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2011年8月29日 (月)

物語を生み出す力

かねがね、物語を生み出す力には国の力や勢いと相関関係があると考えています。物語を生産するのにも消費するのにも一定レベルの教養水準が必要ですし、物語を長く伝承していくのには安定した共同体の存在が必要です。

世界史を通じて言えることは、質と量において日本ほど豊かに物語を生み出してきた国はないということです。古事記や日本書紀の神話は言うに及ばず、奈良時代の『日本霊異記』から始まる日本の説話文学には、近現代のどんな短編作家も太刀打ちできない人間の本質を映すユニークで魅力的な物語にあふれています。ヨーロッパで、日本の説話文学と同種の自由奔放な物語が生まれるには、14世紀の『デカメロン』まで待たなくてはなりませんでした。『今昔物語集』、『宇治拾遺物語』が編集されたのは、それぞれ12世紀、13世紀のことですが、グリム兄弟が民間伝承を収集、編纂したのは19世紀のことです。AD約1000年頃に書かれた『源氏物語』は「世界最古の心理的小説」と呼ばれますが、ヨーロッパで最初の心理小説『クレーヴの奥方』が書かれたのは17世紀の末です。当時のヨーロッバの文学の消費者はあくまで貴族などの限られた階級の人々であるのに対し、同じ頃の日本では、既に一般庶民を対象に仮名草子や浮世草子が出版され、世界に先駆けて市民文化(町人文化)が成立していました。現代の日本は、アニメや漫画という形式を通じて無数の物語を生み出して世界を魅了してきましたが、こうして歴史を振り返ると「物語を創造する」という日本民族の習性は、長い伝統の中に根ざした営みであることが分かります。

最近、フジテレビの動画を作っていて気がつくことがあります。フジテレビはかつて、アニメの制作にかけては国内で一番の放送局でした。最初のTVアニメ『鉄腕アトム』はフジテレビで放送され、以来、『世界名作劇場』『ドラゴン・ボール』『銀河鉄道999』『うる星やつら』『らんま1/2 』『北斗の拳』など現在世界中で評価を得ているアニメ作品の多くが、フジテレビで制作されていました。ところが2005年以降、フジテレビはゴールデン枠からアニメを一切排除し、日曜の朝9時台(トリコ、ワンピース)と夜6時台の枠(ちびまるこちゃん、サザエさん)以外は『ノイタミナ』という深夜枠のアニメしかなくなってしまいました。夕食前後のゴールデンタイムのひとときに、家族や兄弟と良質なアニメを見られない今の日本の子どもたちはかわいそうだと思います。フジテレビは、韓国のコンテンツを押し売りしているだけではなく、アニメという日本が誇るコンテンツ産業を根絶やしにしようとしているのではないでしょうか。日本人から物語を創造する機会と場所を奪っているように思われてなりません。物語には共同体の結束を強める働きがあります。「彼ら」は日本人の結束を嫌いますから、日本人の結束を強めるものはできるだけ排除していきたいのでしょう。民主党が麻生元首相の「アニメの殿堂」構想を潰したことと、フジテレビがアニメの放送枠を廃止してきたことの間には強い関連が伺えるのではないでしょうか。


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