰安婦決議」推進の見通し

【ワシントン聯合ニュース】第2次世界大戦中の従軍慰安婦問題をめぐり、米連邦議会が2007年の下院決議を補強した「第2の決議」採択を推進する見通しだ。

 下院外交委員長のエドワード・ロイス議員(共和党)は23日、ニューヨークの韓国人団体「韓米公共政策委員会」の代表団と会い、「第2の慰安婦決議」に賛成する意向を示した。

 米下院は2007年7月、旧日本軍による慰安婦の強制連行について、日本政府に謝罪を求める決議を満場一致で採択した。

 韓米公共政策委員会のイ・チョルウ会長が、同年の決議採択から何も変わっておらず、あらためて採択が必要だと訴えると、ロイス議員は「決議の共同提案に加わる」と即応したという。

 また、民主党議会選挙対策委員会(DCCC)の委員長を務めるスティーブ・イスラエル議員も同日、イ会長らと会った席で決議を提案する考えを示した。

 民主・共和党指導部の実力者とされる両議員が支持の意向を表明したことから、米議会で約5年ぶりに超党派的な慰安婦決議が採択される可能性が強まった。

 韓米公共政策委員会は決議の内容と関連し、2007年の決議の大枠を維持する一方、旧日本軍による慰安婦募集の強制性を認めた「河野談話」の見直しに反対する文言が含まれるよう、議会に働きかけていくという。

 イ会長は韓国人記者との懇談会で「第2の慰安婦決議の推進は、韓日関係の改善を通じた韓日米3カ国の関係発展を目指すためのもの」と説明した。

昨日、自殺・消費税・アメリカ国債・対米従属 (3)という記事で、冷戦終結以来、いかに日本が3方向から包囲されてきたか、また、特にここ20年間の日本の政治(主に自民党による政治です)がいかに、この3方向からの力に有効に対処できず、無力に膝を屈して日本の国力を弱めてきたかを指摘しました。

また、20年間失政を重ねてきた自民党が、民主党がひどかったというそれだけ理由で、過去の失政に対する総括も一切行わないまま免罪され、あたかも真の愛国保守政党であるかのごとき誤解と盲目的な支持を受け、その批判すらタブー視されている現在の異常な状況に対する憂慮の念を、何度も申し上げてきました。

安倍首相は2007年4月28日、ブッシュ大統領との首脳会談で、慰安婦問題に関して次のような謝罪を行っています。

「慰安婦の方々が非常に困難な状況のなかで辛酸を舐められた、 苦しい思いをされたことに対して、人間としてまた総理として、 心から同情をいたしておりますし、 またそういう状況に置かれていたことに対して申し訳ない。20世紀は人権が侵害された時代、21世紀は人権侵害のない素晴らしい世紀にすることに日本は貢献したい。このことについてをブッシュ大統領に話した次第であります。」

安倍首相は、元慰安婦の人たちに「同情」しても、「申し訳ない」と謝るべきではありませんでした。慰安婦制度の下で、いくつかの違反事例が発生したのは事実ですが、日本政府が直接、それらの違反行為を意図したり命令していたわけではないからです。

この安倍首相の謝罪の後、世界中の議会(アメリカ、オーストラリア、オランダ、カナダ、EU、フィリピン等)で、慰安婦問題について日本を糾弾する決議が次々に採択されていきました。

先日皮を剥ぐアメリカ、肉を食らうロシア、骨の髄に食い込むシナという記事で、アメリカ、カナダ、オーストラリアといった移民国家では、中国や韓国からの移民が急増しており、この傾向はこれからも続いていく。今後ますます中国化し、韓国化していくであろうアメリカに、日本がこれからも依存を続けることは、中国や韓国による間接的な支配に道を開くものである、という問題を指摘しました。この慰安婦決議に見られるような米国による反日の動きは、今後ますます苛烈さを増していくでしょう。

安倍政権は、「中国包囲網を形成するために日米同盟を強化する」という外交方針を打ち出し、多くの国民がこれを支持していますが、一方で「戦後レジームからの脱却」を唱えながら、他方で対米従属を続けようとすることは、自己矛盾以外の何ものでもありません。依存と従属を続けようとすれば、慰安婦問題などで謝罪せよという彼らの圧力に屈し続けなくてはなりません。復興にも国土強靭化にも充てられるであろう50兆円で、アメリカ国債も買わなくてはなりません。

アメリカからも「中華」からも静かに離脱し、独立した力と地位を獲得する。反米になるのでもなく、反中になるのでもなく、親米になるのでもなく、親中になるのでもなく、これらの国々と等しい距離を保って生きる。その必要性に多くの国民が目覚め、腹をくくるべき時だと思います。このような自立した日本の姿を願う国民が増えなければ、それを実現しようとする政治家も現れないでしょう。アメリカにも寄らず、中国にも寄らない自立した政治を説く政党が、共産党ぐらいしかない日本の現状は異常であり、情けない限りです

一身独立して一国独立す。

国民の間に独立への気概が漲っていかなければ、日本はいつまでも、こづきまわされ、むしりとられていくばかりです。日本人はいつになったら目覚めるのでしょうか。いつになったら自分たちが持っている素晴らしいポテンシャルに気づき、それにのみ依り頼んで国を再建しようとするのでしょうか? 中国や韓国や民主党の悪口ばかりを言い、アメリカや自民党に対しては無批判で、べたべたと依存して済まそうとしている子どものように未熟な段階から、いつになったら日本の保守は脱皮し成長するでしょうか。いつ日本人は腹をくくり、自分たちの足で再び立ち上がるのでしょうか?

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慰安婦動画。説得力のある、よりよい動画になるように格闘を続けています。
慰安婦決議を封じられるように全力を尽くします。

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2013年1月23日 (水)

自殺・消費税・アメリカ国債・対米従属 (3)

1989年に冷戦が終結しソ連の脅威が去ると、アメリカのGDPを追い越さんばかりに経済成長を遂げた日本に対する内外の締め付けが、一層厳しさを増すようになりました。

冷戦終結以降、現在に至るまで、つまりはこの平成の御代を通じて、主に三つの方向から日本を押さえつけ、そのポテンシャルの発揮を阻害しようとする力が加えられてきました。

A. 80年代まで、日本に対して友好的だった中国の態度が、天安門事件以降豹変しました。韓国との間には慰安婦問題が浮上し、中国や韓国による、激しい反日キャンペーンが展開されるようになりました。北朝鮮による拉致問題が明らかになりました。ソ連が脅威として去った代わりに「中華」が新しい日本の危機として浮上するようになりました。

B. 冷戦が終わると、日本の経済成長に対する危機感や、怒り、恐怖心がアメリカ人の間に広がりました。この頃行われた世論調査によるとソ連よりも日本に対して脅威をいだくアメリカ人の方が多かったそうです。(wikipedia:日米関係)それに伴い、日本に対して規制緩和や構造改革、グローバル化の推進を求めるアメリカの内政干渉が激しさを増すようになりました。

C. 財務省(旧大蔵省)が主導する、財政健全化を理由にした増税や緊縮財政への執拗な圧力が強まり、その圧力に屈した橋本政権以降、結果的に日本のGDPの成長はぴたりととまり、デフレを深刻化させ、かえって財政は悪化しました。円高と国内の需要不足により、企業は生産拠点を海外に移転せざるを得なくなり産業の空洞化が起きました。また企業のリストラによって優秀な人材や技術が海外に流出しました。自殺者が急増し3万人を下ることはありませんでした。並行して移民緩和政策も段階的に推進されてきました。日本が潜在的にもっている生産能力を減退させる方へ強い圧力が長期的に加えられてきました。

事実4: 日本がそのポテンシャルを発揮することを阻害しようとする力は、

 A. 「中華」の側から
 B. アメリカの側から
 C. 日本国内から

三方向から加えられてきた。

この三つの力に力なく膝を屈してきたのが、冷戦終結以降、20年間の日本の政治であり、その政治を司ってきたのは、主に自民党政権でした。民主党一党が売国だったわけではなく、冷戦終結以降、上の三方向からの力に有効に立ち向かうことのできた政党や政権は、これまで一つもありません。

三つの力から等しく「脱却する」政治が、今こそ求められていますが、A. 「中華」からの圧力や脅威を恐れて、B. アメリカからの力にすがろうというのでは解決になりません。あまりに多くの人たちが「日米同盟を強化すればよい」と短絡的に考えてしまっています。また、民主党政権による3年間の悪政ばかりが過度に強調され、上記の三方向の力に20年間屈服し続けてきた自民党の体質が隠蔽、免罪されてしまっています。自民党自身が過去の失政に対する十分な総括と方向転換を行わないまま、国民が盲目的な支持を与えることは、大きな危険性を孕んでいます。

例をあげるならば、中野剛志氏が、日本の政治、日本の国家としてのあり方そのものに対する次のような怒りの告発を行っています。

中野氏が怒っているのは、日本を弱めゆがめようとする力に屈してきた日本の国家としてのあり方そのものに対してだと思いますが、動画のコメント欄には「結局、日本の癌は、朝鮮人と中国人なんですね」とか、「民主は今後責任追及し、売国奴として裁くべき」など、問題の原因を限定的に考えている方が非常に多い。「中国が悪い、韓国が悪い、民主党が悪い」このような声は、こだまのようにネット上にあふれかえっていますが、日本をぼろぼろにしているのは、何よりも、私たち自身の惰弱さであり愚かさであるということを自覚しなくては、日本はいつまでも衰退の軌道に載せられたままです。特定の国や政党を非難してすむ話ではありません。

自民党の議員からも「三年間の民主党政権でめちゃくちゃにされた」というような趣旨の発言が昨今聞かれますが、彼らは、民主党の三年間の失政を笑い、批判する以前に、自分たちの20年間の失政を心から反省すべきです。国民もこの点において、彼らを盲目的に支持するのではなく、彼らが同じ過ちを繰り返そうとする兆しが少しでも見えるならば、厳しく糾弾すべきであると思います。

安倍政権も、A. 中国からの力に対処するために、B.アメリカからの力に傾斜し、依存し、迎合していくというのでは、問題の根本的な解決にはつながりません。また、C. 内側からの力に対しては、安倍政権は2%のインフレ目標を設定する日銀の同意を取り付けるなど、よいきざしはありますが、消費税の増税を前提している点が問題です。財務省が現在アベノミクスを容認しているのも、将来の消費増税を見込んでのことです。せっかくアクセルを踏んでも、そのあとブレーキをかけるのでは元の木阿弥です。

また、この三方向からの力は、これまでも、ばらばらに働いていたわけではなく、相互に関係し合ってきた可能性があり、また今後も深く関係しうる可能性がある、という点も留意しておくべきであると思います。

「中華」(かつてはソ連)からの脅威が強調される→対米依存の必要性が説かれる→対米従属的な政治が行われる→アメリカの要求を受け入れざるを得なくなる→国力が減衰され「中華」の脅威が相対的に大きくなる→「中華」からの脅威が強調される

という悪循環が繰り返されており、中国を囲い込むどころか、これまで20年以上も日本を囲い込み、日本のポテンシャルの発揮を妨げてきたカラクリの中にさらに深くに絡め、これでは日本の力はますます弱まるばかりです。

次回に続きます。

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2013年1月22日 (火)

自殺・消費税・アメリカ国債・対米従属 (2)

日本人は極めて勤勉で器用な人民であり、或る製造業について見ると、如何なる國民もそれを凌駕し得ないのである。

開国を求めるため、黒船を率いて日本を訪れた、マシュー・ペリーが、帰国後の1856年に刊行し、アメリカ議会に提出した『日本遠征記 』(Narrative of the Expedition of an American Squadron to the China and Japan etc.) の中の記述です。ペリーは日本人について次のようにも記しています。

彼等は外國人によつて齎された改良を觀察するのが極めて早く、忽ち自らそれを會得し、非常な巧みさと精確さとを以てそれを模するのである。金属に彫刻するのは甚だ巧みであり、金属の肖像を鑄ることもできる。

彼等は磁器を製作してゐるのだし、また或る人の語るところによれば支那人よりももつと立派に製作することができると云ふ。兎に角、吾々が見た日本磁器の見本は甚だ織巧美麗である。

木材及び竹材加工に於て、彼等に優る國民はない。彼等は又世界に優るものなき一つの技術を有してゐる。それは木材製品の漆塗りの技術である。他の諸國民は多年に亙つて、この技術に於て彼らと形を比べようと試みたが成功しなかつた。

彼等は絹をつくる。そのうちの最良品は支那の絹よりも上等である。

實際的及び機械的技術に於いて日本人は非常な巧緻を示してゐる。そして彼等の道具の粗末さ、機械に對する知識の不完全を考慮するとき、彼等の手工上の技術の完全なことはすばらしいもののやうである。日本の手工業者は世界に於ける如何なる手工業者にも劣らず練達であつて、人民の發明力をもつと自由に發達させるならば日本人は最も成功してゐる工業國民[マニュファクチャ-リング・ネーションズ]に何時までも劣つてはゐないことだらう。他の國民の物質的進歩の成果を學ぶ彼等の好奇心、それを自らの使用にあてる敏速さによつて、これ等人民を他國民との交通から孤立せしめてゐる政府の排外政策の程度が少ないならば、彼等は間もなく最も惠まれたる國々の水準にまで達するだらう。日本人が一度文明世界の過去及び現在の技能を所有したならば、強力な競争者として、将來の機械工業の成功を目指す競争に加はるだらう。

すでに述べたやうに汽船の機關が日本人の間に烈しい興味をよび起した。彼等の好奇心は飽くことを知らないやうであり、又日本の畫家達は機會ある毎に絶えず機械の諸部分を描き、その構造と運動の原理とを知らうとしてゐた。艦隊の二囘目訪問の際ジョーンズ氏は、機關全體を正しい釣合で畫いた完全な繪畫を日本人がもつてゐるのを見た。機械の数個の部分も適當に描かれてゐて他國で描かれてもこれ以上はできないほど正確で立派な繪圖であつたと彼は語つてゐる。

日本の社會には、他の東洋諸國民に勝る日本人民の美點を明かに示してゐる一特質がある。それは女が伴侶と認められてゐて、單なる奴隷として待遇されてはゐないことである。女の地位が、キリスト教法規の影響下にある諸國に於けると同様な高さではないことは確だが、日本の母、妻及び娘は、支那の女のやうに家畜でも家内奴隷でもなく、トルコの妾房に於ける女のやうに浮氣な淫樂のために買ひ入れられるものでもない。

既婚婦人が常に厭わしい黒齒をしてゐることを除けば、日本婦人の容姿は惡くない。若い娘はよい姿をして、どちらかと云へば美しく、立居振舞は大いに活潑であり、自主的である。それは彼女等が比較的高い尊敬をうけてゐるために生ずる品位の自覺から來るものである。

下流の人民は例外なしに、豊に滿足して居り、過勞もしてゐないやうだつた。貧乏人のゐる様子も見えたが、乞食のゐる證據はなかつた。人口過剰なヨーロッパ諸地方の多くの處と同じく、女達が耕作勞働に從事してゐるのも屡々見え、人口稠密なこの帝国では誰でも勤勉であり、誰をでも忙しく働かせる必要があることを示してゐた。最下流の階級さへも、氣持ちのよい服装をまとひ、簡素な木綿の衣服をきてゐた。

下田は進歩した開化の様相を呈して居て、同町の建設者が同地の淸潔と健康とに留意した點は、吾々が誇りとする合衆國の進歩した淸潔と健康さより遙に進んでゐる。

函館はあらゆる日本町と同じやうに著しく淸潔で、街路は排水に適するやうにつくられ、絶えず水を撒いたり掃いたりして何時でもさつぱりと健康によい状態に保たれてある。

地震によつて生じた災禍にも拘はらず、日本人の特性たる反撥力が表はれてゐた。その特性はよく彼等の精力を證するものであつた。彼等は落膽せず、不幸に泣かず、男らしく仕事にとりかゝり、意氣阻喪することも殆どないやうであつた。

世界のどの民族よりも器用で、好奇心旺盛で、驚くべき学習能力を備えており、上手に物を作り、勤勉で、礼儀正しく、女性の地位が高く、貧富の差は低く、乞食がおらず、町はアメリカよりも清潔であり、大地震が来ても落胆しない不屈の精神をもった民族。

マシュー・ペリーが出会った日本人という民族は、このような人々でした。

ペリーが記録の中で言及している地震とは安政の大地震のこと。日米和親条約が結ばれた1854年から1856年にかけて、東海地方、南海地方、江戸、東北沖など、日本列島を縦断する大地震が連続して発生しました。また、宇和島藩は、ペリー来航の3年後に、外国人に教わることなく日本人の手だけで蒸気船を建造しています。

本当にペリーの記述が正しければ、日本人は間違いなく、世界最強のポテンシャルをもった民族であったといっても過言ではないでしょう。

このペリーと日本人の出会いの中に、その後現在に至る150年間の日米関係の歴史が凝縮されているといってもよいと思います。

その歴史とは、極端に単純化していえば、アメリカが、日本人のもつこのポテンシャルの高さに驚き、やがて恐れ、さまざまな手練手管を使って、妨害したり、干渉したり、なだめたり、すかしたり、おどしたりしながら、その力の発揮を抑え込もうとしてきた歴史です。そしてそれは今も続いている歴史です。

下のwikipediaの記事が、アメリカが日本を抑え込もうとしてきた150年の日米関係の歴史を上手に要約してくれています。

日本との外交関係は、1854年の日米和親条約からである。政治的・軍事的においてアメリカ側の強い主導下で緊密だが、経済関係ではジャパンバッシング、日米貿易摩擦、年次改革要望書などで時に対立もある。貿易摩擦ではアメリカは自国製品の競争力低下を棚に上げ、差別的な対日制裁法案立法化の動きを利用し日本へ圧力をかけ続けた[15]。さらに1985年のプラザ合意による為替レート調整によって日本の輸出産業を抑制した[16]。外務事務次官・駐米大使を務めた村田良平は、貿易交渉等でアメリカが日本へ厳しい態度をとったのは、既にソ連の脅威が去り、代わりに日本が脅威になると考えている人間がアメリカ政府内にいた事も一因であり、ジョージ・H・W・ブッシュ政権以降、日本へ露骨な内政干渉を開始したと述べている[17]。緊密の度合いについては、二国間関係がアメリカの強い主導下にあるため日本国内から対米従属であるとの指摘もある。アメリカは日本の軍事力を抑制し、最先端兵器開発を阻止している[18]。
Wikipedia:アメリカ合衆国より

抑えても抑えても、叩いても叩いても、苦境から立ち上がり、ポテンシャルを発揮しようとする日本人。その度に、あの手、この手の新しい手段を考えださなくてはならないアメリカ。この150年の歴史は、この日米のいたちごっこの歴史であり、大東亜戦争も、原爆も、東京裁判や昭和憲法に象徴される戦後体制も、戦後の円やら、ドルやら、ニクソンショックやら、プラザ合意やら、アメリカの双子の赤字やら、日本のバブル崩壊やら、日米の国債やら、消費税やら、緊縮財政やら、規制緩和やら、構造改革やら、郵政改革やら、TPPやら、自民党の対米従属やらといった話も、このような歴史的文脈の中に位置づけてはじめて、すっきりと謎がとけることばかりです。

日本人は確かに、世界最強のポテンシャルを秘めた民族でしたが、一つだけ大きな弱点がありました。それは世界一、お人好しで、騙されやすく、御しやすい民族であったということです。

事実3: 日本は、放っておくと、ぐんぐんと成長し強大化してしまう高いポテンシャルをもっているため、誰かが押さえつけておかなければならない。


次回に続きます。

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2013年1月21日 (月)

自殺・消費税・アメリカ国債・対米従属 (1)

昨日、1997年に、自民党の橋本龍太郎内閣が、大蔵省の圧力(つまりはアメリカの間接的圧力)に屈したまま、消費税率を5%に上げて以来、日本は本格的なデフレに突入し、以来自殺者の数は3万人を下ることがなかったという事実にふれました。下のグラフを見ればわかるように急増したのは、男性の自殺者であり、一家の大黒柱が、経済的な行き詰まりを理由に自殺していったことが伺えます。

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「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがあります。一見無関係と思われる、二つの出来事のあいだには、人々の気づかない因果関係が隠されていることがある、ということを例示することわざです。ちなみに、「風が吹く」と「桶屋が儲かる」という二つの出来事の間には、次のような因果関係が隠されているのだそうです。

1. 大風で土ぼこりが立つ
2. 土ぼこりが目に入って、盲人が増える
3. 盲人は三味線を買う(当時の盲人が就ける職に由来)
4. 三味線に使う猫皮が必要になり、ネコが殺される
5. ネコが減ればネズミが増える
6. ネズミは桶を囓る
7. 桶の需要が増え桶屋が儲かる

江戸時代と異なり、盲人が三味線を弾かず、人々が木桶を使わない現代では、このことわざの真偽を実証することはもはやできませんが、「人々が自民党を盲目的に支持する」と「自殺者が増える」という二つの出来事の間の因果関係を説明することは、比較的たやすく行うことができます。

日本人の自殺と、消費税増税と、アメリカの圧力と、アメリカ国債と、自民党による対米従属と、自民党人気と、昨今の円安、これらの事実の間にどのような因果関係が存在するかを、何回かに分けて考えていきたいと思います。

この因果関係を理解すれば、なぜ「対米従属の先には亡国がある」と言えるのか、よりはっきりと認識することができると思います。私たちが、対米従属をやめて、国家として自立しなくてはならないのは、単に、「アメリカが嫌いだから」とか「原爆を落としたアメリカが憎いから」とか「独立国として情けないから」といった感情的な理由のためではありません。日本人の一人一人が、また子や孫たちの一人一人が、現実の生活を、一日一日、生き延びるためにこそ、真剣に考えなくてはならない選択肢です。日本人はアメリカの抱える借金のために、まさに奴隷と化しており、アメリカとともに奈落の底にまっさかさまに転落しつつあります。

「対米自立」というスローガンは、保守の人々の間であまり人気がありませんが、中国や韓国の危険性を熱心に啓蒙してこられた有名ブログ「中韓を知りすぎた男」も、下のような記事を掲げていらっしゃいます。

中韓を知りすぎた男: 親米保守の甘い幻想

このブログ主は、ビジネス上の個人的な直接の体験を通して、中国や韓国の問題を誰よりも深く御存知の方ですが、それを理由に、アメリカへの安易な傾斜を決して人々によびかけないその見識は大変立派なものだと思います。「中国は危ないから、アメリカにつこう」。「民主党はだめだから、自民党を信じよう」。このような単純で二元的な思考ほど、日本を誤った方向に向かわせるものはありません。

まずは、理解の前提となるいくつかの事実(点)を列挙していきます。その後で点と点と線で結ぶ作業を行い、それらの事実の間にどのような因果関係があるのか考えていきたいと思います。

昨年、民主党の野田政権と、自民党と、公明党が、三党合意によって、2014年に8% 2015年に10%の消費税増税を決定したことは、みなさん御存知のことと思います。一応、税率引き上げの条件として「経済成長率で名目3%、実質2%を目指す」ことを明記した「景気条項」と呼ばれる付則が付けられています。安倍政権が「2%のインフレ目標」を掲げているのも、消費税増税の前提条件を整える目的があります。

この消費税増税導入の背後には、十数年に及ぶ財務省の強力な圧力がありました。財務省は、国内の景気動向や、95%が国内の投資家よって保有されておりしかも円建ての日本の国債は破綻しようがないという事実を無視して、増税と緊縮財政を押し進め、ひたすら財政を「健全化」させることに執念をもやしてきたという事実を、まずはご留意ください。

事実1: 財務省は、たとえ日本の景気を悪化させてでも、財政規律を守ろうとする。

景気が悪いときに、公共事業を減らして財政をきりつめたり、増税をしたりすれば、当然需要が減るため、景気はさらに悪化し、深刻なデフレを引き起こしますが、財務省は、バブル崩壊以来、世論や政治家に「このままでは財政破綻するぞ」と脅しや圧力をかけて、緊縮財政と増税を推進してきました。日本の景気が少しよくなるきざしを見せれば、増税をし、財政を削る。日銀も不自然なタイミングで金融緩和を解除する。財務省も日銀も、まるで日本の景気回復を阻害することがその指命であるかのように、日本のデフレを悪化させてきました。政治家も長くこれに加担してきました。

下は日本とアメリカの名目GDP(国による物価の違いを考慮にいれないGDP数値)の推移のグラフです。1995年までは、日本のGDPはアメリカの経済成長とほぼリンクしながら成長していたことがわかります。アメリカの人口は日本の3倍ですから、一人当たりの名目GDPでは、1990年代の前半に、日本はアメリカを抜いていた時期がありました。しかし、1996年にスタートした自民党の橋本内閣以降、日本は本格的にデフレに突入し、日本のGDPがほとんど成長していないのがわかります。

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下は国の公共事業予算の推移を表すグラフです。橋本政権以来、公共事業費が削られ、緊縮財政が継続されてきたことがわかります。

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事実2: 財務省(当時は大蔵省)の圧力のもと、消費税率引き上げと緊縮財政を導入した橋本内閣以来、日本の経済成長は停滞した。

橋本龍太郎氏は、2001年の自民党総裁選において、次のように語り謝罪しています。

「振返ると私が内閣総理大臣の職にありましたとき、財政の健全化を急ぐ余りに、財政再建のタイミングを早まったことが原因となって経済低迷をもたらしたことは、心からお詫びいたします。

そして、このしばらくの期間に、私の仲のよかった友人のなかにも、自分の経営していた企業が倒れ、姿を見せてくれなかった友人も出ました。

予期しないリストラにあい、職を失った友人もあります。こうしたことを考えるとき、もっと多くの方々がそういう苦しみをしておられる。本当に心のなかに痛みを感じます。」(2001年4月13日)

三橋貴明 『日本の大復活はここから始まる』より引用

橋本氏は、2006年に亡くなるまで「官僚に騙された」と後悔されていたと言いますが、政策の誤りを率直に認め謝罪した分偉かったと思います。しかし、当時、橋本氏に増税と緊縮財政を執拗に促した官僚や、経済学者はどうでしょうか。後に同じ過ちを繰り返すことになる小泉純一郎や、小泉人気に便乗した自民党の政治家たちはどうでしょうか。小泉劇場に踊らされて自民党を盲目的に支持した国民は、今誤りに気づいているでしょうか。竹中平蔵や飯島勲のような小泉劇場の立役者に、現在も要職を与えている安倍首相はどうでしょうか。確かに、安倍政権は、公共事業費を増やし、橋本政権以来の長い緊縮財政に終止符を打とうとしているかに見えますが、果たして、安倍政権は従来と異なる新しい方向を目指して歩き出したでしょうか。

次回に続きます。

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2013年1月20日 (日)

日露戦争の敗北と大東亜戦争の勝利

通常、日本は日露戦争で勝利し、大東亜戦争で敗北したと歴史の教科書では教えられています。確かに表向きはそのように見えます。

しかし、歴史を掘り下げて見ると、実は日本は日露戦争で敗北し、大東亜戦争に勝利したと言うことも可能なのかもしれません。

一生懸命背伸びをして西洋人のまねをしてきた有色人種の新興国家が、強大な白人国家を打ち負かした日露戦争の輝かしい歴史的勝利。世界を驚愕させたこの未曾有の勝利によって、日本は不平等条約を解消し、世界の一等国として、西洋列強と対等な位置に上りつめました。日本人ならば誰もが誇らしく感じる日本史の一ページです。

しかし、よく注意してみれば、日本は、当時ロシアの南下政策を警戒していたイギリスに、都合のよい駒として利用され代理戦争を戦わされていた、日本はわざわざイギリス人から莫大な借金をしてイギリス人のための戦争を戦ってた、単純な日本人は権謀術数に長けたアングロサクソンの掌の上で踊らされていたにすぎないのだ、と考えることもできます。また、アメリカも表面上は日本を支援しましたが、日本がこの戦争を戦っていたまさにその裏で、「オレンジ計画」と呼ばれる対日戦争計画のプロトタイプを作成しています。セオドア・ルーズベルト大統領が、ロシアに賠償金の支払いを免除した日本にとっては大変屈辱的な講和条約を仲介したのとほぼ同時期に、1945年の原爆投下に至る日本封じ込め戦略を、アメリカはこの時既にスタートさせていたわけです。また、日露戦争の結果、ロシアから日本に転がり込んできた満州権益は、後に中華思想に基づいて満州は中国の一部である主張しはじめた中華民国(この経緯は尖閣諸島問題とそっくりです)や、「門戸開放」という美辞麗句をスローガンに掲げながら、遅れて中国進出に乗り出したアメリカの利害と激しくぶつかることになり、大東亜戦争の火種となりました。ロシアにしてみれば日露戦争に負けて満州を手放すことで、日本と中国の間に紛争を引き起こすことに成功し、アメリカがやっかいな敵を完膚無きまでに叩き潰してくれ、日ソ不可侵条約を破棄することで、大して犠牲を払うことなく戦勝国の権利や、サハリンや、北方領土も含めた千島列島の全てを手にしたわけですから、日露戦争は実はロシア(ソ連)の大勝利だったのかもしれません。

つまり、日露戦争の勝利の中に、後の大東亜戦争での日本の壊滅的な敗北が、既に胚胎されていたとも言えます。

日露戦争の約40年後、日本は大東亜戦争に破れ、日本の美しい都市の多くは、その多くの貴重な人命や文化財とともに灰燼に帰することになりました。アメリカは、民間人の上に情け容赦なく爆弾の雨を降らせ、原爆は、たくさんの日本人を生きながら、一瞬で灰にしてしまいました。

しかし、YouTubeのWJFの動画のコメント欄で、以前ある外国人が書いていた言葉が今も印象に残っています。第二次大戦後、イギリスは衰退し経済力で今や日本に及ばない。ソ連は解体した。中華民国は台湾に追いやられた。アメリカも第二次大戦の勝利をピークに衰退の一途をたどりつつある。現在も歴史の中にしっかり立ち続けているのは、むしろ日本ではないか。日本こそ第二次大戦の勝者ではなかったのか、というコメントです。

なるほどそういう見方もあるのかと感心しました。

また、大東亜戦争は、その戦いに命を捧げた日本人が素朴にそう信じ、そう願ったように、結果的に多くの有色人種の人々の独立をもたらし、世界の顔を作り替えてしまったわけですから、この点でも日本の大勝利であったといってよいのだと思います。やはり、日本はこの戦争に負けて勝ったのです。

「人間万事塞翁が馬」

戦争の難しさは、勝ったからといって勝ったとは限らない、負けたからといって負けたとは限らないことにあります。有益であると思われたものが必ずしも有益とはかぎらないし、有害と思われたものが必ずしも有害とは限らない、どんな物事にも両面性が含まれているのだということの、これは、一つの例にすぎないのかもしれません。

そして、このことは、最近終わりを迎えた民主党政権に対しても、また最近始まりを迎えた自民党政権に対しても当てはまります。

例えば、最近、次のようなうれしいニュースが報道されました。

自殺者、15年ぶり3万人下回る…防止策拡大で

警察庁は17日、2012年の自殺による死者が前年より2885人(9・4%)少ない2万7766人だったと発表した。

昨年3月、横浜市のJR駅で、ホームの縁から線路側に体を傾けた。「飛び込むなら今だ」。そう思った瞬間、悩みを聞き続けてくれた東京都荒川区の保健師(24)の顔が脳裏によぎったという。

 男性は2011年にも不況で職を失い、農薬を飲んで自殺を図っていた。その際に搬送された日本医科大付属病院(文京区)に紹介されたのが、この保健師だった。昨年末、IT関連会社への再就職が決まった男性は、「支えてくれる人は必ずいる。勇気を出して相談してほしい」と訴える。

G01

1997年、自民党の橋本龍太郎内閣が、大蔵省の圧力、(つまりはアメリカの間接的圧力)に屈したまま、消費税率を5%に上げて以来、日本は本格的なデフレに突入し、以来自殺者の数は3万人を下ることはありませんでした。これが15年ぶりに自殺者が9.4%も減少したというのですから、これは画期的な祝うべき出来事です。全ての愛国者は、自ら命を絶つ同胞の数をこんなにも減少させた民主党政権のこの功績を、あるがままに、心から誉め称えなくてはなりません。民主党政権下で起きたことだからといって、よいことをよいと評価できないのならば、その人の目は、先入観や思い込みによって曇らされていると言わざるを得ません。またアメリカに平然と国を売ってたくさんの同胞を自殺に追い込みながら、未だにその総括も行わず、悪びれることもないような政党を「愛国的な保守政党」などと呼んで疑問すら感じることがないのであれば、そのような人々の「愛国心」とは一体なんなのかと厳しく問いただされるべきでしょう。

政権の善し悪しは、その発する言葉ではなく、実際に、国家や国民に何をもたらしたかによって客観的に評価されるべきです。

すべての物事が備えているこの両面性を無視して、民主党を絶対的な悪として貶めることによって、自民党があたかも絶対的な善なる保守政党であるかのように吹聴する、事実と乖離した不自然でいびつな意見が、現在ネットにあふれています。善悪二元論的な論法は、大変分かりやすく、人々に受け入れられやすいものですが、日本の未来に対して責任をもつ私たちは、このような極端なものの見方や、どのような種類の煽動にも惑わされず、冷静な目でものごとの両面を見つめ、判断しなくてはならないと思います。

もちろん、みなさんは、このブログに書いてある私の個人的な意見(へそまがりの偏向した意見と自覚しています)もどうか盲信なさることなく、どんな意見や主張もまずは疑ってかかり、お一人お一人の頭で、日本を取り巻くさまざまな問題を考え抜いていただきたいと思います。そのために、このブログでは、通常正しい信じられている意見とは、敢えて異なった視点や意見を提示できたらと思っています。

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2013年1月19日 (土)

牧羊犬とショックドクトリンと新脱亜論

牧場での牧羊犬の仕事は、おとなしい羊の群れを追いかけ吠え立てて冊の中に追い込むことです。

日中の軍事衝突が現実味を増しつつありますが、これが牧羊犬(ショックドクトリン)の働きをして、日本という羊の群れをTPPという冊の中に追い込むことがないことを願います。

福沢諭吉が解いた脱亜論。

「日本は亜細亜(アジア=中華)を離脱しなければならない」というのが本来の意味ですが、

「脱亜細亜」は、同時に、「脱亜米利加」でなくてはならない

と思います。

「反アジア(=中華)」や「反アメリカ」である必要はありません。これらの国々と敵対したり衝突する必要はありません。ただ、これらの国々に媚びることなく、毅然と自分の足でしっかりと立つ力は必要であると思います。そのためには、「脱アジア(=中華)」と「脱アメリカ」の気概が国民の間に漲っていかなければなりませんが、対米自立という考えは日本人の間に本当に人気がありません。戦後と冷戦時代を生きてきた日本人の心の奥深くに、アメリカを善なる守護者や解放者と信じ、寄り頼もうとする心情が深く深く刷り込まれています。冷戦が終結して20年以上が経過する現在も、政治家を含めた多くの人たちが冷戦構造のパラダイムから抜け出せずにいます。

資本主義VS共産主義

というイデオロギー間の二極的な対立はとっくの昔に過ぎ去り、代わりに浮上したのが、

日本VS中華(朝鮮を含む)

というサミュエル・ハンティントンの言うところの「文明の衝突」ですが、日本人の多くは、この新しい紛争を未だに冷戦時代の時代錯誤のパラダイムによって捉えようとし、アメリカをはじめとする各国が日本の側についてくれることを素朴に期待しています。しかしながら、世界のほとんどの人々が冷戦時代のパラダイムからとっくに脱却をすませている現在、日本と中国の文明間の対立に積極的に関わり、一方に加担しようとする国は多くはないでしょう。それどころか、冷戦以前には、アメリカは、日本人を凶暴で再教育の必要な異質な民族と見なしたのに対して、満州をめぐる利害と中国進出の遅れから、中華に同情し、協力して日本を封じ込めようとしていた当の国です。日中の争いが文明間の争いとなれば、アメリカは中華に対してより親和的です。

中華(朝鮮をふくむ)とアメリカ。
両者は歴史観を共有しており、
中華の反日の根底には、アメリカの作った歴史観があり、
中華とアメリカ(連合国陣営)は、中国系・韓国系の移民の増加に伴い、今後ますます混然と一つになっていきます。

トロント市議会が南京大虐殺の決議文採択

カナダのトロント市議会はこのほど、「南京大虐殺から75年を思い起こすことを宣言し、国民の関心を高めるための役割を果たす」よう市長に求めた決議文を全会一致で採択した。

 1937年12月に起きた南京大虐殺から75年たった今年、北米の中国・アジア系市民の間では、尖閣諸島問題を契機とした日本国内の右翼的世論の高まりに対して懸念が広がっている。トロントはカナダ有数のアジア系住民が多い都市として知られているが、今回の決議は、日本の戦争責任に対する鈍感さに警告を発したものと言えそうだ。

 決議文は「虐殺はいまだ生存者の記憶に留まり」、事件が決して過去のものではないと強調。「命を奪われた犠牲者に思いをはせ、この虐殺事件を人々に伝えることは歴史の理解と平和を推進するために不可欠である」と述べている。これを受けて、フォード同市長は、「12月13日を『南京大虐殺を認識する日』と宣言する」と声明した。

 また同国バンクーバーでも12月9日、日系市民も含めた約60人が集まり、「バンクーバー市民による南京大虐殺75周年祈念」集会が開かれた。参加者によれば、席上、中国系のビル・チュー氏は、「日本が南京大虐殺を否定するようになっている現状は非常な痛苦を伴う」と述べ、日系と中国系の市民が連帯し、歴史の認識を深め合う必要を訴えた。

最近、田母神俊雄氏と共に『自立する国家へ!』という本を出版される、天木直人という元外交官の方が、同じ問題意識を次のように述べておられます。

安倍自民党政権の最大の敵は米国である

安倍自民党政権はもはや向かうところ敵なしだ。惨敗の衝撃から立ち直れない野党たちの体たらくを横目に見ながら参院選の勝利に手を打つ。それでも足らないといわんばかりに維新の会の橋下と会談し、渡辺みんなの党との分断をはかる。参院選が終ればその後3年間は選挙はない。安倍自民党政権の一人舞台だ。

そんな安倍自民党政権の最大の敵は米国だといえば誰もが冗談だろうと思うだろう。なにしろ民主党政権が壊した日米関係を立て直すのが最重要課題だと安倍首相自身が繰り返しているぐらいだ。ところがその安倍首相の愛国・保守という政治信条がそもそも米国と相容れない。とくに安倍首相の唱える歴史認識とその認識から由来する戦後レジームからの脱却を米国は認めない。

そのジレンマを安倍首相の応援団の筆頭である櫻井よしこ氏が見事に語っている。発売中の週刊新潮1月17日号の連載コラム「日本ルネッサンス」において慰安婦問題に好意的な理解を示す米国を批判している。そう思ったらきのう1月10日の産経新聞「安倍首相に申す」の中で、やはり慰安婦問題についての米国の対日歴史批判について理不尽だと嘆いている。米国が日本を占領した時も同じ事をしていたではないか、米国も黒人を奴隷にしてきただろう、それなのに何故日本だけに厳しく当たるのか、というわけだ。

そう言いたい気持ちはわかる。それに米国での慰安婦問題はロビー活動の政治的な駆け引きの側面は確かにある。しかし米国にはこの恨み節は通用しない。これ以上米国の意向に逆らえば米国は安倍首相の最大の敵として立ちふさがるだろう。こんな恨み節を言うぐらいなら対米従属外交をやめて米国から自立した外交を進めるべきなのだ。

「自立する国家へ!」(田母神俊雄、天木直人共著 KKベストセラーズ)という新書が1月19日に発売される。

外交・安保政策においてその考え方がまったく違うこの二人がなぜ一緒になってこの本を安倍首相に贈るのか。それは、これまでの日本のどの総理も行なおうとして出来なかった日本外交の対米自立を安倍首相の手で行なって欲しいと願うからだ。日本の自主外交を取り戻す事ができるのは貴方しかいないと褒め殺しているのである。

果たして安倍首相は信念を貫くのか、それとも対米従属に堕して米国に潰されるのか・・・


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2013年1月18日 (金)

鳩山由紀夫の大いなる自己矛盾

ローマから伸びるシルクロードの最東端に位置し、ユーラシアのあらゆる文明の最後の受け皿となった国。東洋の文化を長い時間をかけて蒸留、洗練させると同時に、西洋の文化との美しい融合を計った国。そして万世一系のご皇室と共に、その根っこにはいつも縄文の言霊をやどし続けてきた国。

私の願いは、そんな私たちの国日本が、その美しい姿と誇りある精神とを保ちながら、動かない定点のように、世界の激流の中で、右にも左にも、西にも東にも、北にも南にもぶれることく、静かに自分の足でいつまでも立ち続けてくれることです。

ですから、アメリカに傾斜しようとする自民党政治も、中国や半島に傾斜しようとする民主党政治も、共に、好きにはなれません。民主党だけを指さして「売国政党」と呼んだり、これまでさんざん売国行為を働いてきた自民党をさして「保守政党」と呼ぶ欺瞞に、安易に組する気にはなりません。

アメリカも、中国も、韓国・北朝鮮も、彼らは同じ歴史観を共有しています。正義の側に立つ彼らが、悪の日本を包囲し、叩き潰し、押さえつけるという歴史観です。

私の願いを実現してくれそうな政党は、残念ながら、今の日本には存在しません。どの政党も、日本の文化や伝統に深く根ざしてはおらず、日本らしい価値観や精神を反映せず、外国勢力やら、後づけの屁理屈やら、カルト宗教やら、損得勘定によって、右や左に吹き寄せられる根のない浮き草のように見えます。

さて、先日、その功績をたたえた鳩山由紀夫元首相ですが、ルーピーと揶揄されても仕方のない問題行動を起こしてくれました。

鳩山氏、南京大虐殺記念館を訪問 館長におわび伝える

【南京=金順姫】中国訪問中の鳩山由紀夫元首相は17日、江蘇省南京市の「南京大虐殺記念館」を訪れ、「多くの中国の方、特に南京の民間の方、捕虜の方々を日本兵が殺してしまったことは大変申し訳ない。おわび申し上げたい」と朱成山館長に伝えた。鳩山氏が報道陣に明らかにした。

 鳩山氏はまた、沖縄県の尖閣諸島は日中の「係争地」だとの同氏の認識を菅義偉官房長官が批判したことについて、「(日本)政府もよく勉強されて、その中から早く答えを見いだすべきだ」と述べた。

 中国国営の新華社通信は同日夕、「当時の日本兵が犯した罪を謝罪する」との鳩山氏の発言とともに、記念館を視察した詳細な様子を配信した。同記念館にはこれまで、日本の首相経験者として、村山富市氏、海部俊樹氏が訪問している。

私は彼が対米従属の長い桎梏から日本を解き放とうとした功績は讃えたいと思います。

しかし、彼は気づくべきでした。彼が忌み嫌った日本の対米従属の根底には、アメリカから押し付けられた東京裁判史観があることを。そして、今回彼が謝罪をした、いわゆる「南京虐殺」もアメリカによって塗り替えられ、また誇張された歴史の一部に位置づけられるものです。支那事変において日本が戦っていたのは、単に国民党や支那ではなく、あくまで、その背後にいるアメリカであり、アメリカのジャーナリズムは国民党と共に、世界にさまざまな反日プロパガンダを垂れ流していました。

鳩山氏は、一方でアメリカを批判しながら、中国にのこのこ出かけていき南京虐殺記念館で謝罪をする、その深刻な自己矛盾に気づいているでしょうか。対米従属から離脱しようとするならば、彼は同時に対中従属からも離脱しようとしなければならなかったはずです。

アメリカと中国は決して対立する二極ではありません。かつては手を結んで、共に日本をつぶそうとした二国であり、日本は、いまだに戦勝国である彼らの掌で踊らされています。この二国は、今でも深い関係を持ち、同じ歴史観を共有し、これからもその関係を深めていくであろう二国です。

"United Nations"、現在では「国際連合」と日本語に翻訳されているこの言葉は、第二次世界大戦中は、連合国を意味する言葉でした。現に、中国では今でも国際連合は「連合国」と呼ばれています。国連は決してニュートラルな価値中立の国際機関ではありません。

アメリカ(善)VS中国(悪)

という単純で二元的な構図を描き、「日本はどちらにつくべきか」と考えることは大きな誤りです。

中国を敵視して、アメリカに従属しようとすることも、
アメリカを敵視して、中国に従属しようとすることも、

いずれも、ただしい選択肢ではありません。どちらの道を選んでも、その延長線上に私たちを待ちうけているのは亡国です。

一つの自立した極として、右にも左にもぶれない動かない定点として、世界の中に静かに立ち続ける、独立した立ち位置を見つけるための、第三の道を歩き出さなければならないときに、私たちはさしかかっています。私たちの国が歴史に生き残るには絶対に避けては通れない分岐点です。

どの道を私たちは選ぶべきでしょうか。

アメリカに呑み込まれる道でしょうか。
中国に呑み込まれる道でしょうか。
それとも日本が日本として立ち続ける第三の道でしょうか。

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2013年1月17日 (木)

安倍劇場

先日、読売テレビの「たかじんのそこまで言って委員会」に安倍首相が出演されましたが、そのときに安倍政権の内閣官房参与を務める飯島勲という人物も出演し、「参与になって官邸に入ったら、官邸機能がボロボロになっていた」という発言を行いました。

この元在日朝鮮人ともささやかれているヤクザのごとき風体の飯島勲という人物は、小泉純一郎の首相政務秘書官として「官邸のラスプーチン」と恐れられ、「改革派VS抵抗勢力」という単純な二項対立の小泉劇場を演出し、国民の盲目的な小泉人気を煽った人物です。

飯島勲について次のブログが的確に描写していますので引用させていただきます。

反日K-POPを追う!

小泉さんのキャラクターは、生まれ持った天性の部分も大きいでしょうが、緻密に計算して「小泉総理」を演じていた部分もあったようです。

いわば、虚像をつくりだす。
それを演出していたのが、この飯島勲氏です。

たとえば小泉政権時代のフジテレビの番組「報道2001」。 司会者の「どうぞ!」という興奮した呼びかけとともに、そのゲストは右手のこぶしで「抵抗勢力」と大書された紙を突き破って、スタジオに姿を現しました。この間、格闘技のBGMよろしく、ロックバンド「クイーン」の曲が流されました。招かれたのは、小泉純一郎総理。最高権力者に上りつめたというのに、こんな悪乗りのパフォーマンスを演じることへの臆面など、小泉総理にはさらさらありませんでした。

このド派手な首相登場を演出したのが、小泉首相政務秘書官「飯島勲」。

ダイヤをちりばめたロレックスを腕に巻き、黒光りする高級車のキャデラック・セビルを乗り回す。脂ぎった浅黒い顔。迫力あるダミ声。身長167cm,体重約100キロのアクの強さを発散する風体で、ゴールデンバットをふかしながら、「おれは煮ても焼いても食えない男よ」と自嘲してみせる。

趣味は「小泉純一郎」と言い、「おれは小泉に体張ってる」が口癖。また「小泉とおれは、水と油の関係」とも言い、「小泉とおれを合わせれば、世の中の全部をカバーできるんじゃねえかって、勝手に思ってるんです」ともしゃあしゃあと言ってのける。

講談社文庫から「代議士秘書:永田町、笑っちゃうけどホントの話」という本を出した時には、旧知の官僚約130人が、出版記念のお祝いの会を催した。「政界内外の事情に精通した人脈の広さは、議員秘書で1,2を争う」(森派幹部)と評される。

「人脈は広い。官僚は言うに及ばず、マスコミや警察などにまで太いパイプを持っている。この幅広い人脈を介して飯島氏のところにはいろんな情報が集まってくるので、さらにいろんな人物たちが寄ってくる」と森派のある代議士秘書は言う。 「特に飯島氏のマスコミ人脈は際立っている。それを何よりも如実に証明したのが、たかが一介の秘書が書いた永田町の内幕ものの文庫本について、挙って全国紙がPRまがいの記事を書いたことだ」とも言う。このことだけでも、飯島氏がいかに各紙の政治部記者に影響力を持っているかがわかるが、加えて飯島氏がマスコミに強いのは、政治家のスキャンダルを売り物にしている週刊誌記者とのコネクションがあることだ。「若い編集者やフリーライターまで彼のもとに出入りしていて、政治家や官僚にとって致命傷になりかねない醜聞をいち早く入手できるパイプを持っているのが強みだ」
(http://www.mail-journal.com/20010509.htm)

B層と呼ばれる人たちが、郵政民営化の意義も目的も分からないまま、盲目的に小泉政権を支持していた、その裏で小泉・竹中・飯島らが行っていたのは、アメリカに対する売国であり、その結果、日本の内需を支えていた中間層は破壊され、派遣労働者を簡単に切って捨てる冷酷な格差社会と、たくさんの自殺者と、就職も結婚もできない若者を作り出すことになりました。あの時小泉政権を支持していた人たちは、自分で自分自身や自分の子どもたちの首をしめていたことに気づいていたでしょうか。

この飯島勲が、現在安倍政権の内閣官房参与を務めています。安倍政権は、みなさんもよく御存知の通り「安倍首相VSマスコミ」という二項対立を強調し、国民の支持を集めていますが、「小泉劇場」と酷似したこの「安倍劇場」の演出を行っているのは、当然、飯島勲その人であると考えるべきでしょう。広いマスコミ人脈をもつはずの飯島勲という人物が内閣官房参与を務めている安倍政権が、どうしてマスコミからバッシングを受けているのか。全ては、国民の盲目的な支持を煽るための自作自演の演出である可能性に、どれだけの人が気づいているでしょうか。

安倍政権と、小泉政権を比較すると、飯島勲と竹中平蔵という小泉政権の二人の最重要な立役者が、現安倍政権内で働いている事実を見ても、安倍政権が公共投資に積極的なケインジアン的な要素を強めたという点を除いては、本質的には、それほど違いがないことが伺えます。

安倍政権と小泉政権は次の点で共通しています。

・対米従属的である。
・親韓である。
・中国・北朝鮮には敵対的である。(冷戦的二極対立の図式)
・新自由主義を支持し、規制緩和とグローバリズムを推進しようとする。

特に、私が安倍政権の問題点と考える物は次の点です。

・中国に対しては、冷戦的な二極対立に中国を追い込んで、煽るべきではなく、世界の多項の中の一つの項として平和的に封じるのが最も正しい。(一極VS多極の構図)
・麻生氏の「自由と繁栄の弧」構想が「一極VS多極」的図式で平和的に中国を囲い込む戦略であるのに対し、安倍氏の掲げる「セキュリティダイヤモンド構想」は、二極的、二項対立的、善悪二元論的であり、中国を過度に刺激しやすく、アメリカやオーストラリアの同意や積極的な参加を取り付けるのも困難である。
・「戦後レジームからの脱却」とは「冷戦体制からの脱却」をも含んでいるはずだが、冷戦的二極的な図式で外交戦略を描こうとするのは自己矛盾である。
・冷戦が終わって20年以上が経過する現在、日本と半島の間に横たわるのは、あくまで「文明の衝突」であり、韓国と北朝鮮を冷戦的イデオロギーによって二分し、片方に加担するのは正しい外交姿勢ではない。自民党政権による韓国への伝統的利益供与は日本の首をしめてきたことを反省し、方向転換を計らなくてはならない。
・冷戦体制に酷似した二項対立の対中戦略は、日本の過度の対米従属と、米国への利益供与の必要性を招く
・対米従属が新自由主義的な路線と重なる時、TPPへの参加と道州制の導入は避けがたい選択肢となる。

現在までに既に明らかになってきている安倍政権の進行方向の延長線上に位置するものは、TPPへの参加と道州制の導入です。参院選までは、安倍政権は、TPPへの参加について曖昧な態度を取りつづけると思いますが、参院選終了の早い段階で、安倍政権がTPP参加に踏み切ることはほぼ確実と見なしてよいと私は思っています。

自民党内にはTPPに反対する議員も多くいますが、多くの自民党内の議員が反対していた郵政四分社化が強行されたのと同じプロセスで、TPP参加も強行されると思います。

2004年当時、自民党議員には「四分社化」が外資への売却要件であることがわかっていた(神州の泉)

ここでとても興味深いことを指摘する。実は、2004年当時は四分社化案はかなりの自民党員に懐疑的にとらえられていた。10月15日、自民党合同部会の最初の議論において、与謝野馨氏ら政調執行部は、党の公約としてマニフェストに書いてあるからと、民営化を前提として議論すべきだと意見を提示したが、小林興起議員がこれに待ったをかけた。彼の言う、政府は党を無視して勝手に基本方針を作ったという反論を皮切りに、政府案への反対論が続出した。結局、政調会長や座長を除き、一般議員の席には民営化賛成論者が一人もいなかったそうだ。

 特筆すべきは、この合同部会の議論で「分社化=外資への売却」論が出ていたことだった。岩崎忠夫、小泉龍司衆院議員らが「分社化したら郵貯や簡保だけを外資に叩き売ることができる。日本の貴重な金を外資に渡すのは売国の行為だ」と指摘しているのだ。結局、合同部会の会議での議論の方向は三事業の分離化を絶対条件とした小泉氏の思惑からは大分隔たって、公社のままで改革、三事業一体化の堅持という意見が多数出た。これに対し、小泉氏やイエスマンの武部勤幹事長は解散風を吹かして党員を脅かしている。

 しかし、この当時の自民党議員がほとんど反対だった郵政民営化が、いつの間にか騒がれもせずに結果的に賛成に覆されてしまっていた。小泉首相は翌年、1月21日の通常国会冒頭の施政方針演説で、郵政民営化の四分社化を明言している。私は外部から相当強い圧力があったと思っている。まあ、推測でしか言えないが、USTR(米国通商代表部)、ACCJ(在日米国商工会議所)、米国大使館辺りから強い圧力をかけられていたと思う。なぜなら、郵政民営化は米国の対日戦略なのだから。この当時の小泉氏が異常なカリスマ性を帯びていたとしたら、それは有形無形のアメリカの下支えが小泉氏に働いていたからだと思う。自民党員は小泉氏や竹中氏の背後霊として君臨するアメリカに恐怖を抱いていたと推測する。現実には横田幕府が睨みを利かせていたのかもしれない。

こういうことはメディアは絶対に報道しない。この当時、世間に流布され注目されたことは「郵政の民営化は是か非か」という単純な二元論だけだった。四分社化の意味などはいっさい表に出ていなかったと思う。

国民の盲目的な小泉政権への支持が、郵政四分社化に拍車をかけたように、TPP参加に拍車をかけるのは、安倍政権への国民の盲目的な支持です。さりとて、TPPに反対している政党がほとんどないため、自民党以外を選ぶことも私たちにはできないのですが・・・

アベノミクスは円安と株高といううれしいニュースを私たちにもたらしていますが、ここでも単純に喜ぶ代わりに私たちは頭を使って考えるべきです。「五年間で米国の輸出を倍増させる」政策を2010年に打ち出し、ドル安政策を採用して、現在もゼロ金利と量的金融緩和を続けているオバマ政権が、なぜ現在の円安を容認しているのかを。何の見返りもなく、米政府がオバマ政策の障害となる円安を容認するとは考えられませんが、その見返りとは一体なんなのでしょうか。

追記: 飯島勲氏は、次のように道州制に反対する論文をプレジデント誌に掲載し橋下徹を批判しています。ここでも是は是、非は非とし、特定人物の全否定や全肯定に陥るべきではないと思われますが、彼は自民党が道州制を公約に掲げていることについてはどう考えているのでしょうか。

維新八策のゴール「道州制」は日本を滅ぼす


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2013年1月16日 (水)

皮を剥ぐアメリカ、肉を食らうロシア、骨の髄に食い込むシナ

アメリカの侵略は資本を押し立てて行われる「資本による侵略」であり、ロシアの侵略は「武力による領土侵略」であり、シナの展開は「民族移住的な侵略」である。

長野朗(ながの・あきら、1888~1975年)という中国専門家が戦前に執筆し、戦後GHQによる焚書の対象となった書物が、西尾幹二先生により『GHQ焚書図書開封7 ~戦前の日本人が見抜いた中国の本質』として再刊されていますが、その書物からの引用です。

アメリカの侵略は「資本による侵略」であり、支那の展開は「民族移住的な侵略である」という指摘は現在のアメリカや中国にそのまま当てはまるのではないでしょうか。

昨日の記事で、中国の問題に対しては、

アメリカVS中国

という冷戦構造の焼き直しのような二極対立を期待して、アメリカ陣営に日本を組み込むことで日本の安全を確保するという方法はもはや有効でないという持論を述べましたが、この点についてもう少し考察を深めてみたいと思います。

元外交官の孫崎享氏(この方は竹島問題や尖閣問題について、ずいぶん知識を欠いた発言をしており、その意見の全てに賛同できるわけではないのですが)、次のようなことを述べています。

今一度何故安倍首相が米国で不人気か整理しよう

多くの人は安倍首相は米国に大歓迎されると思っていた。

 少なくとも自民党はそう思っていた。選挙公約では「外交を取り戻す」の標題の下、「日米同盟強化の下、国益を守る主張する外交を展開します」とうたった。

 しかし、どうもおかしいのである。

 安倍氏が一月訪米を言っても、オバマ大統領は、「はいどうぞ」と言わない。

 それだけではない。

 安倍首相批判の声が米国等から聞こえてくるのである。

 すでにニューヨーク・タイムズ紙等3つの重要な論評が出た。

 ニューヨーク・タイムズ紙は1月2日付の社説で、「日本の歴史を否定する今一つの試み(Another Attempt toDeny Japan’s History)と題して安倍晋三首相が従軍慰安婦問題でのいわゆる「河野談話」を見直す考えを示しているとしたうえで、「日韓関係を悪化させる恐れがある深刻な過ち」と非難した。

 また発行部数は約160万部、その約半分を北米、主として米国が占める英国エコノミストは1月5日付で、「国(日本)の危険なほどナショナリスチックな新内閣はアジアが必要とする最後のもの(The country’s dangerously nationalistic new cabinet is the last thing Asia needs)」という論評を掲げた。

また13日NYTで米国の著名な経済学者クルーグマンは「Japan Steps up」の標題で論評を書いているが「自民党勝利は何十年にもわたり日本を間違った方向に導いた”(絶滅)恐竜”の復活と広く見られた。日本通は安倍氏を良い人間(good guy)とみるな、彼の外交政策はすごく悪い(very bad)、景気刺激策はばらまきというなどを紹介している(この論文は日本の財政出動が成功する可能性があることを主目的としているが、その中でワシントンの空気を紹介している中で出てくる)。

どうしてこんなことが起こっているのであろうか。

実はオバマ大統領を誤解している。

オバマ大統領は日本にさして関心がない。多くの懸案に忙殺する中で、日本は米国の産軍複合体を中心とするグループに好きなように任せている。このグループは中国の脅威を売り込み、自衛隊の米軍隷属化、軍備費の増大を目指している。尖閣諸島の緊張もそのために作り出された所がある。

しかし、日本との関係が中国など他国に影響を与えるなら話は別だ。

オバマ大統領は基本的に産軍複合体とは別の方向を目指している。イラク戦争の撤退を実現し、今また国防費の削減を意図している。そのなか、ヘーゲル国防長官を指名し、議会と戦う姿勢を見せている.

こんな中、「集団的自衛権をみなおしますよ、イラク戦争やアフガニスタン戦争に自衛隊を送りますよ」と言ってもオバマ大統領が喜ぶはずがない。

従来産軍複合体を基盤とするジャパンハンドラーが日本を扱ってきた。彼らの言うことが米国と思った。しかし、今日米国にとって中国は極めて微妙な問題である。対中政策については、軍事面で対決を主張する産軍複合体と、協力関係の構築を模索する金融・産業グループの均衡の上にある。日本ごときでこのバランスをこわされてはかなわない。

更に日本の金融政策では円安、財政出動には疑問の声がある。円安は新たな為替戦争に向かう可能性を内蔵している。

米国はちょっと困っているのである。

野田首相のようにすべて丸のみの方が都合がよかった。

「何か変な声が聞こえてくるよ」の戸惑いである。
 私は米国から全面的に支持される首相が望ましいといっているわけではない。むしろ批判されるくらいの自主性をもってほしい。
 しかし、集団的自衛権など外交・安全保障政策で基本的で従米路線をとり、それを政権の支えとしようとする安倍政権にとってはマイナスであろう。

冷戦体制では、アメリカとソ連の対立は、資本主義と共産主義という絶対的に相容れないイデオロギーの対立に基づいており、米ソは共存することが原理的に不可能な不倶戴天の敵同士でしたが、現在のアメリカにとっての中国は、産軍複合体のように比較的強硬なグループもあるものの、アメリカ全体としては、決して、中国に対して敵対的というわけではなく、むしろ友好関係を維持し、共存共栄の関係を維持したいと願ってます。

アメリカ在住のジャーナリストの冷泉彰彦氏は、アメリカ人のもつ中国観について、2011年に、次のように述べています。

対中強硬姿勢(?)に傾くオバマ、米世論はどうか?

軍事戦略上のアジア重視発言、オーストラリア北部への海兵隊駐留と、オバマ=ヒラリーは対中強硬姿勢を打ち出しているように見えます。では、アメリカの世論は中国に対してどんなムードなのでしょうか?

 まず、現在のアメリカは雇用問題に苦しんでいるわけで、政治的にも社会的にも失業率の改善が最優先課題になっています。先週まで全米で続いていた「格差是正デモ」にしても、その要求の核にあるのは雇用、つまり「職寄こせデモ」だったわけです。どうしてアメリカの雇用が失われたかというと、それは空洞化したからであり、その空洞化に伴って雇用が移転していった先として中国が大きい存在だということも広く認識されています。

 では、80年代にアメリカが日本のことを「異質論」から見て危険視したような、中国経済脅威論というのはアメリカにはあるのでしょうか? 議会の論戦などを通じた「言葉の綾」としてそうした言い方をする場合はゼロではありません。ですが、中国経済が脅威であり、異質だとか、不公正だというような非難の空気は実はあまりないのです。

 というのは、80年代の日本との「貿易摩擦」とは質的に異なるからです。かつての日本は、独自ブランドと独自技術を前面に出して、アメリカのライバル企業を倒して行きました。オイルショック後の低燃費競争に乗じてデトロイトの「アメ車」を斜陽産業に追いやるだけでなく、TV製造というビジネスでは、GEやRCAを追い詰めて「米国産TVゼロ」というところまで持っていったのです。

 ですが、現在の米中貿易というのは、例えばアップルが生産を中国企業に委託しているように、ウォールマートなどの量販店が廉価品の仕入先として中国を「世界の工場」として活用しているように、アメリカ側に「ビジネスの敗者」はいないのです。逆に、航空機、自動車、医療機器といったアメリカが競争力を持っている分野については、中国は規模の大きな得意客であるわけです。

 その結果として、保守カルチャーの側は、ビジネス界を中心に「ウィンウィン関係」だという認識を強めていますし、今回の共和党の大統領候補選びでジョン・ハンツマンという親中派候補が全米に認知されているということにもなるわけです。

 では、中国人や中国系アメリカ人のイメージはどうかというと、これは日本人や日系人に比べて圧倒的に数は多いにも関わらず、存在感は静かです。例えば「顔の見える有名な中国人」というのは、俳優のジャッキー・チェン、バスケットのヤオ・ミン、クラシックのピアニストであるラン・ランぐらいでしょう。カルチャーについて言えば、京劇がたまに公演に来るぐらいですし、中華料理は大変に普及していますが完全にアメリカナイズされており、どちらかと言えば忙しい時に食べる庶民的な食べ物というイメージを持たれています。

 周囲を見渡せば、確かに中国系は多いが多くは模範的なアメリカ人だし、中国から来る留学生やビジネス関係の人々も普通に英語を話すので違和感はない、そんなイメージもあります。せいぜいが、「タイガーマム」と言う言葉に象徴されるように、極めて教育熱心な家族が多いということが意識されるぐらいで、取り立てて大きなプラスのイメージも、マイナスのイメージもないように思います。

 そんなわけで、中国のカルチャーや人々がアメリカに対して行使している「ソフトパワー」というのは、いわゆる「クールジャパン」現象で日本が持たれているような「プラス」の影響力はない代わり、特段の「マイナス」というイメージも持たれていないように思います。

 勿論、南スーダンで見せたような中国の外交姿勢、特にロシアと組んで米欧の動きの足を引っ張るような行動パターンには、かなり頭に来ている人もいますが、そうした声の多くは「ニュース中毒」の一部の人々であり大都市の民主党支持者が中心です。また、中国が「反テロ」の錦の御旗に公然と反抗したり、アメリカの警戒している核拡散に甘い姿勢を取るようですと、アメリカの世論は硬化する可能性は勿論あります。ですが、今現在の動向としては、そうした臨界点はまだまだ先と思います。

 そんなわけで、平均的なアメリカ人の対中イメージというのは、非常に冷静だということが言えると思います。対中イメージが冷静であればこそ、オバマ=ヒラリーは南シナ海を舞台に「節度ある冷戦もどき」のゲームが可能になるということが言えます。

 その「節度」ということについて言えば、今回ヒラリーがミャンマーを電撃訪問したあたりに見て取ることができます。ミャンマー軍事政権がスー・チー女史の復権を認めたり、軟化を見せている背後にはスポンサーである中国の意志があるわけですが、ヒラリーがミャンマーを訪問したというのは、中国の合意の下で進んでいる「軟化」を評価するという姿勢がハッキリあるわけです。

 つまり、中国を全面的な「封じ込め」の対象として見ているのではなく、様々な面で国際的なルールに則した行動をというメッセージを中国に対して送り続ける、それがオバマ=ヒラリーの立場だということなのです。アメリカの対中国戦略は、冷静な世論に支えられた原則論が中心であり、危険なレベルまで緊張が拡大するという可能性は少ないと思われます。

冷戦の時、アメリカがソ連から核の傘で日本を守ってくれた、そのときの成功体験が、私たちの意識の中に染み付いており、今回も、アメリカが中国から日本を守ってくれることを期待しがちですが、以上のように、それほど反中的ではない米国の世論を考慮にいれても、

アメリカVS中国

といった冷戦構造に似た二極対決を期待し、アメリカに経済的な利益を差し出すことと引き換えに、日本を守ってもらおうとすることがもはや有効な策ではないことは、明らかであると思います。

対米従属的な日米関係を維持していくことが、今後、長期的には、日本の国益につながらないもう一つの理由として、中国による「民族移住的な侵略」という点が挙げられます。現在、中国系アメリカ人の数は、380万人。アメリカの人口の約1.2%に過ぎませんが、この数は、10年で約100万人ずつ増えてきています。今後も中国系アメリカ人の数は増え、それに従いアメリカの要職に就く中国系アメリカ人の数もじわじわと増えていくことでしょう。それにともない中国本土とアメリカのつながりも深まりこそすれ、敵対的な関係にはますますなりにくくなっていくでしょう。

(ちなみに、韓国系アメリカ人の数は、170万人。10年で35万人増えました。一方、日系アメリカ人は、76万人。この数は年々減少してきています。1945年ごろのアメリカの白人アメリカ人の比率が約90%を占めていたのに対し、現在は72%まで減少しています。現在でさえ、中国系、また韓国系アメリカ人がアメリカで展開する反日プロパガンダに私たちは悩まされているわけですが、中国人や韓国人の人数が今後増加していくにつれて、アメリカが反日国家化していく傾向は今後ますます強まっていくと思います。)

移民国家であるアメリカやカナダやオーストラリアが、多かれ少なかれ中国化していくのは時間の問題であり、私たちがアメリカやオーストラリアのつもりでつきあっていたこれらの国が、いつのまにか「中国」になっているという可能性は、50年や100年という時間のスパンで考えるならば十分起こりうる現実であると思います。そのとき日本を待っているのは、中国人による「民族移住的な侵略」によって、いつのまにか「中国」と化した「アメリカ」や「オーストラリア」によって、東からも西からも南からも囲い込まれているという笑えない未来です。この点からも、中国の脅威を理由に、アメリカへの傾斜を強めていく戦略が有効でないことは明らかであると思います。

アメリカVS中国

このような単純な二極対立を期待する人たちは、アメリカ自体が中国化しつつあるという現実をどのように理解しているのでしょうか。50年後、100年後までの人口動態を考慮に入れているでしょうか。

次第に中国の一極支配が進んでいくであろう、これからの世界情勢の中では、二極対立ではなく、

一極VS多極

という構図を描き、これを保持することが周辺諸国としては必須の課題であり、そのために日本に求められるのは、対米従属的な悪しき外交慣習を捨て、二項対立的な図式で中国を煽ることなく、平和裏に粛々と軍備の増強を押し進めること、そしてアメリカにも中国にも加担することなく、中立的に、静かにしかし毅然として立ち続けるのに必要十分な核武装も含めた武力を手に入れ、国家としての独立をなるべく早い段階で実現すること、国家としての障壁を取り外すのではなく逆にこれまで以上に高くしていくことであると思います。

そのためには、いかに私たちが、戦後体制的な対米従属の意識、また冷戦構造的な二極化した世界を描こうとする意識を抜け出して、独立国の国民としての気概をとりもどすことができるかにかかっていると思います。日本には中国にない多くの美徳と長所がありますが、一つだけ中国にあって日本が決定的に欠いているものがあります。それは国家としての独立です。

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2013年1月15日 (火)

一極vs多極

三橋貴明氏のブログに、TPP問題で名高い評論家の中野剛志さんの大変示唆に富む文章が紹介されていますので、引用させていただきます。

世界情勢の変化に対応を

(中野剛志 評論家)毎日新聞 1月7日朝刊

 第2次安倍晋三内閣は、民主党政権下で混乱した外交・安全保障を立て直すべく、日米同盟の強化を打ち出した。それ自体は正しい。ただし、第1次安倍内閣の頃の外交戦略を復活させるだけでは不十分だ。なぜなら、当時と現在とでは、世界情勢は大きく変化しているからだ。

 第一に、世界経済の構造が全く異なる。2008年のリーマンショック後、米国は世界経済を牽引できなくなり、欧州はユーロ危機に陥り、欧米への輸出に依存していた新興国の成長も著しく鈍化した。この変化に伴い、各国は経済戦略を大きく転換している。
 例えば、第1次安倍内閣当時、米国はドル高を容認していたので、日本は円高による輸出主導の成長が可能だった。しかし、現在の米国は輸出拡大と製造業復活による雇用創出を掲げ、ドル安を志向している。第2次安倍内閣が円安の誘導による輸出主導の成長を目指すなら、それは米国の方針と対立することになる。

 第二の変化は、米国の覇権国家としての地位の喪失である。
 昨年末、米大統領の諮問機関である米国国家情報会議は、報告書「メガトレンド2030」を公表し、中国が20年代に米国を抜いて最大の経済大国となり、米国は覇権国家ではなくなり、「世界の警察官」たり得なくなると予測している。米国政府機関自身が、米国が覇権国家としての地位を失う可能性について言及したことの意義は大きい。ところが政治学者のプレマー氏は、世界はすでに覇権国家も主要国の国際協調(G7やG20)も存在しない「Gゼロ」になったと論じる。確かに、米国は不安定化する中東情勢から手を引き、北朝鮮のミサイル発射実験すらも阻止できない。G20体制は、気候変動問題やユーロ危機など、グローバルな課題を全く解決できない。かといって代わりとなる覇権国家や国際体制はない。国際政治経済学の覇権安定理論によれば、開かれたグローバル経済は、秩序を守る覇権国家のリーダーシップがなければ、存続し得ない。19世紀にはイギリス、20世紀後半以降はアメリカが覇権国家として君臨し、開かれたグローバル経済の秩序を維持した。1930年代の世界恐慌は、英米が覇権国家としての役割を果たさなかったために起きた。今日の世界が、斬権国家なき「Gゼロ」だということは、グローバル経済の200年の歴史が終わったことを意味する。プレマー氏や米国国家情報会議は、食糧、エネルギー、水を巡る地政学的な争奪戦を予告している。この事態に対し、安倍政権はどんな戦略で対処しようとしているのか。

 第三の変化は、米中の軍事バランスである。複数の安全保障の専門家が、この10年で中国の軍事力が飛躍的に強大化したことで、アジア太平洋地域における米中の軍畢力が拮抗しつつあると指摘している。尖闇諸島を巡る中国の挑発も、この米中の軍事バランスの変化を反映したものだ。
 オバマ政権はアジア回帰の外交戦略を打ち出したと言われる。だが、11年のクリントン国務長官の論文は、米国が中国市場に輸出し、中国が米国市場に投資するという互恵的な米中経済関係の構築を提唱している。「アジア回帰」は、中国封じ込めという趣旨では必ずしもないのだ。
 著名な国際政治学者のキッシンジャー氏は、米中は経済的な協力関係を構築して安全保障面での衝突を回避すべきだと主張する。オーストラリア国立大学のホワイト氏は、米国が中国と戦ってでも守るべき利益はアジア太平洋地域にはないと論じる。米海軍大学のホームズ氏は、厭戦気分にある米国の世論が、尖閣諸島を巡って中国と戦う選択肢を選ぶことは政治的に困難だと言う。ランド研究所は、10~20年以内に米国が台湾海峡から後退せざるをえなくなる可能性すら示唆している。米国国家情報会議も、米中の協力関係の構築が最善のシナリオだとする。ホワイト氏は、もし米国が中国と共存しようとするなら、日米同盟は邪魔になると指摘する。国際情勢が大きく変わったのだ。戦後日本の外交・安全保障戦略は、米国の軍事力に依存し、日米関係を悪化させないためには米国の経済的な要求でも呑むというものだった。しかし、米国の覇権的地位の喪失や米中の軍事バランスの変化により、日米同盟の有効性が低下し、米中が接近するのだとするなら、日本は大きな方向転換をしなければならない。日米同盟の強化は確かに必要だが、それは日本が防衛力を強化し、米国と対等な関係になることによってでなければならない。米国の経済的な要求を呑んでも、もはや安全保障の見返りはないのだ。
 日米同盟の無効化や米中接近など、想像しがたいかもしれない。しかし、40年前にもニクソン大統領(当時)が中国を電撃訪問する「ニクソン・ショック」があった。当時も、米国の国力の低下や世界経済の変化といった転換期だった。世界情勢の大きな変化をつかみ損ね、従来の対米依存路線を怠惰に続けるなら、日本は再びショックを受けることになろう。

 

親米保守は保守かという記事でも意見を述べましたが、中野氏の書かれていることに同意いたします。安倍政権に従来型の日米同盟の再構築を期待し、それによって「対中包囲網」を形成しようとするならば、日本は大きく進路を誤ることになるでしょう。

WJFは次のブログに述べられている意見にも同意します。

ミサイル屋と安倍首相が会食した件 それから問題の「安倍論文」

このようなゴリゴリのネオコン集団に取り囲まれた安倍政権。
日本はよせばいいのに、進んでアメリカの対中包囲網の一翼を担うという立場を買って出るという大馬鹿な選択をするようです。バカだなあ。バカですよ本当に。

日本は進んでアジアの安全保障問題を中国封じ込め問題として定義し、その役割を自ら買って出るというのですよ。周りの東南アジアの国家が「日本がアメリカ、豪州と一緒に面倒を引き受けてくれた」とホッとしているのは間違いありません。これがアメリカのオフショア・バランシング戦略だということは感のいいこのブログの読者は気づいているでしょう。

アメリカは軍事予算を削減して財政削減するので、安全保障負担は同盟国に負わせる一方で、その同盟国にはアメリカ製の武器を買わせる。これがオバマ政権二期目のアジア外交戦略です。そんな単純化していいのかと言うかもしれませんが、いいのです。単純なことこそ正しい。オッカムの剃刀です。


日米安保体制を作った吉田茂元首相は色々と最近は批判はありますが、アメリカに安全保障上の負担を押し付ける(バックパッシング)という素晴らしい国家戦略を編み出した偉大な政治家です。

安倍首相の祖父の岸信介もここまでバカではなかった。

ネトウヨとネオコンに応援されて舞い上がっている安倍首相は少しは頭を冷やしたほうがいいでしょう。これではアメリカの武器ビジネスの「いいカモ」にされて終わるだけです。

それにしても、鳩山由紀夫が総理大臣になった時に今回の安倍論文と同様に政策構想論文をアメリカの新聞が転載しました。

安倍論文と比べると鳩山論文がどれだけまともだったかがよくわかります。
しかし、鳩山論文を必死になって叩いたマスコミは今回は安倍論文については沈黙。

産経が肯定的に取り上げた他はどのマスコミも沈黙です。

このことを見ても鳩山論文騒動が外務省やマスコミ、アメリカの知日派が結託して問題化した自作自演だったことが分かるわけです。

あーあ。

冷戦構造の焼き直しのように、

アメリカVS中国

という対立する二項を立てて、アメリカ陣営に日本を組み入れて安全を計ろうという、従来の自民党外交をそのまま反映させた二極的な戦略を取るならば、柳の下にもうドジョウはいません。冷戦を生き延びたようには、今回はうまくはいかないでしょう。今回は日本が戦いの最前線になります。仮に「中国包囲網」なるものを形成しようとしても、矢面に立つのは日本であり、朝鮮戦争が日本に好景気をもたらしたように、アメリカや韓国などに特需景気をもたらすのがせいぜいではないでしょうか。

挑発に乗らず極力戦争を避けること。そして、平和を一日も長く維持できるように、アメリカや中国とは独立した一つの中立的な極になれるよう核武装も含めた力を付けることが早急に求められていくと思います。そのためにこそ、言葉の本当の意味での「戦後レジームからの脱却」と、そのための国民の意識改革が求められると思います。

国民の意識の中には、冷戦時代、アメリカに守ってもらって平和に生き延びた「成功体験」が焼き付いてしまっています。そのときと同じようにアメリカに守ってもらえるのだという期待が私たちの中に深く根付いていますが、冷戦時代のような単純な二項対立的な二極的な図式は、中華が勃興するこれからの時代には有効ではありません。あえて、これからの時代に有効な二項対立を掲げるとするならば、

一極VS多極

という図式ではないでしょうか。今後、中国の一極支配の方向へ強いモーメントが加わっていきますが、それに対して、いかに多極化した世界を保持していけるかが必要になります。そのためにこそ、「アメリカはアメリカである」「日本は日本である」「フィリピンはフィリピンである」「ベトナムはベトナムである」といった、各国が、それぞれの健全なナショナリズムに立脚して、独立する力の度合いを強めていくことが必要なのであって、冷戦時代のように単純に二極化した世界を再来させることが解決になるわけではありません。日本は自らがアメリカから自立することにより、新しい多極化の時代を牽引する役割をこそ担うべきだと思います。日本は中華という一極支配の渦のぎりぎり外側に立って独立を保持してきた長い伝統があります。日本こそが、中華にどう処すべきかを長い歴史を通じて知っているはずです。「日米同盟」に依存していればよい時代はもう終わったのです。

麻生氏の「自由と繁栄の弧」にしても、一極VS多極という枠組みで、これを捉えるならば、大変有効ですが、冷戦型のアメリカVS中国といった二項対立的な図式で、これを捉えようとすると、その効力を大きく損なうことになるでしょう。

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一極を目指そうとする「一」に対する執拗なこだわりは、中華の宿命であり、彼らにはその宿命を辿らせておけばよい。それを妨害する必要はありません。中華とアジアのトップや世界のトップを競う必要はありません。ただし、日本は、その渦に巻き込まれてはなりません。「一」を目指す中華に対して有効な対立項は、あくまで「多」であり、決してもう一つの「一」をぶつけ合わせることではありません。だからこそ二極的な構図を描くことは対中華には不適格な戦略です。「一」を愛すると同時に「多」を恐れることもまた中華の宿命です。「一」が「多」に分裂し、ふたたび「多」を強引な方法で「一」にまとめあげようとする。ギリシア神話のシーシュポスに課せられたようなやがては水泡に帰す労苦を反復することが中華の宿命ですから、日本に必要なのは、その渦の外側に黙って静かに立ち続けるに必要十分な力であり、彼らの宿命的な反復動作を急がせたり、せき止めたりする力ではありません。

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2013年1月14日 (月)

鳩山由紀夫の偉大な功績

最初に、私は民主党支持者ではないことを、明言させていただきます。

政権交代がおきた2009年夏の衆議院選挙では、他の保守の皆さんと協力して「日本を愛する日本国民の会」というグループをYouTube上に立ち上げ、民主党に投票しないように強く呼びかけた一人でもあります。

あのとき私たち保守の仲間が予測し警告したとおり、民主党政権は問題だらけの政権となりましたが、今から振り返るならば、決してその全てが問題だったわけではありません。その中には讃えられるべき大きな功績もありました。

民主党政権が終わった今、良かったことは良かったときちんと評価する客観的な視野を失わずにいたいと思い、今日は、敢えて、保守の人たちに忌み嫌われている鳩山由紀夫氏の大きな功績について記しておきたいと思います。

鳩山政権の最も大きな功績は、「年次改革要望書」を廃止したことです。

年次改革要望書とは、wikipediaの説明によると次のようなものです。

年次改革要望書(ねんじかいかくようぼうしょ)は、日本政府と米国政府が両国の経済発展のために改善が必要と考える相手国の規制や制度の問題点についてまとめた文書で、毎年日米両政府間で交換される。(中略)

由来をたどれば、1993年(平成5年)7月の宮澤喜一首相とビル・クリントン米大統領との会談で決まったものとされている。『拒否できない日本』によれば、最初の要望書は1994年(平成6年)であった。(中略)

米国側からの要望が施策として実現した例としては、建築基準法の改正や法科大学院の設置の実現、著作権保護期間の延長やその強化、裁判員制度をはじめとする司法制度改革、独占禁止法の強化と運用の厳密化、労働者派遣法改正(労働者派遣事業の規制緩和)、郵政民営化といったものが挙げられる。米国政府からの要望で実現していない項目としては、再販制度・特殊指定の廃止・ホワイトカラーエグゼンプションが挙げられるが、年次要望改革書では引き続き取り上げられている。一方、日本側からアメリカ側への要望の一切が実現されていない。

アメリカは、この年次改革要望書を通して、90年代以降、日本政府にさまざまな規制緩和や法改正を要求し、アメリカの国益にかなうように日本の国内制度を改変させていきました。年次改革要望書に書かれたアメリカの要求通り、歴代の自民党政権が受け入れてきた法改正を年代順に並べると次のようになります。

1997年(平成9年)独占禁止法が改正される。持株会社が解禁される。
1998年(平成10年) 大規模小売店舗法が廃止される。大規模小売店舗立地法が成立する(平成12年(2000年)施行)。建築基準法が改正される。
1999年(平成11年) 労働者派遣法が改正される。人材派遣が自由化される。
2002年(平成14年) 健康保険において本人3割負担を導入する。
2003年(平成15年) 郵政事業庁が廃止される。日本郵政公社が成立する。
2004年(平成16年) 法科大学院の設置と司法試験制度が変更される。労働者派遣法が改正(製造業への派遣を解禁)される。
2005年(平成17年) 日本道路公団が解散する。分割民営化がされる。新会社法が成立する。
2007年(平成19年) 新会社法の中の三角合併制度が施行される。

持株会社の解禁は、買収合戦を過熱化させ、経済のグローバル化を押し進めました。大規模小売店舗法の廃止は、弱い小売業の人たちの生活を苦しめました。人材派遣の自由化は、不安定な派遣労働で働く人々の数を増やすことになりました。唐突に導入された裁判員制度により国民はアメリカ式の陪審員制度にかり出されるようになりました。小泉政権が行った郵政民営化も年次改革要望書を通してアメリカが日本政府に要求していたことでした。第一次安倍政権が導入を進めていたホワイトカラーエグゼンプションも、年次改革要望書でアメリカが要求していたことでした。

ほとんどは、国民には何の利益もないどころか、その生活を苦しめ、アメリカを利するだけのこれらの制度改革を、自民党政権は、90年代以降、年次改革要望書を通してアメリカに要求されるまま、唯々諾々と行ってきました。

問題は、年次改革要望書の存在や、上に挙げた法改正が年次改革要望書に記されたアメリカの要望に従って行われたという事実は、マスコミによって一切報道されず、私たち国民には知らされていなかったという事実です。

90年代以降毎年続いてきた、実質上はアメリカによる内政干渉の手段であった年次改革要望書の交換を廃止したのが、鳩山政権でした。彼は、アメリカの政府高官から「ルーピー」と呼ばれ、多くの日本人もこの言葉を使って、鳩山由紀夫氏をバカにしました。彼は、「日本は日本人だけのものではない」などと述べたり、宇宙人と呼ばれても仕方のない言動も確かにありましたが、自民党政権が決してなし得なかった年次改革要望書の廃止を実現し、アメリカによる内政干渉を退け、日本の国益を守ろうしたという点は、日本の保守として客観的に評価すべきではないかと思います。

鳩山氏は、「日米同盟」を破壊した政治家として国民から強い非難を浴びたわけですが、「日米同盟」が、国民の生活や日本の国柄を破壊するような内政干渉を含んでいたとしたら、やはり、それは一度は破壊されるべきものではなかったかと思います。

新しい安倍政権が、回復し、再構築し、強化しようとしている「日米同盟」がどのような質のものになるのか。年次改革要望書を復活し、国民の生活を顧みずにアメリカによる要求を一方的に受け入れるだけの従来型の自民党政治を再開させることになるのか。それとも、悪しき自民党政治の伝統を捨て、アメリカの内政干渉をきっぱりと退けながら、日本の国益にかなう対等な関係を築くことができるのか。しっかりと見守っていきたいと思います。

民主党政権の功績としては、野田政権が領土問題で示した毅然たる姿勢も評価しておきたいと思います。自民党政権が領土問題を何十年もうやむやにして、棚上げにし放置していたのと対照的に、尖閣諸島を国有化し、竹島問題の国際司法裁判所への単独提訴を実現の直前まで押し進めたことは野田元首相の大きな功績だと思います。彼が国連で行った演説も大変立派であり、日本人として誇らしく感じました。

民主党政権は確かに問題だらけの政権でしたが、その行ったことの全てが「悪」だったわけではありません。同時に、自民党が行おうとしていることの全てが必ずしも「善」ではないことを忘れずにいたいと思います。民主党は確かに売国政党であったかもしれませんが、民主党政権時代あれほど問題になった人権擁護法案は、そもそも2002年に小泉政権が最初に提出したことをどれだけの人が知っているでしょうか。外国人参政権は、安倍首相が参院選後も連立を解く意図はないと明言している公明党が、いまだに掲げている公約でもあります。自民党も公明党も、5年以内の道州制の導入を公約として掲げています。自民党以外の政党の売国のみをあげつらい、自民党の長き売国の履歴と性向に目をつぶるのは、欺瞞でありまた危険なことではないかと思います。

自民党(善) VS 民主党 (悪)

このような単純な善悪二元論に陥ることのないように気をつけたいものです。

(年次改革要望書については、「国民が知らない反日の実態」の次のページも参考になさってください。年次改革要望書の正体)

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2013年1月13日 (日)

陰謀論者の妄言

このブログを読んでいらっしゃる方は御存知のように、アメリカに対しても、自民党に対しても、安倍さんに対しても、彼らを盲信したり、依存しようとすることに対して批判的なWJFですが、同時に、「陰謀論」と呼ばれる妄言を振り回す人たちにも私は懐疑的です。

彼らは、ユダヤ人やら、イルミナティやら、統一教会やらを持ち出して、アメリカの陰謀を警告し、中国や韓国との融和を説きます。その代表的な例として、リチャード・コシミズなる人物がいますが、WJFも次のように彼やその一派に、さんざん「似非右翼」だの「統一教会だ」なの「壷売りだ」などと批判されたことがあります。

この動画の製作者・発信者は不明ですが、他の記事や動画を見てみると明らかに「似非右翼」と言われる特殊な「組織」によるものです。GloriousJapanForeverなる人物のほかの動画も参照してください。日韓関係、日中関係の破壊を目的としたものです。 http://www.youtube.com/user/GloriousJapanForever

この類の扇動メディアにころりと騙される前に、背後関係をぜひ知っていただきたい。日本には、日韓関係を悪化させるのを役割とした「似非右翼」がいます。彼らは実は最も日本的ではない人たちです。日本には済州島系在日や部落マイノリティーといわれる人たちが少数ですが存在します。(普通の日本人は、韓国のパクリどうのこうのにはあまり関心を持っていません。あまり重要な問題ではないからです。)具体的にいいますと「統一教会」がこれらの似非右翼の中心にいます。勿論、韓国にも統一教会はありますが、韓国側のそれは日本の統一教会による韓国中傷に激しく反発する役割を演じています。つまり、日韓で同じ組織が二手に分かれて二国間関係の破壊を狙っているのです。(それに騙されて追従する日韓メディアもあるようですが。)

日本の統一教会の中枢は在日朝鮮人脈であり、統一教会そのものも北朝鮮中枢と深くつながった「北朝鮮宗教」です。文鮮明は金日成の義兄弟であり、誕生日にはピョンヤンの国王様から祝電が届き、北朝鮮のマスゲームでは文鮮明は民族の英雄として遇されています。統一教会は北朝鮮王朝の存続のために巨額の秘密支援をしてきています。(その支援は、ウォール街の金融ユダヤ人のお墨付きの下に行われています。)

リチャード・コシミズのブログ、2011年10月4日

改めて申し上げておきますが、WJFは統一教会ではありませんし、背後にユダヤ人がいるわけでもありません。どの政治団体にも宗教団体にも所属しておりません。

これらの陰謀論者の誤りは、きちんとした根拠もなく特定の考え方を宗教のごとく盲信しているということもさることながら、やはり善悪二元的な考えに陥っていることだと思います。

アメリカ(悪) VS 中国・韓国 (善)

同時に、次のような善悪二元論も正しいものではありません。

アメリカ(善) VS 中国・韓国 (悪)

いかに日本が日本として立つか、いかに日本が日本であり続けるか、いかに日本を守るか、といった問題は、これらのような善悪二元論的な考え方に立つことによっては、決して実現することはできないのだということを、私たちは気づく必要があると思います。

善悪二元論的な二項を立てて、その片方にすがったり、片方の陣営についたりしようとするのではなく、福沢諭吉が、日本が世界に向かって一歩を踏み出した明治の初めに『学問のすゝめ』で述べた言葉を、私たちひとりひとりが噛み締めることが、今、もっとも必要なことなのだと思います。

彼は、国家は独立しなければならない。そのためには、外国を恐れるのでもなく、また見くびるのでもない、二元的な態度に陥ることのない、客観的で批判的な視野を持つことが必要であると述べています。

また自由独立のことは人の一身にあるのみならず、一国の上にもあることなり。わが日本はアジヤ州の東に離れたる一個の島国にて、古来外国と交わりを結ばず、ひとり自国の産物のみを衣食して不足と思いしこともなかりしが、嘉永年中アメリカ人渡来せしより外国交易のこと始まり、今日の有様に及びしことにて、開港の後もいろいろと議論多く、鎖国攘夷などとやかましく言いし者もありしかども、その見るところはなはだ狭く、諺に言う「井の底の蛙」にて、その議論とるに足らず。日本とても西洋諸国とても同じ天地の間にありて、同じ日輪に照らされ、同じ月を眺め、海をともにし、空気をともにし、情合い相同じき人民なれば、ここに余るものは彼に渡し、彼に余るものは我に取り、互いに相教え互いに相学び、恥ずることもなく誇ることもなく、互いに便利を達し互いにその幸いを祈り、天理人道に従いて互いの交わりを結び、理のためにはアフリカの黒奴にも恐れ入り、道のためにはイギリス・アメリカの軍艦をも恐れず、国の恥辱とありては日本国中の人民一人も残らず命を棄てて国の威光を落とさざるこそ、一国の自由独立と申すべきなり。  しかるを支那人などのごとく、わが国よりほかに国なきごとく、外国の人を見ればひとくちに夷狄夷狄と唱え、四足にてあるく畜類のようにこれを賤しめこれを嫌い、自国の力をも計らずしてみだりに外国人を追い払わんとし、かえってその夷狄に窘しめらるるなどの始末は、実に国の分限を知らず、一人の身の上にて言えば天然の自由を達せずしてわがまま放蕩に陥る者と言うべし。王制一度新たなりしより以来、わが日本の政風大いに改まり、外は万国の公法をもって外国に交わり、内は人民に自由独立の趣旨を示し、すでに平民へ苗字・乗馬を許せしがごときは開闢以来の一美事、士農工商四民の位を一様にするの基ここに定まりたりと言うべきなり。

外国を恐れるのでもなく、また見くびるのでもない。外国と対等に交わる、国家の独立を実現するためには、国民一人一人が、報国の思いと、独立の気概を身につけなくてはならず、そのためには、それぞれの才覚に応じて、学問(実学と批判精神)を身につけなくてはならないと述べています。

前条に言えるとおり、人の一身も一国も、天の道理に基づきて不覊自由なるものなれば、もしこの一国の自由を妨げんとする者あらば世界万国を敵とするも恐るるに足らず、この一身の自由を妨げんとする者あらば政府の官吏も憚るに足らず。ましてこのごろは四民同等の基本も立ちしことなれば、いずれも安心いたし、ただ天理に従いて存分に事をなすべしとは申しながら、およそ人たる者はそれぞれの身分あれば、またその身分に従い相応の才徳なかるべからず。身に才徳を備えんとするには物事の理を知らざるべからず。物事の理を知らんとするには字を学ばざるべからず。これすなわち学問の急務なるわけなり。

わが日本国人も今より学問に志し気力を慥かにして、まず一身の独立を謀り、したがって一国の富強を致すことあらば、なんぞ西洋人の力を恐るるに足らん。道理あるものはこれに交わり、道理なきものはこれを打ち払わんのみ。一身独立して一国独立するとはこのことなり。

また国民一人一人が独立の精神を欠くときには、(1)愛国心の喪失(2)外国に対して卑屈になる(3)売国という三つの弊害が生まれると警告します。戦後の、そして現在の日本の姿そのものです。

前条に言えるごとく、国と国とは同等なれども、国中の人民に独立の気力なきときは一国独立の権義を伸ぶること能わず。その次第三ヵ条あり。

第一条 独立の気力なき者は国を思うこと深切ならず。(中略)
第二条 内に居て独立の地位を得ざる者は、外にありて外国人に接するときもまた独立の権義を伸ぶること能わず。(中略)
第三条 独立の気力なき者は人に依頼して悪事をなすことあり。(中略)国民に独立の気力いよいよ少なければ、国を売るの禍もまたしたがってますます大なるべし。

何かを盲目的に信じたり依存したりするのではなく、一人一人が、批判的な精神と、独立の精神を身につけてこそ、一つの国は独立を果たすのだ。この福沢諭吉の言葉を、胸に刻み、独立国としての気概を今一度、取り戻したいものです。

一身独立して一国独立す

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2013年1月12日 (土)

南と北のはざまで

社会が一つのことを信じ、一つの方向に向かっているときにこそ、それを疑い意義を申し立てる人々の存在は、社会全体としては有益なものだと思います。生物界において形質の多様性が一つの種の存続の可能性を広げるように、意見の多様性は、特に危機の時代においては、社会が存続する可能性を増大化させてくれます。

ロケットスタートした安倍政権、さまざまな成果を着実に挙げており、頼もしい限りです。しかし為政者は、しばしば十の良法の中に、一つの悪法を忍ばせるものですから、今後とも注意深い政権の監視を怠ってはならないと思います。今回も安倍政権について、あえて懐疑的な視点から、意見を述べてみたいと思います。

かねがね、私たち日本国民が、何か共通の、そして究極の課題を抱えているとしたら、それは次の一点ではないかと思っています。

日本が日本として立ち続けること。そして、日本を未来の世代に着実に手渡していくこと。

一言で言えば「日本を守る」ということになると思いますが、この究極の課題を実現するために、具体的に何を選択し、何を実行していくかが、日々問われていると思います。

どの政党に政権をゆだねるのか、誰を首相に据えるのか、どの国と同盟を結ぶのかといった問題は、それ自体に目的や意義があるわけではなく、あくまで、「日本を守る」というこの究極の課題を実現していくための手段として斟酌され、注意深く選択されていかなければなりません。

さて、安倍政権は「日本を守る」という私たちの究極の課題を、どのような手段と選択を通じて実現しようとしているでしょうか。

「韓国と価値観共通」 首相、額賀特使あす派遣

産経新聞 1月3日(木)7時55分配信  安倍晋三首相は4日、日韓議員連盟幹事長で自民党の額賀福志郎元財務相を特使として韓国に派遣する。額賀氏は朴槿恵(パク・クネ)次期大統領と面会し、首相の親書を手渡す予定。首相は今回の特使派遣で、竹島問題などで冷え込んだ日韓関係の改善へのきっかけとしたい考えだ。

 額賀氏は金星煥(キム・ソンファン)外交通商相とも会談する。自民党の河村建夫元官房長官と逢沢一郎元国対委員長が同行する。

 首相は1日、額賀氏を都内の私邸に呼び、「韓国は民主主義や市場主義など価値観を共通する隣国だ。日韓両国とも新しい政権がスタートすることになるので、良い船出にしたい」との考えを韓国側に伝えるよう指示した。

 首相は先月19日の朴氏の大統領当選を受け、額賀氏の韓国派遣を決めた。額賀氏は同21日に訪韓する予定だったが、朴氏の日程が合わず延期していた。

竹島領有権、当面提訴せず…日韓関係改善を優先

日本政府は、島根県・竹島の領有権問題をめぐる国際司法裁判所(ICJ)への単独提訴を当面、行わない方針を固めた。

安倍首相は、韓国の朴槿恵次期大統領との間で日韓関係の改善を目指しており、韓国の反発が予想される単独提訴は得策でないと判断した。

政府は、2012年8月10日の李明博大統領による竹島上陸を受け、対抗措置の一環として、日韓両国によるICJへの共同付託を提案したが、韓国が拒否したため、単独提訴を目指して準備を進めてきた。

安倍政権としては、ICJでの決着が望ましいとの立場は変えないものの、単独提訴は先送りし、韓国の対応を見極める方針だ。

安倍首相は、民主主義や市場経済など価値観を共有する韓国との関係を重視している。2月25日に予定されている大統領就任式に合わせて訪韓し、日韓首脳会談を行い、関係改善を進めたい考えだ。関係を改善することで、沖縄県の尖閣諸島をめぐり圧力を強める中国をけん制する狙いもある。

安倍政権は、「日本と韓国が価値観を共有している」という言葉をこれまでも再三繰り返し、この認識に基づいて、竹島問題の国際司法裁判所への単独提訴を取りやめたわけですが、「日本と韓国が価値観を共有している」という安倍氏の認識とその背後にある問題について、ここで改めて問い直してみたいと思います。

まず、日本と韓国が価値観を共有しているかという問題ですが、両国が価値観など共有しているわけがないことは、どなたもすでに御存知のことと思います。価値観を共有していないからこそ、さまざまな問題で日本人と韓国人は争ってきました。価値観を共有していないからこそ、韓国人たちは、執拗に日本を貶めるようなプロパガンダを世界中で展開してきました。価値観を共有していないからこそ、私たちが唖然とするような方法で、彼らは日本から何かを奪ったり、日本を利用しようとしてきました。日韓の間にあるのは、価値観の共有どころか、歴史的に根深い、二つの全く異なった価値観の衝突です。

安倍氏も、日韓が歴史的・文化的な価値観を共有していると述べているわけではなく、あくまで「民主主義や市場経済など」の価値観を共有していると述べているにすぎません。しかし、世界中のほとんど全ての国が民主化し市場経済を受け入れている現在、「民主主義や市場経済など」の価値観を共有していない国を見つけることの方が難しいでしょう。それにもかかわらず、民主主義や市場経済などという当たり前の価値をことさら引き合いに出して、さらには、日本が60年以上も不法占拠されている島の領土問題をうやむやにしてまで、韓国と強い同盟関係を結ぼうとする必然性はどこにあるのでしょうか。

それはおそらく、民主主義と市場経済といった価値を受け入れていない中国や北朝鮮といった例外的な国国々の存在を意識し、これらの国々を囲い込むことが目的なのでしょう。(中国に関しては市場経済は受け入れています)。

しかし、ここにも、矛盾があります。

韓国の、朴槿恵新政権に対して、「大統領職業務引き継ぎ委員会」に関係する専門家らが、最近、次のような外交方針を提言しました。

韓米同盟と韓中関係については▽韓半島危機が米中葛藤につながらないよう予防外交を推進する▽韓米同盟が中国向けでないことを再確認する▽韓日米軍事同盟を強化する米国のミサイル防衛(MD)体制に加入しないと明言するか、加入をできるだけ遅らせる 中央日報2013年1月9日

つまり、米韓の軍事同盟は、中国に向けられたものではないとする、中国に配慮し傾斜する外交方針を韓国政府自身が明確にしつつあるわけです。とすると日本が仮に韓国と軍事同盟を強化しても、対中国の安全保障上、大きな意義をもたないことは明白です。すると、安倍政権がわざわざ韓国と強い同盟関係を取り結ぼうとすることの目的は、北朝鮮一国を封じ込めるという目的しかないことになります。

しかし、ここでも理解に苦しむのは、一体、日本は、自分たちの奪われた島の問題を脇に置いてまで、なぜ南北朝鮮の争いに加わらなければならないのかということです。南北の争いに日本が加わることで、日本は、どんな国益が得られるというのでしょうか。韓国と北朝鮮の紛争は、日本にとって対岸の火事であり、あくまで韓国と北朝鮮の人々が解決すべき問題であり、日本がこれに関与することによって得られるものがあるとは思えません。どちらにも荷担したくないというのが私たちの素直な心情ではないでしょうか。あの親日派韓国人のシンシアリーさんでさえ、日韓は距離を置いた方がいいと普段からおっしゃっています。

このように韓半島の南北の対立や、日本に敵対する勢力も一枚岩ではないという事実を考慮にいれると、安倍政権に対するマスコミや韓国メディアの批判の大きさは、決して安倍政権の保守政権としての真正性の根拠にはならないことが理解できると思います。結局は、安倍政権が具体的に何を実行し、あるいは実行しないかを通して、政権をジャッジする以外にはないのではないでしょうか。

私は、「日本を守る」という観点から、政策の善し悪しをはかる物差しは、次のように考えることだと思います。

この政策は10年後、100年後、1000年後の日本人にとってよいものか。

為政者が、「日本を守る」こと、そのことだけを純粋に目指して邁進しているか。それとも、それと同時に、あるいは、それとは別に、他の目的を隠し持ったりはしていないか。どんな政治家に対しても、盲信することなく、さりとて全否定することもなく、是は是、非は非としながら、国民として、厳しく注意深いまなざしを向け続けることは、正しい政治が行われる上で必ず必要なことだと思います。

(2013年12月10日、一部修正しました)

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2013年1月11日 (金)

親米保守は保守か

民主党の売国と自民党の売国。

そもそも日本を利用しようとする国や勢力は、与党の政治家にアプローチをしかけて、取り込もうとしますし、実際に売国的な政策を実行に移せるのも与党の座にある政党ですから、当然のことながら、与党の時代が長い政党ほど、売国の度合いは強まります。

中国、韓国への資金や技術の垂れ流し、それによる中国の軍事増大化、自衛隊の軍事費の削減、領土問題の長年の放置、歴史問題の不必要な政治問題化、規制緩和による外資への利益誘導、構造改革による格差社会の悪化、緊縮財政と消費税増税によるデフレの悪化、一千万人移民計画とそれに基づく国籍法改悪、日韓スワップ・・・枚挙にいとまがありませんが、これらすべて自民党が行ってきたことであり、他の政党が行ってきたことではありません。疑いの余地なく、量においても、質においても、これまでに自民党が行ってきた売国行為を超える売国を行った政党は日本の戦後史に存在しません。

民主党時代は、さんざん民主党政権は朝鮮半島とのつながりの深い売国政党であると批判されていましたが、単純に日韓議員連盟に所属する議員の数を比較するならば、wikipediaの記事によれば圧倒的に自民党の方が数が多いです。

しかし、それにもかかわらず、民主党の売国ばかりが強調して語られたり、自民党が愛国保守政党であるかのように信じられたり、自民党への批判がタブー視されたり、自民党の売国行為が直視されることなく過小評価されてきたのは、なぜでしょうか。

それは、民主党の売国が、主に中国や韓国・北朝鮮に向けられていた(と信じられていた)のに対して、自民党の売国は、主にアメリカに向けられたものだからではないでしょうか。実際は民主党もその政権の後半は極めて対米従属的であり、自民党による売国行為は、アメリカに対してのみならず、中国や韓国・北朝鮮に対しても等しく行われてきたのですが、やはりアメリカに向けられた売国行為という点では、自民党ははるかに際立っています。

自民党が保守の間で人気があり、いまだに愛国政党であるかのように信じられているのは、まさに自民党が伝統的にアメリカに売国を行う政党だからであり、その対米従属的な姿勢に、人々が安心感や安定感を感じているから、と考えるのは極論にすぎるでしょうか。つまり、日本人の多くは、本当には「戦後体制の脱却」など望んではおらず、ぬくぬくと居心地のよいアメリカの属国としての地位に留まっていたいのではないでしょうか。実はそれこそが自民党に対する人気と免罪の理由であり、また民主党時代に人々が民主党に対して腹を立てていたのも、長年の米国の属国としての日本の地位を破壊され、心地のよい眠りから覚まされてしまったからだと考えるのは、あまりに辛辣な見方に過ぎるでしょうか。

ここで改めて考えてみたいのは、親米保守とよばれ、未だに多くの日本人の支持を受けている自民党のこの伝統的な外交姿勢は、本当に、保守の本道であり、これからの日本の安全を保障し、日本の国益にかなうのかという問題です。「アメリカに従属すること」、より耳障りのよい言葉づかいで言い換えるならば、「日米同盟の深化」が、本当に日本を守ることにつながるのでしょうか。

仮に、アメリカが今後何十年も、何百年も、未来永劫、世界の超大国の位置に君臨し続けるのであれば、アメリカに依存し、従属していくことは、日本の安全をこれからも保証するものであり、有効な外交戦略であるかもしれません。

しかし、仮にアメリカの力が弱体化しており、近い将来、アメリカが超大国の地位を降りざるを得ないのであるとするならば、アメリカに依存し、従属していくことは、日本の安全を保証してくれるでしょうか。そうではないと思います。没落していく大国に従属していくことは、その没落の運命をも共にしていくことを意味します。中国の元が明によって中原の地を追われ北に退いたときに、元に事大していた高麗が滅んだように、中国の清が弱体化したときに、清に事大していた李氏朝鮮が混乱に陥ったように、大国の没落はそのまま、その大国に事大していた属国の没落を意味します。

すると、将来のどこかの時点で、アメリカへの依存と従属を日本はやめなくてはならないのですが、それはいつでしょうか。

アメリカと中国の力のバランスが、近い将来逆転すると言われていますが、日本が対米従属を離脱するのは、その前であるべきか、その後であるべきか、どちらでしょうか。

仮に、アメリカが超大国の地位を中国に奪われても、東アジアから兵を引くだけでよいのであり、太平洋を隔てたアメリカ本土の安全が中国によって脅かされる可能性は極めて低いでしょう。しかし日本は違います。日本がアメリカに依存を続け、自立した力を持たないまま、アメリカが東アジアから撤退してしまうとき、日本は中国の脅威に丸裸の状態で晒されることになります。そのまま中国に併呑されたくないのであれば、当然のことながら、日本が自立した力を手にするのは、アメリカと中国の力のバランスが逆転する前でなくてはなりません。

そして、米中の力が逆転するのは、10年後であるとも、20年後であるとも言われています。いずれにせよ、それほど遠い未来の話ではありません。

中国の脅威から身を守るためにこそ、対米従属的な従来の姿勢は、もはや有効ではなく、一日も早く、その姿勢を改めて、日本が日本として自立していく方向に舵を切らなくてはならない。そのためにこそ、言葉の本当の意味での、「戦後体制の脱却」が今こそ求められているのだと思います。

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2013年1月10日 (木)

国際司法裁判所単独提訴取りやめから窺い知れるもの

安倍政権が、野田政権が進めていた竹島問題の国際司法裁判所への単独提訴をとりやめることを決定しました。

<竹島・政府先送り 県、県議ら落胆の声も>

 政府が竹島の領有権問題を巡る国際司法裁判所(ICJ)への単独提訴を当面行わない方針を固めたことが判明した9日、県内の関係者からは「事実なら残念」と単独提訴を引き続き求める声が聞かれた。

 県の担当者は「国から正式な見解は聞いていない」と語り、「事実ならば非常に残念。従来もICJへの単独提訴を国に求めており、引き続き強く働きかけたい」と話した。竹島問題に関する国の方針も改めて確認するという。

 超党派の県議でつくる「竹島領土権確立県議会議員連盟」会長の原成充・県議会議長も「政府の方針は承知しておらず、単独提訴を引き続き国に求める立場に変わりはない」と話した。その上で、日韓両国での政権交代を踏まえ「日韓の情勢を考えれば、すぐ単独提訴できないことはやむを得ない」とし、「竹島問題を解決するため日韓首脳が話し合う環境を作ることに、我々も協力したい」と語った。

 県議会は昨年12月、竹島問題について、政府が速やかにICJへの単独提訴に踏み切るよう求める意見書を可決している。(矢沢慎一)

(2013年1月10日 読売新聞)

予想通りの展開であり、この件について、もうあまり腹が立たないのですが、私たちがしっかりと直視し、記憶に留めておかなくてはならない事実は、韓国の竹島実効支配を放置し、黙認してきたのは自民党政権であるということです。

1952年1月18日から始まった61年にも及ぶ韓国による竹島の不法占拠。自民党政府は、1954年と1962年の合計三回、国際司法裁判所への付託を提案しただけであり、今日に至るまで具体的な対処は何も取ってきませんでした。韓国の竹島の実効支配は、次のようなプロセスで着々と強化されてきましたが、その度に、自民党政府は何の処置もせず黙認してきました。

ヘリポート建設 1981 
接岸施設完工 1997
有人灯台 1998
一般観光客入島許可開始 2005
統一地方選挙の投票所の設置 2006

竹島.comより 

何の対処も取らないだけならまだよいのですが、さらにひどいのは、自民党が積極的に竹島問題の取り組みを妨害したり、韓国の実効支配をむしろ支援するようなことを行ってきた事実です。島根県「竹島問題研究会」座長であり、竹島問題研究の第一人者、拓殖大学の下條正男教授は、下のインタビューで次のように述べていました。

下條正男教授のインタビューから(動画は削除されています) http://www.nicovideo.jp/watch/sm18619027

1)2005年3月15日の島根県の竹島の日制定の際、政府(当時の自民党)から制定を止めるよう妨害があった(20:10ぐらい)

2)2011年8月1日 新藤義孝衆院議員、稲田朋美衆院議員、佐藤正久参院議員は独島記念館のある韓国の鬱陵島を視察するため訪韓したが、入国を拒否された事件で、平沢勝栄議員は予定が入ったとして参加していないが、不参加の本当の理由は韓国元国会議長から山崎卓に止めるように連絡があり、平沢がヘタレ た。石原伸晃も仲介に入って止めた。韓国側からも止めるように森喜朗元首相(日韓議員連盟の元会長)や渡部恒三に依頼があった。森喜朗は自民党に働きかけ、自民党として視察に行く予定が個人の旅行に変わってしまった。この件については拓殖大学の下條正男教授が同年7月31日に先発隊として韓国に入国しようとして拒否されていることから本当のことであろう。(22:25ぐらいから)

3)森喜朗は2006年4月 韓国が竹島の海底地名を付ける時、境港近くに停泊していた海上保安庁の船を撤去させた。(24:10ぐらいから)

今回の決定から分かることは、自民党は何も変わっておらず、従来のやり方を踏襲しようとしているということです。

竹島問題は、日韓双方のいい分にもっともな点があるというような紛争ではありません。アメリカ人のGerry Beversさんが主宰されているDokdo-or-Takeshima?の皆さんがさまざまな資料の緻密な渉猟を通して明らかにしたように、韓国の言い分は100%でたらめであり、その占拠は完全に不法なものです。昨年の李明博による竹島不法上陸以来、国際社会の関心が竹島問題に注がれるようになりましたが、ここで日本が振り上げた拳をおろすならば、それこそ、日本の主張には理がなく、日本政府が韓国の主張を認めたのだという誤解を国際社会に多かれ少なかれ与えることになるでしょう。

さまざまな領土問題を抱える日本にとって、この問題を国際司法裁判所に単独提訴し、国際法に基づいて解決しようという姿勢を国際社会に示すことが、日本の国益に反するはずがありません。「友好な日韓関係のため」に単独提訴を止めやめるということですが、真に友好な関係を樹立するためにこそ、相手の不法な行為をうやむやにするのではなく、きちんと言うべきことは言わなくてはならないし、まげてはならないことをまげるべきではありません。まして韓国は今度は対馬の領有権まで主張し始めています。

しかし、問題なのは、竹島問題それ自身ではありません。領土問題を放置しつづけるその姿勢から透けて見える自民党や安倍政権が抱えている国家観や外交姿勢のテンデンシー(傾向)こそが問題です。外国との「友好関係」を理由に、領土を譲り渡すことをためらわない政党や政権は、他の問題についても、同じような決定や行為を繰り返しますし、実際に自民党はそのような行為を繰り返してきました。「日韓友好」を理由に、韓国の圧力に屈して、国際社会に誤解を蔓延させ、日本の名誉に大きな汚点を残すことになった悪名高い河野談話を出したのは、そもそも自民党政府です。今回も、「竹島問題を国際司法裁判所に提訴するな」というアメリカの圧力があったことが分かっていますが、外国の圧力に屈し、国家としての主体性を放棄してしまっている点は問題です。外国との友好や、外国からの圧力を理由に、民意と国益を犠牲にする政治のことを、通常「売国政治」と呼びます。そういう長年の悪習を断つことこそ「戦後体制の脱却」という言葉が意味するところのものだったはずです。

島一つなら、失ってもいいのかもしれない。しかし、今回、竹島問題に関して安倍政権がみせた同じ姿勢が、「日米友好」や「自由貿易」を名目に、TPPや道州制という問題で反復されるとき、失うのは島一つではすみません。私たちは、主権を失い、未来を失い、歴史を失い、そして国を失います。

私たちが認めなければならない事実は、過去に一千万人移民計画を掲げたり、国籍法を改悪したり、現在も道州制を公約に公然と掲げるような自民党という政党を、単純に「愛国保守政党」などと呼ぶことはできないということです。私たちは、黒いものを見て、白だといいはるべきではありません。

しかし、自民党がいくらだめだからといって、TPPに関しては、他の政党を選ぶというわけにはいきません。他の政党もTPPを支持しているからです。幸い自民党の中にはTPPに反対する多くの議員たちがいます。彼らに強く、強く呼びかけていくことが、今後、一層求められていくと思います。

特定の政党を盲目的に、全否定したり、全肯定するのではなく、有権者として政治家としたたかに向き合い、彼らを馬のように鞭打ち、上手に乗りこなしていく必要があると思います。そうしなければ、政治家は、あまりに容易く、私たち日本国民以外の国や勢力に乗りこなされてしまいます。

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2013年1月 9日 (水)

「戦後体制」とは何か(3)

昨日

戦前 (善) VS 戦後 (悪)

あるいは、

戦後 (善) VS 戦前 (悪)

という、善悪二元論的な枠組みで考えるべきではないと書きました。

私たち日本人のそれぞれが、それぞれの時代を一生懸命生きようとした事実に、良いも悪いもないと思うからです。

しかし、その一方で、日本が戦争に追い込まれ、爆弾を落とされて焼け野原になり、原爆によって多くの同胞が焼き殺され、ついには敵に膝を屈し、戦勝国によって国のリーダーたちが「戦争を計画した罪(平和に対する罪)」などという前代未聞の罪を着せられて戦犯として処刑されるのと引きかえに、私たち一般の国民は軍国主義の犠牲者として免罪され、戦勝国を解放者として感謝することを教えられ、転向を余儀なくされ、新しい憲法と歴史をあてがわれ、武器をもぎ取られ、戦勝国の価値観と意思を唯々諾々と受け入れる平和国家となり、周辺国からは領土を奪われ、あることないこと罪を着せられても反論もできず、主権といっても名ばかりであり、実際は戦勝国の掌の上で自在に操られながら戦後と呼ばれる時代を生き延びてきた事実は、やはり胸をかきむしられるような忸怩たる思いがいたします。

このような国のあり方は一日も早く「脱却」しなければならないものであることは言うまでもありません。

事大主義的な大国への従属と依存の恐ろしい点は、一旦その状態に陥り、人々が独立の気概を失うと、そのことが次の新しく勃興してくる大国への事大の姿勢を準備してしまい、次から次へと連鎖して、未来永劫、なかなか抜け出すことができなくなることだと思います。

このことは朝鮮の歴史を振り返れば明らかです。元に事大した高麗は、明が興ると、明の軍隊を撃つように派遣されていた軍人李成桂の寝返りによって倒され、明に事大する李氏朝鮮が誕生します。明に忠誠を誓った李氏朝鮮も、新しく満州人の勢力が清を興すと、当初は激しく抵抗したものの、今度は清に事大するようになります。清が弱体化すると、今度はどの国を事大先にするかで激しい政争が起こり、ついには日本に併合されます。そして日本が戦争に破れると、ふたたび事大先をめぐって血で血を洗う争いがおき、国が二つに二分されていきました。

日本は戦後アメリカに事大しながら生きてきました。そのことは否定することのできない事実です。今後警戒しなければならないのは、言うまでもなく、中国の台頭です。米中のパワーバランスは、近い将来逆転すると言われています。そのときに、日本がアメリカに事大してきた事実は、米中の力が入れ替わったときに、簡単に中国に対する事大の関係を招いてしまう可能性があります。今度は中国によって意識変革が行われ、国のあり方も根底から変えられていくことになるでしょう。そのようなことがあってはなりません。中国の脅威があるからこそ、「日米同盟を強化する」というその場しのぎの事大主義的なやりかたで困難を乗り切ろうとするよりも、対米依存、対米従属といわれてきた戦後体制を一日も早く脱却し、真の独立国として再び立つ方向に向かって、強い逆風に耐えながらも一歩、また一歩と歩き出す必要があると思います。そして、アメリカにも付かず、中国にも付かず、日本が日本として自分の力で立つためには、やはり核武装ということを現実的な選択肢として、私たちが真剣に考え始める勇気を持たなくてはならない時に今やさしかかっているのではないでしょうか。

新政権は、本当の意味での戦後体制の脱却に向けて、歩き出しているでしょうか。そうであるならば、新政権は、内外からの激しい逆風と抵抗に見舞われることでしょう。私たちは、文字通り、命がけで新政権を支えなくてはなりません。しかし、新政権が、従来と同じ対米従属、媚中、媚韓の古い自民党政治を踏襲していくならば、私たちの鬱屈した怒りは新政権に対しても向けられていくことになるでしょう。戦後体制に留まるモラトリアムが許される時間は、私たちには、もう長くは残されていないからです。

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2013年1月 8日 (火)

「戦後体制」とは何か(2)

私たちにとって「戦後」とは何か。さまざまな角度から少しずつ、この問題を考えていきたいと思います。

『智恵子抄』の作者として知られる彫刻家で詩人の高村光太郎

今回は、彼が戦争中と、戦後に書いたいくつかの詩を通して、戦後とは何かを考えてみたいと思います。

まず次の二つの詩は、1941年12月、真珠湾攻撃の直後に作られた詩です。

十二月八日

記憶せよ 十二月八日 この日世界の歴史あらたまる
アングロサクソンの主権 この日東亜の陸と海に否定さる
否定するものは彼等のジャパン 眇たる東海の国にして
また神の国たる日本なり そを治しめたまふ明津御神なり
世界の富を壟断するもの 強豪英米一族の力 われらの国に於て否定さる
われらの否定は義による 東亜を東亜にかえせというのみ
彼等の搾取に隣邦ことごとく痩せたり われらまさにその爪牙を摧かんとす
われら自らの力を養いてひとたび起つ 老弱男女みな兵なり
大敵非にさとるに至るまでわれらは戦う
世界の歴史を両断する 十二月八日を記憶せよ

鮮明な冬

この世は一新せられた
黒船以來の總決算の時が来た
民族の育ちがそれを可能にした
長い間こづきまはされながら
舐められながらしぼられながら
假装舞踏会まで敢えてしながら
彼等に學び得るかぎりを學び
彼等の力を隅から隅までを測量し
彼等のえげつなさを滿喫したのだ。
今こそ 古しへにかへり源にさかのぼり
一瀉千里の奔流となり得る日がきた。

「鮮明な冬」というこの詩は、靖国神社の遊就館で上映されている映画『凛として愛』の中でも取り上げられています。

次の詩は、終戦の詔勅がラジオ放送された1945年8月15日の翌日に作られたものです。

一億の号泣

綸言一たび出でて一億号泣す。
昭和二十年八月十五日正午、
われ岩手花巻町の鎮守
鳥谷崎神社社務所の畳に両手をつきて、
天上はるかに流れきたる
玉音の低きとどろきに五体をうたる。
五体わななきてとどめあへず
玉音ひびき終りて又音なし。
この時無声の号泣国土に起り、
普天の一億ひとしく
宸極に向つてひれ伏せるを知る。
微臣恐惶ほとんど失語す。
ただ眼を凝らしてこの事実に直接し、
苟も寸毫も曖昧模糊をゆるさざらん。
鋼鉄の武器を失へる時
精神の武器おのづから強からんとす。
真と美と到らざるなき我等が未来の文化こそ
必ずこの号泣を母胎として其の形相を孕まん。

戦争中、彼は岩手県の宮沢賢治の実家に疎開していましたが、戦争が終わると、そのまま岩手の山中の小屋に7年間蟄居しました。彼が戦時中に書いた戦意高揚の詩が多くの若者たちを死に追いやったことを悔いての蟄居だったと言われています。次の三つの詩は、そんな蟄居中の彼が1947年に発表した『暗愚小伝』という詩集からの引用です。

終戦

すつかりきれいにアトリエが焼けて、
私は奥州花巻に来た。
そこであのラヂオをきいた。
私は端坐してふるへてゐた。
日本はつひに赤裸となり、
人心は落ちて底をついた。
占領軍に飢餓を救はれ、
わづかに亡滅を免れてゐる。
その時天皇はみづから進んで、
われ現人神にあらずと説かれた。
日を重ねるに従つて、
私の眼からは梁が取れ、
いつのまにか六十年の重荷は消えた。
再びおぢいさんも父も母も
遠い涅槃の座にかへり、
私は大きく息をついた。
不思議なほどの脱却のあとに
ただ人たるの愛がある。
雨過天青の青磁いろが
廓然とした心ににほふ。
いま悠々たる無一物に
私は荒涼の美を満喫する

真珠湾の日

宣戦布告よりもさきに聞いたのは
ハワイ辺で戦があつたといふことだ。
つひに太平洋で戦ふのだ。
詔勅をきいて身ぶるひした。
この容易ならぬ瞬間に
私の頭脳は蘭引にかけられ、
咋日は遠い昔となり、
遠い昔が今となつた。
天皇あやふし。
ただこの一語が
私の一切を決定した。
子供の時のおぢいさんが、
父が母がそこに居た。
少年の日の家の雲霧が
部屋一ぱいに立ちこめた。
私の耳は祖先の声でみたされ、
陛下が、陛下がと
あえぐ意識は眩いた。
身をすてるほか今はない。
陛下をまもらう。
詩をすてて詩を書かう。
記録を書かう。
同胞の荒廃を出来れば防がう。
私はその夜木星の大きく光る駒込台で
ただしんけんにさう思ひつめた

報告(智恵子に)

日本はすつかり変りました。
あなたの身ぶるひする程いやがつてゐた
あの傍若無人のがさつな階級が
とにかく存在しないことになりました。
すつかり変つたといつても、
それは他力による変革で、
(日本の再教育と人はいひます。)
内からの爆発であなたのやうに、
あんないきいきした新しい世界を
命にかけてしんから望んだ、
さういふ自力で得たのでないことが
あなたの前では恥かしい。
あなたこそまことの自由を求めました。
求められない鉄の囲の中にゐて
あなたがあんなに求めたものは、
結局あなたを此世の意識の外に逐ひ、
あなたの頭をこはしました。
あなたの苦しみを今こそ思ふ。
日本の形は変りましたが、
あの苦しみを持たないわれわれの変革を
あなたに報告するのはつらいことです。

高村光太郎の戦後の転向と変節ぶりをするどく批判したのが、戦争中、高村の戦意高揚の詩に強い影響を受け愛国青年として青春時代を送った吉本隆明でした。次の文章は1966年に彼が発表した『高村光太郎』という評論からの引用です。上で紹介した高村光太郎の「一億の号泣」という詩について述べています。

高村光太郎

わたしには、終りの四行が問題だった。 わたしが徹底的な衝撃をうけ、生きることも死ぬこともできない精神状態に堕ちこんだとき、「鋼鉄の武器を失へる時精神の武器おのづから強からんとす。真と美と到らざるなき我等が未来の文化こそ必ずこの号泣を母胎として其の形相を孕まん」という希望的なコトバを見出せる精神構造が、合点がゆかなかったのである。高村もまた、戦争に全霊をかけぬくせに便乗した口舌の徒にすぎなかったのではないか。 あるいは、じぶんが死ととりかえっこのつもりで懸命に考えこんだことなど、高村にとっては、一部分にすぎなかったのではないか。わたしは、この詩人を理解したつもりだったが、この詩人にはじぶんなどの全く知らない世界があって、そこから戦争をかんがえていたのではないか。

高村光太郎のように、戦後多くの大人たちが「転向」と「変節」を余儀なくされました。そして、大人たちのそのような姿に幻滅した吉本隆明のような愛国青年たちの中には、戦後、左翼思想に傾斜していく若者たちも多く現れるようになりました。さらに、吉本隆明のような左翼思想家たちの言葉は、戦後に生を受け「団塊の世代」と後に呼ばれるようになる、さらに若い世代の日本人にも大きな影響を与えていきます。

戦前(戦時中)と戦後。どちらかの時代の人々が正しく、どちらかの時代の人々が間違っていたということではなく、とにもかくにも、私たち日本人は、その各々の時代を生き延びようと懸命に歩いてきた結果、現在に至っています。

そして現在明らかになっていることは、これまで私たちが正しいと信じてきたやり方では、私たちを取り巻く問題をもはや解決できないこと。新しい時代の扉を開けなくてはならないこと。

そのためには、「戦後」を否定して「戦前」に回帰すればよいということでもなく、また「戦前」を否定して「戦後」に留まればよいということでもなく、

ここでも、大切なのは、

戦前 (善) VS 戦後 (悪)

あるいは、

戦後 (善) VS 戦前 (悪)

という、善悪二元論的な枠組みで考えないことだと思います。

新しい「日本」の姿を現出させるためには、過去のある時代の日本のあり方を断片的にきりとって、それを絶対視したり、再現すればよいということではなく、それこそ縄文時代から現在に至る日本人のすべての歩みを今一度点検しなおし、歴史の最も深い根底から、私たちのあり方を再定義していくという作業が必要になるだろうと思います。

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2013年1月 7日 (月)

私たちを誤らせる論理

日本を迷走させてきた論理があると思います。

それは

「あれか、これか」

という二元的な論理。

「あれか、これか」と対立する二項を立て、一方を善となし、他方を悪となす、単純な善悪二元論的な思考。

たとえば、「アメリカ(善)VSソ連(悪)」という善悪二元論。

たとえば、「構造改革推進派(善)VS抵抗勢力(悪)」という善悪二元論。

たとえば、「民主党(善)VS自民党(悪)」という善悪二元論。

たとえば、「自民党(善)VS民主党(悪)」という善悪二元論。

たとえば、「安倍政権(善)VSマスコミ(悪)」という二元論。

たとえば、「アメリカ(善)VS中国(悪)」という二元論。

たとえば、「中国(善)VSアメリカ(悪)」という二元論。

このような善悪二元論的な枠組みで物事を考え、「善」だと思う方を選ぶ、ということを繰り返していくかぎり、日本はいつまでも迷走を続けるでしょう。

なぜか。それは、今私たちが直面している課題は、「日本がいかに日本として立つか」「日本がいかに日本であり続けるか」「日本をいかに取り戻すか」「日本がいかに日本らしくなるか」といった課題であり、この課題は、世界を「あれか、これか」で二分して、片方の陣営に付くというやり方では絶対に実現できないからです。

この思考法のもう一つの問題点は、この世に絶対的な「善」など存在しないのに、片方を選び、他方を排することで、片方の立場をあたかも絶対的な「善」であるように、私たちが思い込んでしまいがちであるということです。それゆえに、この思考法は、大衆を一つの方向に向かわせようとするときに権力者やマスコミが頻繁に用いる思考法です。またカルト宗教の教祖たちもこの論理を使うのが大好きです。(日本の神道は多元的であり、このような善悪二元論は採用しません。日本の文化のすばらしいところだと思います。)

真の答えは「あれか、これか」以外のところにあります。

私は三橋貴明氏の本が好きで、読んで励まされることが多いのですが、彼の著書は全て、いかにグローバリズムとそれがもたらした長期のデフレと経済停滞の中で、日本の「国民経済」を復活させるか。日本を「国民国家」として維持し繁栄させるかという問題意識に貫かれて書かれていると思います。

私たちが安倍政権に期待しているのも、まさに三橋氏と同じく、日本を一つの独立し繁栄した「国民国家」として立たせてくれることであり、そのために「戦後体制の脱却」「デフレの脱却」を実現してくれることなわけですが、どうも向かってる方向が違う。

確かにアベノミクスは、金融緩和と公共事業の拡大という点では三橋氏の主張と同じですが、三橋氏が主張されているもっとも大切な「国民経済」の樹立「国民国家」の堅持という方向性と正逆の、従来のグローバリズムを推進する構造改革路線の方向に駒を進めつつあるかに見えます。

繰り返しますが「日本が日本として立つ」とか「国民国家の堅持」とか「国民経済の樹立」とか、このような私たちの究極目標は「あれか、これか」の二元的な問いを立てて、片方を選び、片方の陣営に加わるというやり方では実現できません。冷戦構造の焼き直しのような、「アメリカ(善)VS中国(悪)」という二項を立てて、「アメリカ陣営」に日本を組み込むことでは、日本の「戦後体制の脱却」は絶対に果たすことはできません。この二元論を突き抜けていくこと。そこに「日本が日本である」場所や可能性を私たちは見いだしていかなければならないと思います。

アメリカに付くのでもなく、中国に付くのでもなく、私たちが自らの力で、ただ日本として立つ方向に向かって、困難を取り除き、着々と努力を重ねていくべきだと思います。それこそが本当の意味の「戦後体制の脱却」だと思います。

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2013年1月 6日 (日)

TPP参加へ、一歩また一歩

農産輸出倍増「1兆円」 首相方針、TPP視野

安倍晋三首相は5日、経済再生に向けた成長戦略の一環として農林水産品・食品の輸出額の目標を現状の倍以上となる「1兆円」と定め、輸出拡大策を強化する方針を決めた。世界の人口増で農林水産品の需要が伸びていることから、国内市場中心から輸出の比重をより高めた農業政策への転換を目指す。貿易立国を支える一産業として農業を育成していく狙いがある。

 首相は昨年末の産経新聞との単独インタビューで、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について、「聖域なき完全撤廃という前提条件が変われば、当然参加ということも検討の視野に入ってくる」と発言した。今後、TPP参加を判断する場合には農業分野の強化・成長が不可欠であり、安倍内閣として国内市場だけに頼らない強い農林水産業を追求していく考えだ。

TPP交渉参加には容認姿勢 自民、高市氏

自民党の高市早苗政調会長は6日、フジテレビ「新報道2001」に出演し、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉参加問題について「交渉に参加しながら守るべき国益は守る。これは内閣が決めることだ」と述べ、安倍晋三首相が交渉参加を決断した場合には容認する姿勢をみせた。

 同時に「条件が合わなかったら脱退するという選択肢もゼロではない。政調の方では、守るべき国益は何か、どこまでは譲れないのかという条件を出し、これを超えたら撤退するということをしっかりまとめ上げたい」とも述べ、党としてTPP加盟の条件を取りまとめる方針も示した。

TPP参加へのシナリオは既に描かれているように見えますが、自民党は、グローバリズムを推進し、たくさんの自殺者や失業者、格差社会を作り出した小泉構造改革路線を修正していないのでしょうか。

この流れを止められるのは、私たちの声しかありません。私たちが国を失くすのは、「しかたがない」と私たちがあきらめてしまうときです。

政治家たちの真の意図は、いつも、彼らが私たち有権者に告げないことの中にこそあります。

右をむいても売国奴、左を向いても売国奴。悲しむべきことですが、これが私たちが直視しなければならない日本の現状です。

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戦後日本と朝鮮末期の酷似

戦後の日本の姿は、最終的に日本に併合されていった李氏朝鮮末期の歴史ととても似ています。

「事大主義」によって、軍事を軽んじ、ひたすら中国に頭を下げて生存を計った李氏朝鮮の姿は、「吉田ドクトリン」によって、軍事を軽んじ、ひたすらアメリカに頭を下げて生存を計った戦後日本の姿そのものです。「中華体制」の中で同一民族が良賤制度によって二つに分離していった朝鮮の姿は、「グローバリズム(新自由主義やら構造改革やら規制緩和)」の中で格差社会が広がった90年代以降の日本の姿に似ています。日本によって独立させられて建国された大韓帝国は、アメリカにより新しい憲法と歴史をあてがわれて独立した戦後日本の姿に似ています。日本の圧力を逃れようと、露館播遷を行った朝鮮王高宗の姿は、アメリカの圧力を逃れようと、東アジア共同体を目論んだり、はかない抵抗を試みてルーピーと呼ばれた鳩山由紀夫の姿に酷似しています。ロシアの南下をふせぐために必要であったとされる「日韓併合」は、「中国包囲網の形成」や「日米同盟の強化」を名目で行われる(であろう)「日米併合(TPPや道州制)」に酷似しています。ロシアに事大するか、日本に事大するかで揺れた朝鮮末期の姿は、アメリカに着くか、中国に着くかで揺れてきた昨今の日本にそっくりです。

「戦後体制の脱却」とは、本来、朝鮮の事大主義に酷似した、主体性や独立心を欠いた戦後政治からの脱却でなければなりません。TPP・道州制という名の「日米併合」は、「戦後体制の脱却」とは正反対の方向に日本を向かわせるものであり、亡国そのものです。私たちは今どちらの方向に進んでいるでしょうか。果敢な「独立」や「抵抗」の方向か、従来と同じ「依存」や「従属」の方向か。

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2013年1月 5日 (土)

ナショナリズムとグローバリズム

「少年よ、大志を抱け」の言葉で有名なクラーク博士が教えた札幌農学校で、新渡戸稲造らと共に学び、武士道精神とキリスト教を結びつけようとした明治時代の思想家内村鑑三という人物の墓が東京の多摩霊園にあります。その墓には次のように書かれています。

20130104_164505
写真はこちらのブログよりお借りしています。

I for Japan,
Japan for the World,
The World for Christ,
And All for God.

私は日本のため、
日本は世界のため、

世界はキリストのため、
そして全ては神のため

この人物がキリスト教の信仰に基づいて述べた後半の二行はともかくとして、「自分は日本のために存在する。そして日本は世界のために存在する」という考え方は、私たちにも多く学ぶべきものがあるのではないかと思います。

日本一国のことしか見えない「悪しきナショナリズム(国家主義)」は健全なものではないでしょう。日本一国を是として、それ以外の国々を非とする世界観に陥ってはなりません。私たちが日本のことを一生懸命に考えるのは、日本を守ることを通して、他の国々と協力し、日本がよりよく世界に貢献できるようにするためだと思います。

同時に「国家」というものを消し去ろうとする「悪しきグローバリズム(世界主義)」も決して健全なものだとは思われません。「国家」という枠組みは、世界のさまざまな民族や国民の文化や伝統を守る容れ物であり、器です。これを消し去ることは、長期的な視点に立てば、それぞれの民族や国民の文化や伝統を消し去っていくことにつながります。

世界のさまざまな人々が自分たちの国を愛し守る。そのことを通して自分たちの伝統や文化を守る。そして、それぞれの良さを発揮して「世界」に貢献する。そのような「良きナショナリズム(国家主義)」に支えられた、「良きグローバリズム(世界主義)」こそ、本来あるべき世界のあり方であり、人間のあるべき姿であると思います。

この意味では、ナショナリズム(国家主義)グローバリズム(世界主義)は、本来、相反する考え方では決してありません。私たちは「日本のため」に尽力することができます。そして「日本のため」に尽力することを通して「世界のため」に尽力することができるからです。

良きナショナリズム(国家主義)」は、「良きグローバリズム(世界主義)」を必要とし、また、「良きグローバリズム(世界主義)」は、「良きナショナリズム(国家主義)」を必要としています。

ここでも、「ナショナリズム(国家主義)=善」、「グローバリズム(世界主義)=悪」というような、単純な善悪二元論に陥らないようにすることが大切です。

私たちが反対するのは、TPPのように「国家」の枠組みを取り除こうとする「悪しきグローバリズム」に対してです。そして、私たちがこのような「悪しきグローバリズム」に反対するのは、自国のことしか見えない独善的な「悪しきナショナリズム」を推進するためではありません。「国家」という枠組みを守りぬくことを通して、

私は日本のため、
日本は世界のため

という健全な人間のあり方を実現し、守っていくためです。

日本という国に、世界に類を見ない顕著な特徴があるとするならば、それば、「国家」の一つの理念型(理想の形)であるということです。日本は世界最古の「国家」であると同時に、以前こちらの記事でお話したように、「国民国家」という国のあり方を、多大な犠牲を払うことによって、西洋人以外の人々にも広くもたらした世界史的に大きな貢献をなした国です。靖国神社に祀られている多くの英霊が命をかけて戦う以前は、西洋人以外の多くの人々は自分たちの「国家」を持ちませんでした。事もあろうか、その世界最古の「国家」であり、世界中に「国家」という枠組みをもたらした私たちの日本が、「悪しきグローバリズム」を推進する巨大な勢力によって、「国家」という枠組みそのものを解体させられようとしています。私たちは、この巨大な勢力と、しっかりと対峙し、「国家」の枠組みを守り抜いていかなくてはなりません。それは、私たち自身のためだけではない。自分たちの独立した「国家」をやっとの思いで手に入れることのできた、世界中の国々のためでもあります。

TPPと道州制。この二つは絶対に実現させてはいけません。

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2013年1月 4日 (金)

三橋貴明の「新」日本経済新聞からの引用

三橋貴明の「新」日本経済新聞で、ここ数日、かなり感情的にかつ辛辣になって私が述べてきたことと同じことを、とても冷静に書かれている方がいらっしゃるため、引用して紹介させていただきます。(強調はWJFによる)

【東田剛】バカな失敗から立ち直るために
FROM 東田剛

安倍内閣は、現時点であり得る選択肢の中でベストだと思います。しかし、だからと言って、その方針が全部支持できるわけではありません。

報道によれば、経済財政諮問会議に伊藤元重氏と高橋進氏が、産業競争力会議には竹中平蔵氏が委員として選ばれたそうですが、三人とも新自由主義者で、熱心なTPP推進論者です。
特に、竹中平蔵氏は、「失われた二十年」をもたらし、数多くの失業者と自殺者を出し、政治を破壊した構造改革の主犯格です。

なぜ、その彼らを登用したのか。それは、安倍内閣もまた、構造改革、とりわけTPPを進めるつもりだからでしょう。

郵政民営化が典型的ですが、経済財政諮問会議は、党の反対勢力を抑え、内閣主導で構造改革を進めるための装置です。

経済財政諮問会議の民間議員は、改革派官僚が下書きした構造改革の要望である「民間議員ペーパー」を連名で出します。これで中立な民間人を装い、馬鹿なマスコミを利用して、「民間の改革派」vs「自民党の抵抗勢力」という図式を演出し、構造改革を進めるのです。

予告しておきますが、そのうち、TPP早期参加を求める「民間議員ペーパー」が出されるでしょう。「発送電分離」とも書いてあるかもしれません。

注)発送電分離についての東谷暁先生の分かりやすい動画
http://www.mxtv.co.jp/nishibe/archive.php

林芳正農水大臣というのも、TPP推進の布石でしょう。この人事は、先の総裁選に立候補した林氏が、自民党の次世代のリーダーにふさわしいか否かの試金石と言われていますが、安倍内閣がTPPに否定的なら、農水大臣のポストが試金石になるはずがありません。

谷内正太郎氏の内閣官房参与就任もTPPのためでしょう。藤井聡先生も参与に就任したので安心している方がおられますが、藤井先生だって国土強靭化という大事なお仕事があるので、何でもかんでも、できるわけではありません。

伊藤氏や竹中氏をアベノミクスに転向させ、マスコミ対策として使うだけだという見方は、甘いですね。
アベノミクスなど、所詮は、金融緩和と積極財政に過ぎません。もちろん、思想的に深く考えれば、アベノミクスの本質は、新自由主義やグローバリズムと反するもののはずです。しかし、彼らが深く考えるはずがない。「日本に必要なのは、金融緩和、積極財政、構造改革、そしてTPPだ」と平気で言えるのです。

もしそれが安倍総理の経済政策の方針だとしたら、総理も深く考えておられないということでしょう。第一次安倍内閣から六年、政権を失ってから三年も時間があったというのに、結局、金融緩和と公共投資の必要性しか、理解できなかったのだとしたら、悲しいことです。

それでも、安倍内閣は、現在の日本における最善の選択肢なのです。これが、今の日本という国の限界です。

「安倍内閣がベストだと思うなら、批判しないで応援しろよ!」と思う方がおられるかもしれませんが、そういう考え方は間違っています。

安倍内閣しかないからこそ、他に選択肢がないからこそ、ここで間違ったことをされては困るのです。そして、過ちを改めてもらいたければ、批判しなければなりません。批判というのは、敵だけではなく、味方に対してもするものなのです。忠臣たればこそ、諫言しなければなりません。

まあ、日本は、二十年も構造改革などという馬鹿をやり続けた国です。そう簡単には治らないことは、覚悟しておいた方がよさそうです。
やっと積極財政と国土強靭化をやるところまで来たのですから、ここでくじけずに、これから二十年かけてでも、日本を取り戻していきましょう。

PS
二十年も戦える強い精神力を鍛えたければ、東田剛さん、藤井聡先生、中野剛志さんの師匠である西部邁老師のこの本を読んでみてはいかがでしょう。
http://amzn.to/WhwalA

PPS
TPPは、郵政民営化と同じ構図だと感じた方には、東谷暁先生のこの本がお薦めです。
http://amzn.to/Vg9iE1

PPPS
「欧米没落!日中激突!異能の官僚が描く壮大な新国家戦略の全貌」を知りたければ、
1月10日発売予定のこの本をご覧ください。
http://amzn.to/Ui6g12

PPPPS
安倍政権をむしばむ改革派官僚の正体を知りたければ、
やはり、この本が役に立つでしょう。
http://amzn.to/UPCohv

この方の書かれている通りだと思います。この方のように冷静に考えを伝えられるようにしなければならないと反省しました。また、同じ危機感を共有されている方がいらっしゃることが分かり、少し冷静になれそうです。

が、日本がいまだ未曾有の危機に直面していることには変わりありません。安倍政権になって安心してしまっている人たちや、安倍首相をバッシングから守ろうと過剰に擁護してしまう人たちが多いため、また保守論壇がこぞって安倍政権の手放しにも見える支持に走っているため、余計に厄介です。TPPに関しては安倍政権になったことにより、安心できるどころか、危険度は一層高まっており、安心は禁物です。

同じ方のこちらの記事にも、私がまさにお伝えしたかったことがわかりやすくまとめられています。そのとおりです。「デフレ脱却」を目標にするアベノミクスは、本来ならば、アメリカの国益に衝突する性質を持っており、アメリカの圧力に対抗するような強い姿勢がないと、実現できない政策のはずです。また、アメリカから強い反発を受けるはずの政策です。極めて不自然なのは、現政権がアメリカに立ち向かおうとするような雰囲気も、アメリカが安倍政権に反発しているような雰囲気も伝わってこない。極めて協調的であり、融和的な雰囲気しか伝わってきません。とすると、私が疑うのは、すでに、TPP参加がアメリカとの間で織り込み済みになっており、アメリカに利益が渡ることが保証された上での「デフレ脱却」ではないのかということです。TPPが前提となっていれば、日本の「デフレ脱却」は、アメリカの国益とは相反しないからです。

また、アメリカは、インフレターゲットならぬ失業率ターゲットを設定した上で、QE3と呼ばれる、リーマンショック後、三回目の大規模な量的金融緩和を最近行っており、またIMFによっては既に不十分だと評されている方法によって辛くも回避した「財政の崖」という問題を抱えているにも関わらず、ドル高・円安が進行するという不思議な現象も起きています。QE3が最後の量的緩和になり2013年中に終わることが予想されていることが理由だろうと言われていますが、それにしても不自然な印象を受けます。報道によれば、ちょうど参院選のある今年の夏までは円安基調が続くのだそうです。逆にTPP参加の合意などないと仮定すると、2010年に「5年以内の輸出倍増計画」を打ち出して以来、ドル安政策を取ってきたオバマ政権が、一方では失業率を下げようとして(つまりインフレ率を上げようとして)いまだに金融緩和を続けながら、円安ドル高を今年の夏まで容認するという事態は一体何なのだろうと、理解に苦しみます。

グローバリズムやTPP・道州制を実現させようとする勢力は、巨大な大津波のような圧倒的な力をもって私たちに臨んできます。この勢力は、世界において侮ることのできない巨大な力をもった勢力です。また、この勢力は本当にしつこく執念深い。またずる賢い。あの手この手を使って私たちを籠絡しようとします。私たちはそれに立ち向かっていくことはできるでしょうか。私たちの国を守り抜くことはできるでしょうか。改めて私たちの力を結集する必要があります。この危機的状況を正しく理解し、危機感を共有する人々が増えるように、周りに広めていただきたく思います。

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2013年1月 3日 (木)

「戦後体制」とは何か(1)

かねがね日本の政治家には三つのタイプがいると思っています。

1. 愛国者
2. バカ
3. 売国奴

比率からいえば、1: 5: 4ぐらいでしょうか。正確な数字はわかりません。

国を守ろうという気概と情熱をもった「1. 愛国者」と呼ばれうる政治家は、自民党の中にも外にもいらっしゃいます。しかし、残念ながらその数は非常に少なく、日本の政界には「2. バカ」や、「3. 売国奴」という二つの「」があふれかえっています。これが日本の現状です。

政治家は国民の鏡ですから、国民が愚かであり、自分の利益のことしか考えないならば、政治家の間にこの二つのタイプが蔓延しても、私たちは一方的に彼らを非難することはできません。

愛国的な政治家が増えるためには、私たちが日本のことを愛し、広く深く学び、ものごとを疑い、真剣に考えなければなりません。その度合いに応じて有能で愛国的な政治家の数もこれからもっともっと増えていくはずです。

さて、安倍首相は、この三つの類型のどこに属するでしょうか。

安倍首相は、「戦後体制の脱却」というすばらしい愛国的なスローガンを掲げてくださっています。しかし、その一方で「TPP参加」をほのめかしておられます。「道州制の導入」に至っては、自民党の政策集にはっきりと明記されています。

一体、戦後体制から脱却することと、TPPに参加して日米の国境を実質的に取り除き、アメリカ式の州制度を日本に導入することは、論理的に矛盾したあべこべの事柄だと思うのですが、安倍首相はこの矛盾に気づいておられないのでしょうか。

気づいていないのならば、安倍首相は「2. バカ」ということになります。

気づいていながら、おっしゃっているなら、かなり悪質な「3. 売国奴」ということになります。

安倍首相は、「聖域なき関税撤廃という前提条件が変われば、当然参加ということも検討の視野に入ってくる。これは論理的帰結だろう」とおっしゃっています。

安倍首相は、TPPが関税の問題だけではない。実質的に参加国の国境を取り除くものであり、「国民国家」としての日本のあり方を終焉させてしまうものであるという事実を御存知ないのでしょうか。

総理大臣の立場にありながらこんな基本的なことも御存知ないのであれば、残念ながらこの人は「2. バカ」ということになります。

知っていながら、「聖域なき関税撤廃という前提条件が変われば、当然参加ということも検討の視野に入ってくる」などと言っているのであれば、やはり、この人物は悪質な「3. 売国奴」ということになります。

いずれにせよ、「TPP参加」や「道州制導入」などという政策を恥ずかしげもなく掲げているこの政党や総理大臣のことを、「1. 愛国者」などと呼ぶことは、間違っても私自身にはできません。

私がこの人物を正真正銘の「1. 愛国者」と認定する日がくるとしたら、この人物が「TPPには参加しないこと」、「道州制など導入しないこと」をはっきり国民に対して明示し約束する日が訪れたときです。その日が来たら、私は、この人物のことを「バカ」だの「売国奴」だのと呼んだことを皆様の前できちんと謝罪し、「愛国者」として信頼し、この政権を心から支えていきたいと思います。残念ながら、今はまだその段階ではありません。この政権と政党が「TPP」だの「道州制」だのを政策として掲げ続ける限り、私は何度でも、皆様に危惧の念を申し上げ警鐘を鳴らさざるを得ません。

この人物が、「戦後体制の脱却」を唱えながら、その一方で「TPP参加・道州制導入」をほのめかすこと。これがどれほど恥知らずな矛盾したことであることを理解するために、私たちはそもそも「戦後体制」とは何なのか、そこから脱却するとは具体的に何を意味するのかを何回かに分けて、改めて整理しなおしてみたいと思います。

今回は、一つのアメリカの公文書からの引用を皆様にお示します。

1945年11月3日、終戦後アメリカによる日本の占領統治が始まってまだ間もない頃、アメリカ本土から、連合国最高司令官ダグラス・マッカーサーの元に送られた、日本の占領をめぐる方針を記した司令文書です。そこには次のように記されていました。

J.C.S 1380/15, BASIC DIRECTIVE FOR POST-SURRENDER MILITARY GOVERNMENT IN JAPAN PROPER

4.e. By appropriate means you will make clear to all levels of the Japanese population the fact of their defeat. They must be made to realize that their suffering and defeat have been brought upon them by the lawless and irresponsible aggression of Japan, and that only when militarism has been eliminated from Japanese life and institutions will Japan be admitted to the family of nations. They must be told that they will be expected to develop a non-militaristic and democratic Japan which will respect the rights of other nations and Japan's international obligations. You will make it clear that military occupation of Japan is effected in the interests of the United Nations and is necessary for the destruction of Japan's power of aggression and her war potential and for the elimination of militarism and militaristic institutions which have brought disaster on the Japanese. With this end in view, and to insure the security of the troops, a policy of non-fraternization may be applied in Japan if and to the extent that you may deem it to be desirable. Your officers and troops, however, should so treat the Japanese population as to develop confidence in the United States and the United Nations and their representatives.

J.C.S 1380/15, 降伏後の日本本土軍政のための基本司令

第四項(e) 適切な手段により、あらゆる階層の日本人に、彼らの敗北の事実を認識させよ。日本人に、彼らの苦難と敗北は、無法かつ無責任な日本の侵略によって引き起こされたこと、また、軍国主義が日本人の生活と制度から除去されたときはじめて、日本が国際社会に受け入れられることを理解させなくてはならない。他の国々の権利や日本の国際的な義務を尊重する非軍国主義的で民主的な日本を発展させることが期待されていることを日本人に告げなくてはならない。日本の軍事占領は、連合国の利益のため、日本の攻撃能力と潜在的戦争遂行能力の解体のため、また、日本人に惨禍をもたらした軍国主義と軍国主義的諸制度の除去のため必要であることを認識させよ。この目的のため、また部隊の安全を確保するため、もし貴君が必要と思われる場合は、日本において交歓禁止令が採用されなくてはならない。しかし、貴君の部下や部隊は、日本人が、合衆国と連合国また代表者たちを信頼するように取り扱わなくてはならない。

今日はこの資料の紹介にとどめ、次回に続きます。

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2013年1月 2日 (水)

毒りんご

長い売国政権との戦いに疲れ果て、お腹はぺこぺこ。喉はからから。そんな私たちに差し出された、つやつやとみずみずしくおいしそうなりんご。そのりんごには次のようなラベルが貼ってあります。

戦後体制の脱却
デフレの脱却
憲法改正

私たちの誰が、このようなすばらしいりんごに飛びつく欲望を抑えられるでしょうか。だって、これは私たちが長く夢に思い描いていたまさに理想のりんごそのものなのです。しかし、このりんごには次の名を持つ毒物が仕込んであります。一口かじれば、即死してしまうような劇薬です。

TPPと道州制

「戦後体制の脱却」、「デフレの脱却」。これらのスローガンがすばらしいのは言うまでもありません。これらのスローガンのすばらしさを否定できる人がどこにいるでしょうか。誰もいません。私もこんなすばらしいスローガンはぜひ実現していただきたいと熱望します。しかし、問題は、このすばらしいスローガンの中に、「TPP」や「道州制」が、こっそり織り込まれていることです。安倍首相や自民党が「TPPはやらない」「道州制はやらない」ときっぱりと言ってくれれば、いいのですが、どういうわけか、そうはならないようです。

私が知りたいのは、誰もが手を伸ばしたくなるおいしそうなりんごの中に、このような毒を巧妙に仕込む安倍政権は、愛国政権なのか、売国政権なのか、どちらなのかということです。

では、私たちはこのおいしそうな毒りんごをどうするべきなのでしょうか。

(1)毒ごとりんごを平らげる。
(2)毒を避けるため、りんごそのものを捨てる。
(3)毒を注意深くとりのぞいて、りんごだけいただく。(可能でしょうか?)

さて、どうするべきなのでしょうか。

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2013年1月 1日 (火)

2013年

2013年は、日本にとって大変な一年になると思います。
なぜなら日本は、大きな分岐点に立っているからです。

その分岐点とは、デフレを脱却するかしないかの分岐点ではありません。
戦後体制を脱却するかしないのかの分岐点でもありません。
憲法を改正するのかしないのかの分岐点でもありません。

その分岐点とは、

日本が日本であり続けるのか、日本であることをやめてしまうのか

の分岐点です。

デフレを脱却することは必要です。
しかし、デフレを脱却しようとすまいと、日本は日本のままです。
戦後体制を脱却することも大切です。
しかし、戦後体制を脱却しようとすまいと、日本は日本のままです。
憲法を改正することも大事です。
しかし、憲法を改正しようとすまいと、日本は日本のままです。

しかし、TPPと道州制は違います。

TPPに参加し、道州制を導入したら、もはや日本は日本でなくなります。

道州制導入を主張しているほとんどの政党が、同時にTPP参加を主張していることからわかるように、TPPと道州制は表裏一体のものであり、この二つ合わせて「日本をアメリカに組み込む」という機能と効果をもっています。

TPP参加と道州制導入は、アメリカと同じ制度を持つ、アメリカの新しい州が日本に生まれることを意味します。つまり、日本が完全にアメリカに組み込まれることを意味します。日本の国内制度は一変させられると同時に、仕事のない移民がどっと押し寄せてくる。日本人の血も文化もがらりと変えられていくことになるでしょう。

そしてその決定は、安倍晋三という一人の人物にゆだねられています。

この人物は、関税撤廃に例外品目が認められるならば、TPPに参加すると公言しています。

また自民党は、J-ファイル2012 自民党総合政策集で、

323 道州制の推進 (中略)道州制基本法を早期に制定し、その後、5年以内に道州制の導入を目指します。

としています。連立相手の公明党も、重点政策Manifesto2012で、

地域に活力。地域主権型道州制を導入。(中略)「道州制国民会議」を設置します。約3年かけて幅広い議論を集約した上で、その後2年をめどに移行に向けた必要な法的措置を講じます。

としており、道州制を巡るスタンスは一致しています。

また、この人物は、日本を「戦後体制から日本を脱却させてくれる人」として多くの人々から教祖のような信奉を受け、この人物に対する批判はほとんどタブー視されています。

とすると、今年、日本に何が起きるのでしょうか。

非常に高い確率で、日本は今年TPPに参加し、道州制を導入することになるでしょう。

とすれば、「デフレの脱却」とか「戦後体制の脱却」とか、この人物が掲げている言葉の意味は180度変わってきます。

デフレの脱却」とはTPPとセットにして考えた場合、国債の発行と公共事業による乗数効果で、国内の需要を増加させるケインズ政策という本来の意味ではなく、

日本が国債を発行することで、財政の崖に直面し万策尽きたアメリカの需要の激減を穴埋めすること

を意味するようになります。

戦後体制の脱却」とはTPPとセットにして考えた場合、自民党が長く司ってきた対米依存の吉田ドクトリン的政治を終わらせるという本来の意味ではなく、

アメリカによる間接支配の「戦後体制」を終わらせて、完全なアメリカの一部として日本を組み込むこと

を意味するようになります。

するとこの人物は日本にとって、

救世主なのか、売国奴なのか

どちらなのでしょうか。

私にはわかりません。

安倍首相や自民党を信奉している皆さんに答えていただきたい。

TPPと道州制を推進する安倍晋三は、救世主なのか、売国奴なのか

自民も公明も民主も維新もみんなも条件付きであれTPPに賛成しています。明確に反対しているのは共産と生活とその他の小政党ぐらいです。

この状況で誰がTPPへの参加を食い止めることができるのか

この問いにも、私には答えられません。

安倍首相や自民党を信奉している皆さんに、将来の日本人(と呼ばれる人々が今後存在し得るならばですが)に対する責任を自覚しながら、答えていただきたい。

TPPと道州制を推進する安倍首相を教祖のように信奉しながら、どうしたらTPPと道州制を食い止められるのか

新年早々、暗い記事で恐縮ですが、新しい年の始まりにあたり、強い危機感から、警鐘の鐘を鳴らさせていただきました。

デフレの脱却」や「戦後体制の脱却」という美辞麗句の背後に、巧妙に隠されているTPP参加道州制の導入。これが日本の将来に何を意味するのか。誰か他の人々の言葉を鵜呑みにするのではなく、どうか、みなさんお一人お一人に、ご自分の頭で考えていただきたい。

この国の未来は、まさに今みなさんお一人お一人にゆだねられています。

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明けまして、おめでとうございます

平成25年が、日本国と、またそれを守り支えようとする全ての皆様にとりまして、よい一年となりますよう、心からお祈り申し上げます。

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