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2012年6月20日 (水)

慰安婦問題を普遍的問題として問い直すことの効能

慰安婦問題を無毒化する論法のコメント欄に戴いた質問に対する回答をこちらでさせていただきます。

世界史の中に穿たれた楔: 原爆と東京裁判史観と対米従属という記事をお読みいただければお解りいただけると思いますが、東京裁判の欺瞞性を是としているわけでもありませんし、そこでの裁判の結果が正しいと認めているわけではありません。最終的には、WJFプロジェクトは、東京裁判の是非と併せて東京裁判史観なるものを根底からきれいさっぱりと打ち崩していきたいと思っています。日本にとっての慰安婦問題は、韓国のプロパガンダに対する戦いであると同時に、根底においては東京裁判史観に対する異議申し立てであると思っています。

占領地における慰安婦の「強制連行」については、白馬事件が扱われたBC級戦犯裁判とは別に、東京裁判においては、オランダ、中国、フランス三か国の検察団により、インドネシア、東ティモール、中国、ベトナムを舞台とした7点の証拠書類が提出されています。オランダが5(略取)、中国が1(就職詐欺)、フランスが1(略取)です。その中には日本人による証言が含まれています。

東京裁判において、弁護団は、それらの事例の事実認定については争わず、「日本の国家指導者が個人責任を負う」という検察の主張に対して争いました。

判決においては「戦場至る所で犯された残虐行為はあまりに大規模で、あまりに共通した類型に従っていたので、結論は一つしかない。すなわち残虐行為は日本政府あるいはその個々の官吏、軍隊の指導者によって秘密裏に命令されたか故意に許容されたのだ」とされ、慰安婦に関しては、中国の検察団が提出した桂林での就職詐欺の事例が次のように言及されました。「工場を設立するという口実で、日本軍は女工を募集した。こうして募集された婦女子に、日本軍隊のために醜業を強制した」。

争点は次の三つになると思います。

A. 略取(いわゆる「狭義の強制連行」)はあったか。
B. 詐欺(いわゆる広義の「強制連行」)はあったか。
C. それらの「強制連行」は国家の意思による行政行為として、あるいは軍の命令によって行われたのか。

Aについては、占領地においては、日本人による証言もあり、戦地という極限状態の中で日本人の従軍看護婦が慰安婦の代わりをさせられていた事例もあることから、一切そのようなことはなかったという主張を掲げることはむずかしいと思います。
Bについては、特に内地、朝鮮、台湾において就職詐欺があったことは様々な資料から確実視してよいと思います。
Cについては、東京裁判の判決の「あまりに共通した類型に従っていた」という断定と裏腹に、慰安婦の事例は多岐に及んでいますので、狭義、広義いずれの場合にも、国家の命令による行政行為や軍の命令として強制されたわけではないと断言することができます。

いずれにしても、2万とも20万とも言われる慰安婦の総数の中で、女性が自らの意志に反して慰安婦とされた事例が0ではない以上、「強制連行はなかった」「慰安婦は売春婦だった」という全否定と受け取られがちな断定的な言い方には慎重であるべきであると思います。

「強制」という言葉も、「国家の意思・命令による強制」という意味で使う人と、「国家の意思によるかどうかに関わらず、女性の意思に反して慰安婦にされた」という意味と、異なる意味で使う人がいるため混乱を生んでいます。外国人に対しては、誤解を生まず、事情を正確に理解してもらえる説明の仕方を探るべきだと思います。

慰安婦問題に関してあきらかに真実と異なる主張に対してはしっかり抗弁すると同時に、重点を「否定する」ことから「普遍的問題として問い直す」ことに置き換えることによって、糾弾する韓国と糾弾される日本というこれまでの立場が正反対になり、慰安婦問題を韓国に対する糾弾材料として積極的に逆利用することができますし、またこういう女性の救済にも真摯に取り組んできた国家として、日本は指導的に立場にいることを国際社会にアピールすることもできると思います。韓国に対しても国際社会全般に対しても、これまでの立場が正反対になるわけです。

日本人が慰安婦問題を「否定」すればするほど、国際社会の反発を生みますが、日本人が慰安婦問題を積極的に「普遍的問題として問い直す」ときには、国際社会の反発は生まれようがありませんし、逆に国際社会は日本に対してこの問題に関しては黙らざるをえなくなります。「慰安婦問題は国際社会にとって普遍的な問題である」という見方が世界に広まったときには、韓国、中国といった国々は反日活動の材料として利用することができなくなるはずです。




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コメント

くま様
慰安婦の実態は、高級取りだったケースもあれば、業者に搾取されていたケースもあり、自分の意志で慰安婦になった例もあれば、親に売られた例もあり、就職詐欺で慰安婦にされた例もあれば、日本軍の末端兵士により強要された場合もあり・・・個別的事例は様々です。したがってどの事例によって一般化しても、偽りの言明になってしまいます。

最悪の事例によって慰安婦全体を一般化すれば「20万人の女性が拉致された」となりますし、最善の事例によって慰安婦全体を一般化すれば、「慰安婦は高給取りの売春婦だった」となりますが、いずれも慰安婦の実態からはかけ離れた言明となってしまいます。

日本によるにせよ、韓国によるにせよ、不用意な一般化なされてきたことが、問題の正しい理解を妨げてきたのではないかと思います。

どういう形で説明すれば一番誤解がなくすっきり説明できるかについては、前回は「一般的状況」と「個別的事例」を分けるという方法で説明しようとしたわけですが、新しい動画の中で、さらに最適の方法がないか模索していますので、完成を楽しみにお待ちください。

投稿: WJF | 2012年6月21日 (木) 21時36分

 多くの日本人にとって、軍従慰安婦とは「日本兵が性奴隷として朝鮮女性を狩りあつめた(20万も)・・実は高給取りの売春婦だった。という嘘話」と思っているのではないでしょうか?
 なので、あまり詳しくない日本人にも誤解を与えないよう、「韓国の主張する軍従慰安婦物語はは嘘話だけども」といった趣旨の言葉を置いたうえで、「本人の意思にかかわらず慰安婦にされた人が一部にいる」といった方が誤解を招かないのではないでしょうか?

 韓国は韓国の恥を日本に押し付け、日本のいいものは韓国のモノと主張する性質をしてますが、この問題も結局そうなのですね。

投稿: くま | 2012年6月21日 (木) 20時43分

色々な話しは日本人全員に早く行き渡る方法はないんですかね 特定の人々で話ししても 国ぐるみで捏造嫌がらせしてる韓国に勝てるのかい

投稿: たこ | 2012年6月21日 (木) 11時44分

風様
すばらしい情報と視点をありがとうございます。自分のことを棚にあげてというよりむしろ、自分たちに不都合なことから目をそらすために、人を責めるというこの姿勢は、まさに東京裁判の姿勢そのものではないでしょうか。たまたま、Katharine Moonの"sex among allies"という韓国の米軍慰安婦に関する研究書に目を通しているところですが、なんとか効果的にご指摘いただいた点も動画の中に組み込みたいと思います。

投稿: WJF | 2012年6月21日 (木) 06時03分

現在の対日慰安婦キャンペーンの背後にあるのは、日本が敗戦したのと入れ替わるようにして、朝鮮半島に駐留した在韓米軍と朝鮮戦争、韓国人慰安婦の泥沼のような関係です。半世紀以上に及ぶ、韓国内の米軍慰安婦問題はおそらく、一般的な日本人が想像している以上に壮絶です。

プレヤーは、韓国政府、韓国軍、アメリカ政府、米国軍、そして韓国人慰安婦ですが、これは完全に国家がアレンジし、国家がシステム化した GI prostitutes です。国家とは、韓国と米国です。彼女たちは、Comfort women とも呼ばれていますが、激しい差別社会である韓国の儒教社会からは完全に見捨てられている人たちです。

韓国では売春は違法ですが、米軍慰安婦は、entertainment hostess として韓国政府から特別に認可され、登録されています。彼女たちは、外国人だけが立ち入ることが出来る地域に文字通り囲われています。慰安婦の中の上位に位置する者(おかしな言い方ですが)は、米兵と結婚してアメリカ移民になりますが、その8割は文化的な軋轢その他の理由で離婚し、残りもDVを受けています。文字通り準奴隷です。

慰安婦になった理由はさまざまですが、初期の頃は文字通り朝鮮戦争の従軍慰安婦でした。米兵と性的な関係のみならず身の回りの世話や食事の用意などもさせれられていたのですが、女性の多くは朝鮮半島のブローカーに騙されたり、戦災孤児だったり、戦争未亡人でした。

その後、長い休戦状態に入り米軍慰安婦は戦地慰安婦ではなく、米兵を韓国内に留めるための貢ぎ物として両政府に利用されてきました。これが現在まで続いています。

上記の現実を冷静に見据えないと、何故、日本軍の慰安婦が強制連行だったと決めつけ、それが国家的なプロジェクトだったと彼らが決めつけるのかは、なかなか見えてこない気がします。いずれにしても、韓国社会の中で慰安婦たちは何時の時代も激しい差別を受け、捨てられてきましたので、人道的な理由で日本に補償をしろだの、気の毒だから記念碑を韓国、米国、日本(韓国大使館の前)に建てるぞ、だのと言っているのは、米軍と米軍慰安婦の現実を知っているアメリカ人や韓国人であれば、お腹の中で笑っていると思うし、一番、白けているのは当の慰安婦だと思います。

投稿: 風 | 2012年6月21日 (木) 01時20分

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