「真の保守」とは何か
日本人と、外国人(特に西洋人)のものの考え方に顕著な違いがあるとするならば、それは、日本人は「二元性を嫌う」ということではないかと思います。
物事を「あれか、これか」の二つにはっきりと峻別した上で、片方を選び、他方を排除する。これは特にキリスト教の影響の強い西洋文明に顕著に見られる考え方です。
日本人が伝統的に「あれか、これか」といった、二元的思考を持たなかったこと、もっと素朴に自然にシンプルに考える人々であったことは、日本には、西洋に見られる宗教戦争のように信条の違いによって血と血を洗うような歴史や、信条内容の違いにより誰かを死に追いやる異端審問のようなものが存在しなかったという事実にもはっきりと現れています。「日本のアニメには明確な善人と悪人が登場しない」といった指摘もよく耳にします。
このように二元性を嫌う日本の伝統的風土の中で「保守」とはどのようなあり方のことをさすのでしょうか。
「保守VS革新」
「保守VS反日」
「右翼VS左翼」
といった二項を立てて、片方を是とするというのは、日本の伝統的な思考でないことは、既にお解りいただけると思います。
「真正保守」という言葉がありますが、自らの正統性を強く標榜し、他の立場を「偽物」として排除する教条主義的で偏狭な響きを持つこの言葉は、その真正性の主張とは裏腹に、むしろ二元性を好む西洋人やキリスト教の姿勢に近いものであり、日本の伝統的精神を反映してはいないように思われます。
すると、日本人の伝統的な精神の姿に合致した「真の保守」のあり方とはどのようなものでしょうか。
この問題を突き詰めていくと、「保守」という、私たちを特定のあり方に固定したり、条件づけたりする言葉そのものが抜け落ちて、ただ「日本人が日本に対して真摯に責任を果たす」ということだけが残るのではないかと思います。ここでいう「日本」とは、2012年現在、私たちが目にしている時間的に切り取られた「日本」のみならず、その歴史の黎明から、子々孫々の代に至るまでのすべての時代を包摂した一つの共同体としての「日本」を指します。その一員である今の私たちが、時代を超えた共同体としての「日本」に対してどう責任を果たすのかという問題ですから、こう考えると、単なる「反日」や「左翼」への反作用としてではなく、より広い客観的な視野をもって、現在日本が直面する個々の問題と取り組めるようになるのではないかと思います。
「保守」が、「左翼」や「反日」に対する反作用やアンチテーゼに過ぎないものであれば、将来必ず新しい反作用を招きます。そうならないためにも、もっと深い根底に根ざし、二元的な枠組みを超えた「保守」のあり方を私たちは探るべきでしょう。
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コメント
確かに二元性を嫌う国民性は、警戒心の欠けた平和主義にも陥りやすく、悪意のある人々の攻撃に対しては、無防備にもなりがちです。上手にバランスをとっていく必要があります。
投稿: WJF | 2012年12月 8日 (土) 01時12分
靖国神社が海外で槍玉に挙げられるのも宗教観(二元論)の違いによるものだと思っています。鯨食はダメで家畜類はOKというのもそうですね。
チェスと将棋のルールを比較しても分かる様に、西洋や中国は基本敵陣は皆殺し・文化は破壊、一方日本は敵の頭さえ獲れば敵兵すら自分の陣営に取り込んでしまい優れた文化があれば吸収する。(無実・無抵抗の人を皆殺しなんて発想、日本人にはありません。西洋人・中韓人たちは自分たちのフィルターを通してでしか日本を見ることができないのでしょう。南京を信じてる人は日本の歴史を全く知らないのです)。戦争真っ只中に敵国大統領の訃報に弔辞を捧げ、現代でも露兵捕虜の慰霊祭を行うような国です。
この日本人の精神性は国としては強みになりますが、外国人と討論する際に不利に働くこともあるでしょう。“ディベートが苦手な日本人”と言うのはひょっとしたら単純二元論を嫌うその国民性に起因しているのかも知れません。
あ~、日本てば本当にガラパゴスw
投稿: バッド | 2012年12月 8日 (土) 01時03分
古いものに、新しいものを追加し、積み重ねていくというのも、日本の文化の際立った特徴だと思います。過去のある時期を否定し、塗り消して、ゼロからリセットする「革命」という考えは日本にはありませんでした。また漢字や西洋文明など、外国からどんなに新しいものを受け入れても、変質しないのも日本の特徴だと思います。日本人の根底には縄文文明が息づいています。その意味でも「日本」とは、時間を超えて、全ての時代を包摂して連綿と紡がれていく一つの共同体として考えるべき物だと思います。そういう広く深い視野で、「保守」というものも考えるべきであり、単なる「反日」や「左翼」に対する反作用であってはなりません。
投稿: WJF | 2012年12月 7日 (金) 16時52分
昨日、中国人と話していましたが、日本では文章を書くとき、縦書き(中国式)と横書き(西洋式)があります。
中国は縦書きを捨て、すべて横書きに移行してしまいました。
つまりそれが日本的なのだと思いました。
投稿: 永遠の100 | 2012年12月 7日 (金) 11時28分